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商品説明
Jリーグ開幕、読売グループとの確執、ドーハの悲劇からドイツ・ワールドカップ出場までの日本代表の激動…。サッカーを単なるスポーツから国民的な社会現象にまで昇華させた日本サッカー協会キャプテンの現在進行形の回想録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
川淵 三郎
- 略歴
- 〈川淵三郎〉1936年生まれ。早稲田大学卒業。日本サッカー協会キャプテン。在学中にサッカー日本代表選手に選抜。大学卒業後、古河電工入社。アジア大会、東京五輪出場。70年に現役引退。
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紙の本
サッカーはゲームや選手以外の部分でも奥深い
2006/06/17 00:13
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
Jリーグの初代チェアマンで、現日本サッカー協会会長(キャプテン)の川淵氏の半生記。
現在進行形の話も興味深いが、印象的だったのは、1998年までヴェルディ川崎(現:東京ヴェルディ1969)に出資していた読売グループとの対立と、1998年の横浜マリノス・横浜フリューゲルスの合併という、過去Jリーグに起きたふたつの問題。
読売グループとの対立では、ヴェルディが1993年に東京都への移転を強行しようとした件、そしてチーム名に出資企業名を入れた「読売ヴェルディ」を使用していた件が取り上げられている。これらについては、読売側の意向は強行されなかった。
ここでJリーグにとって強みになったのが、まずリーグの規約の正当性。「Jリーグ規約をつくるために、それこそ2年の歳月をかけているのである。それもできあがったものが、なぜこういう条文になっているのか、こういう語句を使っているのか、その背景にある精神とは何かまで当事者として熟知している」(pp.174-175)ことが、リーグの規則を曲げさせなかったポイントだった。
また、人気チームが脱退して新しいリーグをつくるという行動も出来なかった。これは「サッカーの国際統括組織は、ワールドカップを主催する国際サッカー連盟(FIFA)が唯一無二の組織であり、その傘下にある日本サッカー協会(JFA)もまたFIFAから公認された唯一無二の国内統括組織だから」(p.176)。つまり、「Jリーグからの離脱、分派活動とは同時にJFAからの脱退も意味するわけだから、選手の立場から見れば、それは自らワールドカップ出場の道を閉ざすことにつながる。JFAと縁もゆかりもないところに新リーグをつくったところで、有能な選手は誰一人としてついていかない」(pp.176-177)ということになる。
こうした点から、Jリーグというのはしっかりと考えて作られた組織なのだということを改めて感じた。
しかし、1998年の横浜マリノス・横浜フリューゲルスの合併については、Jリーグにとっても非常に難しい問題だったことも感じた。
フリューゲルスは、スポンサーの一社が撤退し、残る全日空だけでは出資が難しくなり、「マリノスの方も出資企業の日産自動車はカルロス・ゴーンさんの手で劇的な復活を遂げる前で、赤字続きのマリノスはコストカッターの最大の標的になりかねなかった」(p.198)。その中で、両クラブの経営陣が話し合いをした結果、合併という道しかないと決断をしたという。
また、当時両チーム以外にも、「Jクラブの経営から手を引きたそうな出資企業が複数あった」(p.192)という。マリノス・フリューゲルスが合併できず、万が一両チームとも消滅してしまったとしたら、更に数チームがなくなるかもしれなかった。そのような様々な事情が重なった中での合併だったのである。
当時もいちサッカーファンとしてこの問題を見ていたが、こうした経営陣の事情はほとんど知らなかった。合併に反対する気持ちはそれほどなく、「仕方ないのかなあ」程度には思っていたが、今回改めて当時の状況が分かった。
たしかにフリューゲルスの消滅は残念だったが、この問題を期に「経営諮問委員会」が設置され、「各クラブの足並みが「身の丈にあった経営」に向けてそろいだした」(p.220)ことには、大きな意味があったと、今となっては思える。
また、この章の最後に、フリューゲルスから撤退した企業について触れられているのも印象深い。「クラブのために良かれと思い、スポンサーになり、多額の資金提供をして、本業の方が苦しくなったので手を引こうとしたら罵倒される。確かにこれでは立つ瀬がない」(p.223)。たしかにそうだよなあ。
こういう部分を読むと、サッカーはゲームや選手以外の部分でも奥深いことを感じる。