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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.5
- 出版社: 国書刊行会
- サイズ:20cm/364p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-336-04739-1
紙の本
ベータ2のバラッド (未来の文学)
著者 サミュエル・R.ディレイニー (ほか著),若島 正 (編訳),浅倉 久志 (ほか訳)
アンソロジーはSFの華。SFに革命をもたらした“ニュー・ウェーヴSF”の知られざる傑作を若島正が厳選!ディレイニー幻の初期中篇からベイリーの異色作、エリスンの最高傑作まで...
ベータ2のバラッド (未来の文学)
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商品説明
アンソロジーはSFの華。SFに革命をもたらした“ニュー・ウェーヴSF”の知られざる傑作を若島正が厳選!ディレイニー幻の初期中篇からベイリーの異色作、エリスンの最高傑作まで、全5篇+1。【「BOOK」データベースの商品解説】
ニュー・ウェーブSFの知られざる傑作を若島正が厳選。表題作であるディレイニーの幻の初期中篇から、ベイリーの異色作「四色問題」、エリスンの最高傑作「プリティ・マギー・マネーアイズ」まで、全5篇+1を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
べータ2のバラッド | サミュエル・R.ディレイニー 著 | 5-124 |
---|---|---|
四色問題 | バリントン・J.ベイリー 著 | 125-177 |
降誕祭前夜 | キース・ロバーツ 著 | 179-236 |
著者紹介
サミュエル・R.ディレイニー
- 略歴
- 〈サミュエル・R.ディレイニー〉1942年ニューヨーク生まれ。62年「アプターの宝石」でデビュー。メタファーに満ちた神話的作品を多数発表。他の著書に「ノヴァ」「ダールグレン」など。
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紙の本
言語も幾何学も想像力の餌食だ
2006/09/16 22:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕にとっては最大のアイドルであるディレイニーの初期中編「ベータ2のバラッド」が訳されたというだけで、もう歓喜の嵐、失神しそう、というわけなのだが、この22歳の時に書かれたナイーブな瑞々しさと、少しだけの老獪さに、相変わらず胸の奥をキュンとくすぐられる。長年に渡る恒星間旅行を終えた宇宙船団に残された1編のバラッド、この謎を解き進むにつれ、閉鎖された小宇宙における言語の変容、そして船団の苦難と喜びの物語が明らかになる。設定自体はありがちなものだが、中性子の砂嵐の過酷さや、新しい生命誕生の喜びのイメージ、そしてそれらを言語として獲得していく探索の過程は、今なお新鮮だ。この小歴史が、(作品における)現代と人類文明に改めて接触する悲喜劇までで、この叙事詩が完結するのだ、と読むのが正しいのだろう、たぶん。
そんなわけで、ニューウェーブ・アンソロジーと題された本書は、まずアメリカン・ニューウェーブとしてディレイニーが冒頭に紹介されるのだが、文学とか運動とかこ難しいこと関係なく、ただの天才じゃないかと思うんですけど。
続いてベイリー「四色問題」奇想の代名詞みたいな人ですが、いつものように突っ走ってます。この幾何学問題の解決こそが、空間的ネットワーク的かつ人類史的なブレイクスルーであるという無茶な論理で、狭く不自由な平面上にうごめく精神達を笑いのめしてます。ニューウェーブ運動で描くべき対象とされたインナースペース自体が、このベイリー宇宙では無数に登場する小道具の一つに過ぎないものとして矮小化されてしまう。ポスト・ニューウェーブなんてもんじゃなく、もはやアンチ・ニューウェーブでしょう。
K.ロバーツ「降誕祭前夜」第三帝国と合体した大英帝国、かつてその同盟国であった日本にとっては、これは空想でない過去の物語と読める。この錯綜が実は一番の愉しみどころのような気がするが、小説スタイルとしてはカンペキ、静かな雪の夜と朝の出来事が、いろいろな事件への感傷を去来させる。
エリスン「プリティ・マギー・マネーアイズ」解説にあるように「週刊プレイボーイ」あたりにこれが載ってたら、たしかにパワー漲る、ギンギンに漲る、サイコーの熱暴走小説。書斎で読む小説とは別の価値基準をズゴンと叩き込まれる。
カウパー「ハートフォード手記」、ウェルズ「時の探検家たち」この2作はニューウェーブにはあまり関係無いが、これらを読むことが出来るのは僥倖。どちらも「タイムマシン」にまつわるストーリーなのだが、「時の」はウェルズ学生時代、「タイムマシン」の8年前の短編で、その萌芽。
編者若島さんの世界、1960、70年代に経験した、最も暴力的に美しかったもの達をすくい取って見せてくれている本。その内宇宙のぐちゃぐちゃこそがニューウェーブなのかも。