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紙の本
偽りの大化改新 (講談社現代新書)
著者 中村 修也 (著)
中大兄王子は、大化の改新で蘇我入鹿を殺していなかった! 古代史最大の常識は、ある意図をもって書かれた「日本書紀」による偽りの歴史だった。緻密な検証と推論で、歪められた真実...
偽りの大化改新 (講談社現代新書)
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商品説明
中大兄王子は、大化の改新で蘇我入鹿を殺していなかった! 古代史最大の常識は、ある意図をもって書かれた「日本書紀」による偽りの歴史だった。緻密な検証と推論で、歪められた真実に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
中村 修也
- 略歴
- 〈中村修也〉1959年和歌山県生まれ。筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程修了。文学博士。文教大学教育学部教授。日本古代史を研究する一方で、茶道史研究にも精力的に関わる。
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大化改新を新しい視点から解明しようとする試み
2006/07/08 18:05
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
大化改新(乙巳の変)は、これまで日本古代史上の画期をなす出来事とされて来た。教科書などの記述によると、蘇我入鹿の専横に危機感を募らせた中大兄皇子一派が、645年に入鹿を大極殿で行われた儀式の場で暗殺し、その余勢を駆って「公地公民制」などの一連の中央集権的な改革を成し遂げたということになっている。ところが、最近、古代史研究者から、大化改新を巡って見直しが進められている。そうした動きには、大きく二つの流れがあるようで、一つは一連の改革自体を否定し、クーデターのみが実際に行われたとする立場である。この見解に従えば、改新で行われたとされる中央集権的な施策は、後代に行われた律令的な施策を基にして脚色されたものであるということになる。もう一つは、クーデター自体に焦点を合わせる立場で、この政変劇の主役を中大兄皇子とする通説に疑いの目を向けている。
本書は、後者の見解に立っており、一連の改革よりもクーデターの真の首謀者を解明することに主眼が置かれている。
著者は、まず、大化改新の幾つかの根本的な疑問点を挙げて通説の見直しを迫っている。例えば、そもそも蘇我入鹿は何故儀式の場で暗殺されなくてはならなかったのか、時の皇極女帝は何故政変後に退位することになったのか、最大の功労者である中大兄皇子は即位せずに何故叔父の軽皇子が孝徳天皇として即位することになったのかなど。さらに、著者は、この政変の主役を中大兄皇子と藤原鎌足とすることで生じる不可解な点を挙げて、真のプランナーは別の人物であると結論している。
尤も、著者が本書の中で挙げている真の主役については、夙に別の歴史学者が指摘しているが、著者は、大化改新のはるか前に起った出来事から始めて、この政変にいたる大きな流れを精妙に辿り、根本史料である日本書紀の記述の矛盾点を徹底的に洗い流して結論を導き出している。その道筋は、実に瞠目すべきものであり、長年この政変劇の数々の疑問点に解明の道を拓くものとなっている。
ただ、これは明確に指摘しておかなくてはならないことであるが、当時の記録が「日本書紀」や「藤氏家伝」など極めて限られており、古代を論じる際にはどうしても史料の欠落部分や書き落とした箇所を推論で補わざるを得ないという危うさがあることである。勿論、そこには歴史学的な考察や厳密な史料批判が求められるが、従来とは一歩踏み込んで新たな歴史像を打ちたてようとすると、従来にも増して推論に頼るところが多くなり、ここに古代史を解明するうえでの難しさがある。本書でもそれは特に言えることで、この辺りが本書の評価の別れ目となると思われる。
本書についての私見を述べれば、著者の斬新な大化改新の像を打ちたてようとする姿勢は評価できるものの、この政変劇に中大兄皇子と藤原鎌足は全く無関係で、それは日本書紀が作り出した産物に過ぎないとしているところはにわかには賛同しがたい。さらに、中大兄皇子、後に即位して天智天皇が後世伝えられるような冷酷な君主でなく、敗者にも暖かい目を注ぐ人間味のある人物であったとする見解もそれほど説得性があるようには思われない。
本書の斬新な考察には目を見開かれる思いがするが、同時に新しい歴史像を提示することの難しさを痛感させられたことも偽らざるところである。
紙の本
偽りの大化の改新
2016/11/28 07:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dzoe - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学校以来、歴史の教科書・授業で習ってきた大化の改新。中大兄皇子と中臣鎌足による蘇我氏暗殺のクーデター。果たして黒幕は中大兄皇子だったのか?