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商品説明
聖アントニオの奇跡!泳ぐことさえできなくなった元天才水泳選手が自殺しその「原因」を作った医師が殺害された。しかし不可解なことに、離れた場所であったにもかかわらず、同じ時間に同じ拳銃が使われたというのだ—。【「BOOK」データベースの商品解説】
泳ぐことさえできなくなった元天才水泳選手が自殺し、その「原因」を作った医師が殺害された。しかし不可解なことに、離れた場所であったにもかかわらず、同じ時間に同じ拳銃が使われたというのだ…。書き下ろしミステリー。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
溺れる人魚 | 5-112 | |
---|---|---|
人魚兵器 | 113-183 | |
耳の光る児 | 185-246 |
著者紹介
島田 荘司
- 略歴
- 〈島田荘司〉1948年広島県生まれ。武蔵野美術大学卒業。81年「占星術殺人事件」でデビューを果たす。作品に「御手洗潔シリーズ」「吉敷武史シリーズ」などがある。
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紙の本
表題作の評価がイマイチらしいようですが、わたしは好きですね。ミステリとしては破綻しているとは思うんですが、作者の思いが伝わってきて。他の作品も、いかにも島田らしいです
2006/08/04 19:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
さてさて、このところ再び活動を活発化させている島田荘司の書き下ろしを含む中篇集です。ほぼ同時期に出た『帝都衛星軌道』は、島田自身が傑作と言い切るに相応しいものでしたが、個人的には不可能状況、怪奇趣味(難病を怪奇とは、失礼な話なんですが)溢れるこの作品集のほうが好きかな、なんて思います。
収められているのは四つの、作品で
「溺れる人魚」は書き下ろし。
「人魚兵器 」は、二〇〇五年八月『名車交遊録』所収。
「耳の光る児」も、二〇〇五年八月『名車交遊録』所収。
「海と毒薬」は、二〇〇四年四月『島田荘司「異邦の扉」に還る時』所収。
となっています。ちなみに装幀は岡孝治、装画は記載がありませんがロセッティか誰かでしょうか、西洋名画風です。
各篇に簡単に触れると、72年のミュンヘンオリンピックで大活躍をしたポルトガルの女性天才スイマー アディーノ・シルバは、結婚後、奇矯な行動を取るようになります。原因不明の症状を抑えるために取られた処置が、彼女から水を、感情を、そして幸福を奪っていきます。離れた場所でほぼ同じ時間に起きた自殺と他殺、その謎と一人の女性の悲劇を描く「溺れる人魚」。
キヨシが偽物、と断じた人魚の剥製。それにそっくりの、でも骨がきちんと繋がった不思議な生き物の写真をモスクワ郊外の診療所で見たというロシア青年が現れた。第二次大戦下のベルリンで写されたという写真をめぐる「人魚兵器 」。
旧ソビエトだった国々で、生まれた4人の耳の光る赤児。ロシア政府の要請により世界各地から集められた専門家たちは、彼らの親たちに共通点を見つけ出したが、チームはロシア政府の手で急遽解散を余儀なくさせられる。一人、ウクライナの地に向かったキヨシの「耳の光る児」。
石岡のもとに届いたのは、20年以上前に『異邦の騎士』を読み、その本によって救われたという女性からの手紙。恋人に去られ、火傷で顔に致命的な怪我をした女性が絶望の果てに手に入れたのは、モルディヴの海と同じ色をした美しいブルーの液体、劇薬 硫酸D。苦悩の果てに、彼女が選んだ「海と毒薬」
個人的に言えば、ヘタレの石岡が出てこない、それだけで心が休まります。唯一、石岡の影が仄見える「海と毒薬」でも、殆どは悲劇に見舞われた女性の独白です。
どの話も印象的で、甲乙つけがたい出来です。ただし、お話は面白いのですが、ちょっと無理だろう、というのが「溺れる人魚」のメイントリック。ま、それが駄目であれば殺人は起きない、という含みのあるトリックですが、殺人が終った後のほうは、あまりにご都合主義。でも、それが物語りの足を引っ張らないのは、殺人事件のなぞよりも、主人公を見舞った悲劇が圧倒的だからでしょう。
トリックに破綻があっても、作者が訴えたかったことが十分に重ければ、作品は必ず評価される、という見本みたいなものでしょう。悲劇が、その歴史の暗さがどの話にもついて回りますが、少し軽めなのは「耳の光る児」。それにしても、話のタネになるような不思議な病例などを、よく見つけるものだなあと感心します。
泳ぐことさえできなくなった元天才水泳選手が自殺し、その「原因」を作った医師が殺害された。しかし不可解なことに、離れた場所であったにもかかわらず、同じ時間に同じ拳銃が使われたというのだ…。書き下ろしミステリー。
〈島田荘司〉1948年広島県生まれ。武蔵野美術大学卒業。81年「占星術殺人事件」でデビューを果たす。作品に「御手洗潔シリーズ」「吉敷武史シリーズ」などがある。