あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
地球と月を中継する軌道ステーション“望天”で起こった破滅的な大事故。虚空へと吹き飛ばされた残骸と月往還船“わかたけ”からなる構造体は、真空に晒された無数の死体とともに漂流を開始する。だが、隔離されたわずかな気密区画には数人の生存者がいた。空気ダクトによる声だけの接触を通して生存への道を探る彼らであったが、やがて構造体は大気圏内への突入軌道にあることが判明する…。真空という敵との絶望的な闘いの果てに、“天涯の砦”を待ち受けているものとは?期待の俊英が満を持して放つ極限の人間ドラマ。【「BOOK」データベースの商品解説】
地球と月を中継する軌道ステーション「望天」で起こった破滅的な大事故。だが、隔離されたわずかな気密区画には数人の生存者がいた。真空という敵との絶望的な闘いの果てに、“天涯の砦”を待ち受けているものとは?【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
小川 一水
- 略歴
- 〈小川一水〉1975年岐阜県生まれ。96年集英社ジャンプノベル小説・ノンフィクション大賞受賞作「まずは一報ポプラパレスより」で単行本デビュー(河出智紀名義)。宇宙作家クラブ会員。
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
砦とは境界にあるもの
2006/08/29 22:16
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
軌道ステーション「望天」で起きた爆発事故。分裂したステーションの一部に取り残された人々の動きを描く。
基本的に主人公がいない作品だというのが読後の第一印象。一つの事件に巻き込まれた、本来ならばすれ違うだけの人たちが、一点に集い、そしてまた散っていく。物語が終わったからといって何かが解決したわけではなく、再びスタートラインに立ったところで終結している。
この世界観で物語を作るならば、地球と月の確執とか、外宇宙へ向けて奮闘する人々を描いたりするのがこれまでのパターンだった気がするが、今回はあくまでそれらは背景のままにしておいて、普通の世界観でもあるような、様々な心の葛藤に焦点を当てている。
言って見れば、物語の前の物語といった気がする作品。果たして続きはあるのか?
紙の本
ハードSFですが、ストーリー展開もハードで冒険小説としても成立。
2006/11/08 19:03
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本屋で本書を見て、そういえば、このハヤカワSFシリーズJコレクションで小川一水さんが出てなかったんだと、改めて思いました。
で、読んでみたわけです。
小川一水さんは、私のイメージでは初期の作品はさておき、
めちゃめちゃテクノロジー大好きの超ハードSF作家というもの、、。
テクノロジーの小説内での整合性に拘りすぎて、ストーリーテリングは、それほどでもないかぁ、って感じでしたが、
今回は、小説内のテクノロジー関連もハードなのですが、
話の展開も、めちゃめちゃハード、つまり、緊張感たっぷりでめちゃめちゃ面白かったっということ、
小川一水さん、腕をあげましたね、、、、。
お話しは、人類の月面開発が本格化しもう人々が月で生活しているころ、、。宇宙ステーションの”望天”で爆発事故が発生。丁度ドッキングしていた、月往還船”わかたけ”
の乗員も含めて事故に巻き込まれます。
壁一枚隔てた向こうは、真空の世界のこの”天涯の砦”で、生存者は生き残ることが出来るのか!?
と、いうプロットです。
相変わらず、技術面大好きの小川さん、爆発の原因についても詳しく書いてあり、
思わず、納得。ボールベアリングって、凄い技術でありながら、不完全な技術なんですね、、。
第二次世界大戦中のドイツのベアリング工場の爆撃を思い出しました。
この宇宙ステーションそのものが、漂流するのでなく、円形の一部が、中心からとある角度
が切り離され、本文中でもそう書いてあるのですが、ピザのワンピースみたいになって、それに”わかたけ”くっついたまま漂流します。
第一の危機は、アニメ”カウボーイビバップ”の#19話「ワイルド・ホーセス」でも描かれていたのですが、
地球の重力圏での漂流となるので、地球落下の可能性が、、。
可能性どころか、カウントダウンまで始まってしまいます。
さて、どうやって、この危機より脱出するのか、、。
これ、ラストにもってきてもいいぐらいの山場ですが、
なんと小説内の半分もいかないところでの山場です。
その他にも、細かいところの無重力の描写が、冴えてますね、、。
無重力だと、空気の撹拌がおきないので、吐き出した二酸化炭素が、自分の周りに漂うとか、、
無重力空間で単純に噴射しても、重心位置を把握して押さないと回転してしまうだけだとか、、。
自分SF読む力が、かなり低いことを認識させられてしまいました。
本書は、SFでもありながら、高い緊張感で読める一級の冒険小説でもあります。
今まで書いたことのないものを書いたと、あとがきで小川さん言っていたけど、ほんと、今まで読んだ小川作品でベストの出来でした。
冒険小説好きにもオススメです。
紙の本
スピード感をもってかっちりとまとまった作品は、一気に読ませる。
2007/04/09 14:40
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一口で分類してしまえば、「宇宙災害遭難SF」。宇宙での災害がテーマであるが、著者がこの中で描いているのは自分が見えない若者たちの心模様、とでもいったもの。登場する主要人物の大半はまだ若く、どのように自分の人生を決めたらよいのか仕事の選択に悩んだり、それすらわからずにしたい放題をまだ続けていたりしている。究極の状況で人間が何を得ていくのかは、ビルの火災、沈む船など、さまざまな設定でなんども物語のテーマとして取り上げられてきた。この話の中でも、それぞれの人物がそれまで気付いていなかった自分の性格や「人というもの」に気づいていく。その過程がときには容赦なく、「ああ、若いとはこういうことかも」と感じさせる。昔若かった読み手には「懐かしい痛み」、今若い読み手には「そんなんじゃねえ」という「いらだち」も共に感じるかもしれない。
作品の中央に描かれる若者たちに加え、脇を固める他の登場人物(とプラスアルファ)も単調さをさけ、作品に深みを与えている。なかなか作者の「めくばり」はこまやかである。
一つ心に残ったのは、不安にかられた女性を落ち着かせるために主人公が抱きしめる場面での言葉。「無重力空間では自分の身体への自覚が消えてしまう。・・・自分が消えるーそれはひどく異様で、頼りない感覚だ。 ・・人の体を抱きしめるという行為は、腕に、胸に、体に、相手の感触とともに自分の感触をも思い出させてくれた。」無重力でそうなる感覚が真実かどうかは知らないが(多分もう調べられているだろうが)、抱きしめるという行為は相手に思いを伝える効果があるだけでなく、抱きしめた自分の確認でもある、ということはわかる気がする。現実のいろいろな場面を思い起こす言葉である。
ふと手にした「老ヴォールの惑星」のSF世界の満足感から著者の最新作を読んでみた。設定もしっかりとされ、期待には充分応えてくれる充実したSFであった。短いあとがきで著者が「いや、もうくたびれた。」と書いているが、渾身の力作、という感じが確かに伝わってくる作品である。
紙の本
スペースサバイバル
2006/09/22 10:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にい - この投稿者のレビュー一覧を見る
巨大な宇宙施設・軌道複合体”望天”の爆発により、分断され飛び散った施設内に残された人々の生き残るための戦いを描く物語
それぞれの過去やコンプレックスの様なものを絡めながら、反発したり支えあったりして生き残るための方法を模索していくキャラクター達
純粋に事故からの復帰という展開だけでなく、アクションヒーロー物のようなテイストもありハリウッド映画のようなイメージ
そのぶんリアリティや重厚さが薄れていますが、それでも命を賭けて他人を救おうとする人々の姿に心打たれます
紙の本
宇宙空間、エアロックの向こうには何もない。
2006/10/08 21:30
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シノスケ - この投稿者のレビュー一覧を見る
軌道複合体“望天”。地球と月をつなぐ宇宙ステーションで起こった壊滅的な事故は、月往還船“わかたけ”と欠けたピザのような残骸を宇宙へと放り出した。真空を漂流する物体は、かろうじて部分的な気密を保っていた。生き残った数人の生存者たちは空気ダクトを通じて連絡を取るが、刻一刻と迫るタイムリミット。望天に残された者たちの行く末やいかに。
言うまでもなく、人間が裸で宇宙に放り出されたら死ぬ。何秒か程度なら生きていられるかもしれないけれど、そのままなら間違いなくそれほどの時を置かずして死ぬことになるだろう。どんなに絶望的な状況でも、精一杯の努力を。前進を。それは原因不明の大震災が相手でも、戦争の負傷者に対する治療行為でも、宇宙での生存行為でもかわりはない。本書では極限まで余分なものがそぎ落とされ、リアルなサバイバルを描いている。時に無謀な行為だと知りつつチャレンジし、混乱し、考え、行動し、さらにあがいて失敗もする。取り残された人々の葛藤がまた実に生々しい。ラストはちょっぴり甘いけれども、過酷なサバイバルSFとして良作。