紙の本
文の鬼才と画の鬼才、鬼と人とでできた画物語。
2007/02/14 14:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
平安を舞台にした、鬼と人との物語三つ。「Hな譚(はなし)をやりたい」という夢枕さんの言葉からできたというこの一冊は充分に妖しくて美しい。「陰陽師」などの話が好きな人にはたまらない楽しさでしょう。「妖美」の世界にどっぷりひたれます。
天野喜孝さんとの怪しくもキラキラしいこの共作。まずは金を撒いたような美しい中心に吸い寄せられますが、その影、その中には怪しいものが潜んでいるようです。まるでクリムトの「接吻」。画と文のコラボレーションを目指した、というだけあって、バランスも絶妙です。単行本(2001)の文庫化ですが、画にも贅沢にページを使った構成はほぼそのまま活かされているので、画の比重が損なわれていないのは嬉しいですね。
夢枕獏さんはコラボレーションの上手い人であると思います。村上豊さんとの共作である「陰陽師」シリーズの絵本では、妖しいがどこかひょうげてもいる、という味わいがありましたが、天野さんとの組み合わせは、美しさと悲しさがでています。
文の鬼才と画の鬼才の、鬼と人の話。やはり鬼と人でできた本といいたいです。
なお、夢枕さんの昔の短編集「奇譚草」 とはまったく違うお話なのでお間違いなきよう。私は最初そう思ってしまい、文庫になるまで気付きませんでした。お恥ずかしい。
紙の本
不思議な世界
2019/10/20 14:16
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投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る
本の装丁から不思議な世界を感じるが、実際にその世界を楽しめる。挿絵も話の雰囲気と合っていて良い。篁物語の世界が好きだった。
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手に取ったときは結構な厚みを感じましたが、サクっと読めました。イメージとしては…ご存知の方は「陰陽師」を想像して貰えたら。その外伝と言うか、系譜に連なると言うか、そんなイメージです。そこにエロスが少々。微エロ。天野氏の絵が好きな方なら美エロ、かな。
主として描かれる紀長谷雄、小野篁ともに、非常にいいバランスで描かれていると思います。描き過ぎず、描き足ら過ぎず。「行間を読む」と言うのは、非常に愉快で、贅沢な営みですね。
絵巻、とはまた違う感じがしますが、天野氏の挿絵が沢山盛り込まれていて。夢枕・天野両氏がお好きだったり、「陰陽師」(夢枕獏・文春文庫)がお好きなら一読して損はしないと思います。
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あの夢枕獏氏と・・・・・・。
あの天野喜孝氏が・・・・・・。
また、夢のコラボレーションを作り上げました。
Dシリーズ・キマイラ吼シリーズなど、二人の世界に魅入られた人は多い事でしょう。
今回のこの作品、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する平安の世を舞台に「鬼/鬼と女人」をテーマにして物悲しくも切ない珠玉の作品が収められています。
稀代の盟友が描く、平安絵巻、存分にお楽しみください。
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「鬼譚草紙」夢枕獏+天野貴孝:朝日文庫
平安時代を舞台に夢枕獏さんが
怪しく妖しい鬼と闇と色香る物語を紡ぎ
天野さんの手による蠱惑的な挿絵がそれを彩る。
まさに最強コンビ。
闇深く交わる辻にて百鬼と見舞える平安の世の妖しさ…
時に詩を、楽を愛し、博打を打ち、女を失い涙する
人の如き鬼供の生々しさ。
陰陽司の世界観に通じる物語。
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艶っぽいお二人が“いろっぽさ”を押して描かれると、それはもう堪りません。博雅の挿絵が素敵なのだよねぇ・・・
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陰陽師外伝(出てこないけど)とでも言うべき鬼とエロスの話。
紀長谷雄の話はこの間読んだ鬼譚に載っていたので・・特に
小野篁の話が面白かった。
「オルフェウスとエウリュディケ」や「デイモスの花嫁」と言ったような・・激しい愛です。
あ、そういえば「イザナギとイザナミ」の話にも?
そしてこの本の見どころはやはり天野さんのイラストですねー。もう溜息。氏の筆にかかると女性だけでなく鬼も素敵。
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図書館で。久々に夢枕氏の本を読もうかと借りてみました。
天野さんの挿絵も付いていてお得感がありました。
鬼と美女と言うのはなかなか確かにえろえろムード感が漂いますね。お話的に何でもアリな時代と言うこともあっておとぎ話を読んだ感じでした。個人的には鬼になった男は自分が満足したら成仏しちゃうとか自分勝手なもんだと思いました。まあ良いけど。
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平安時代の鬼と人の物語。天野喜孝の挿画も含めて、淫靡で妖艶です。男女の機微と鬼の関係となると女性が鬼と化す物語が多い中、ここでは男の方が鬼と化し、鬼と勝負し、鬼の側へと入っていきます。人の器から溢れ出すばかりの才能や情念が鬼を呼び起こすのかも。
作中人物がつくる歌や詩が挿入されるのですが、それを完全に理解することの出来ない自分がもどかしい。でも文字の連なり言葉の並びに、ほうと心動かされることもあったり。恋しい気持ちを表わすのみばかりでなく、愛しい人を喪ったときも、身を裂くばかりの悲しみや苦しみに襲われたときも、口に詩を詠ずる心持ちが荒々しいまでに響きます。
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古本屋に落ちていた宝箱。
前に単行本を読んだような気もするのですが。
まあ、一冊家にあってもいいかと。
篁物語などを元にした夢枕獏さんのお話に天野喜孝さんの色っぽくて妖しい絵がたくさん添えられています。
とりあえず画集のつもりで買いました。
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執拗なまでの情念・エロティシズムに溢れる内容でした。
天野さんの絵もとても妖艶で相乗効果でエッチに感じました。
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人と鬼、血縁関係、此の世と黄泉。
大きな隔たりを越えるのは、それぞれの強く、一途な想いのみ。
そのきっかけとなるのもまた、几帳や御簾などの物理的な隔たり。
一途であることは、時に辛く、苦しい。
それ故に、人は鬼にもなれ、鬼をも受け入れることができるのではないか。
染殿の后物語の、語り手の美しい言葉。
紀長谷雄物語の、喪失感の中で哀しく溢れる才能。
篁物語の、距離を計る歌のやり取り。
繊細で上品な描写に、妖艶さが相まって、それぞれの物語がもつ魅力に強く惹きつけられる。
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夢枕獏著「鬼譚草紙」を読み終わりました。
天野喜孝とのコラボレーションということで、幻想的な挿絵が話の合間に見事に描かれています。
内容は、平安時代の鬼の話で、おどろおどろしく、エロティシズムにあふれた物語絵巻です。
といっても、あの安倍晴明はまったく出てきません。
そのかわり新しいキャラクターとして、歌人でも有名な小野篁(おののたかむら)が登場し、異世界へと関わりをもってしまう姿が描かれており、今後彼を主人公にした作品が出てくるのか、ちょっと楽しみです。
平安時代は本当に鬼が存在していたような時代だと感じられますが、21世紀の今日も、もがき苦しみながら、心の闇に鬼を潜ませている人が少なからずいるような気がします。
21世紀にも安倍晴明や小野篁がいてくれたらなあ。
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以前読んだ「おにのさうし」に挿絵付のもあると紹介されていたため、折角なので探してみた。
「エッチな譚」というコンセプトがあったようで、鬼と美女の話が艶っぽいシーンと供に描写されたはなし集。
決してエッチな挿絵目的じゃないけどな…。
実際、天野喜孝の画風で描かれた女体は艶めかしさは溢れているが、エロいというベクトルではないかな。
AVではなくヌードモデルのヌードグラビア的な。
やらしさより美しさが前に出る。
内容については「おにのさうし」で語っているので割愛。
「桃色ももたろう」も読みたい。