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商品説明
東京・下町の解体工事現場から白骨死体が三つ。そして大家である徘徊老人の撲殺事件。真夏の下町を這いずり回ること二カ月あまり。中年の毒気を撤き散らす滝沢の奇妙な勘働きと、女刑事・音道貴子の大脳皮質は、「信じられない善意の第三者」でようやく焦点を結んだ。名コンビは狂気の源に一歩ずつ近づいてゆく…。【「BOOK」データベースの商品解説】
解体工事現場から白骨死体が3つ。そして徘徊老人の撲殺事件。貴子の脳裏で、ある「笑顔」が2つの難事件を結びつけた。白骨たちの悲しみが貴子を「信じがたい」解決へと運ぶ…。音道貴子と滝沢保の名コンビ復活!【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
なんと言っても、読み物としてしっかりしていますね。でも、主人公の音道貴子ってこんなに面白かった?ってな描写続発。思わずニコニコしてしまいます。プロの技、ここにあり
2006/10/07 22:21
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
音道貴子シリーズのカバーとしては、もっともインパクトがない物かもしれません。その装画を担当しているのが井筒啓之です。今までも、この人の画が気になって自分の評でも見つければ書いています。伊集院静『ぼくのボールが君に届けば』、日明恩『そして、警官は奔る』、池永陽『殴られ屋の女神』、垣根涼介『君たちに明日はない』がそれですが、内容とのマッチングを無視すれば、一番好きかも知れません。ま、ちょっとオッちゃんが36歳に見えないのは難ですけど。装幀は新潮社装幀室。
で、この本を読みながら、何故かニコニコしてしまうんですね。音道貴子って、こんなにユーモアに満ちた存在だった?こんなに当たりが柔らかかった?って。そう思うのは私だけじゃないんですね。おっちゃんと再会し、再びコンビを組むことになった滝沢ですら、苦手意識はあるものの、そう感じています。歳月はオッちゃんをオトナにした?
音道・滝沢コンビ再結成が何年ぶりか、気になったので自分の書評を含めて調べてみました。ちなみに、この話では貴子は36歳となっています。『凍える牙』を読んでもよくわからない。一応、新潮文庫の紹介には「音道貴子。年齢、三十と少々。職業、刑事。離婚歴あり」とあって、正確には書かれていません。次の『花散る頃の殺人』では32歳、『未練』、『鎖』では33歳、『嗤う闇』では34歳となっていますから、一応、『凍える牙』当時31歳としてみました。
で、話の流れとしては、『嗤う闇』に続いています。貴子は、そこで、巡査部長に昇進して、今まで所属していた警視庁刑事部の機動捜査隊から、隅田川東警察署刑事課に配属になっていましたが、今回も配属場所は変っていません。。
同僚は、その時にコンビを組み始めた玉城警部補、京大農学部出身でノンキャリア。オッちゃんの恋人は、勿論、昂一ですが、今回は母親の影が薄いです。前作では、我が家の長女から「恋人は影薄い、どっちかというと玉城さんが気になるよね」といわれた貴子ですが、そこらはどうなったのでしょうか。
カバー折り返しの紹介は
『凍える牙』(第一一五回直木賞受賞)で初登場した、女刑事・音道貴子と滝沢保の名コンビ。男性原理が支配する警察組織のただ中で「貧乏くじ」を引いた滝沢の嘆きは、次第に「感嘆」へと変ってゆく。
本作は、久々に旧交を温めた(笑)二人が、互いに牽制しつつも同じターゲットに立ち向かう、待望の長編小説である。
となっています。
発端は、隅田区東向島の木造家屋の解体現場からでした。枯れ枝かと思われたそれが人骨だと分かり、引き続き現場から、女性らしい二体目の、そして直後に彼女の嬰児らしい三体目の白骨が見つかったことから、事件と判断され捜査が始ります。で、これを担当するのは、音道巡査部長と玉城警部補のコンビです。
で、その家の持ち主と言うのが今川篤行82歳、まだら呆けの、徘徊老人です。その今川篤行が、ある日、公園で遺体となって発見されます。これは撲殺殺人事件として捜査本部が置かれ、近隣の警察署へ応援が要請されます。音道、玉城もそのメンバーになりますが、召集された中に、『凍える牙』の時、音道と組んだ男性社会の権化、セクハラ警察官の滝沢がいました。そして、くじ引きの結果、貴子と警視庁捜査一課から金町署に異動した滝沢がコンビとなって・・・
前作では玉城に食われた感のある昂一ですが、今回も話に絡むことが少なくて、印象に残りません。相も変らず飄々とした玉城や、心の動きが描かれる滝沢の印象が強烈過ぎて、椅子職人、危うし!っていう感じです。
それにしても面白い。音道・滝沢の心理に、冒頭でも書きましたがユーモアが滲み出て、読みながら思わず微笑んでしまいます。いやあ、人生を大上段に書いた小説もいいですが、テンポのいいミステリも格別。もう一度、天海 祐希が演じる音道を見たい!!
紙の本
要するにプロなのだ・・・そう!そこなんだ!
2009/03/03 08:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読書は風呂場で - この投稿者のレビュー一覧を見る
「凍える牙」以来、音道・滝沢コンビのファン。
もっとも、作中の本人たちはコンビという感覚は持っていなかっただろう。
男優位の警察の中で「女刑事」と組まされたのは滝沢にとって「はずれ」だったし、音道にすればもともと自分を認める人間をこの組織そのものに求めていないだろうし。
しかし、「凍える牙」で出会って以来、「未練」「絆」などいくつかの接触を通してお互いが何か共通するものを持っていることに、私たち読み手のほうはすでに気付いている。
その「何か」にふたりが気づく、という大きな作品の流れがある。
なんとなく、滝沢のほうが先に音道を認めている様子がうかがえる。
そのほんの少しの時間差があだになって感情を爆発させるきっかけになり、結果的にふたりは本音をぶつけあうことになるのだが、そのあたりのやりとりは読み手からすると、よしよし、やれやれと見守るような気分。
そして、ふたりは捜査をすすめるなかでお互いに気づく。
要するに、プロなのだ。と。
それは、不器用なくらい真摯に捜査に取り組むプロだから認められるプロの部分。
決して穏やかとはいえない緊張の続く日々の中で、ときには疲労を感じたり疑問を感じたりしながらも、捜査に手を抜くことなど考えられないふたりが、お互いを敬意を感じられる相手であることをはっきりと認識してくれたことに、読み手は思わず膝を打つ。そう!そこなんだ!
読み手にすれば、とっくにいいコンビだったふたりが今回やっと自覚してくれたことにスッキリ、安堵感のようなものを感じるのだ。
しかしそんな安堵感は、あくまでもミステリーの奥行を拡げるためのほんの香りづけ程度にしかすぎない。あくまでもミステリーとして、早く真相を知りたくて、まるで何か救いを求めるようにストーリーにひきつけられていく。
そして事件は、自分ではどうにも避けられない運命に翻弄される人々の哀しい過去が現在につながってくる。
昂一とのあいだにも大きな問題が起こってくる。
滝沢・事件・昂一と、音道にとっても読み手にとっても大きな3つの流れがストーリーの中で交錯し、最後まで飽きさせない。