- 発行年月:2006.9
- 出版社: 集英社
- ISBN:4-08-865362-9
紙の本
チムニーズ館の秘密 アガサ・クリスティー作品集 (クイーンズコミックス)
著者 榛野 なな恵,アガサ・クリスティー
チムニーズ館の秘密 アガサ・クリスティー作品集 (クイーンズコミックス)
チムニーズ館の秘密
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紙の本
英国の風。理知と洗練、ユーモアの調和
2007/05/18 00:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねねここねねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
漫画家、榛野が描くクリスティのそれぞれ。収録は3本。
「チムニーズ館の秘密」「追憶のローズマリー」(原題:忘られぬ死)
「ソルトクリーク秘密の夏」(原題:ゼロ時間へ)
(上記原題、早川書房刊より)
榛野の描く絵には、涼しく凛とした風を思わせるものがある。
それなのにどこかあたたかい。
こころがあり、軽やかに微笑むパステルの風。それは繊細でありつつも
智を纏う優雅な女性のものとして、風を切る光を思わせるものがある。
興味深い組み合わせのものに、うーんと唸った。
クリスティの理知と空気感のある榛野の画風が、調和を醸し溶け込んでいる。
洗練、都会的。貴族風にあるエスプリとユーモアの映しだし。
ソフィスケイトされた男女、登場人物の心の綾が線で浮かぶ。
されど冷たいものではない。安心さえ思ってしまう、かたち、いろ。
湖のほとりにそっとある、白亜の建築を見ているよう。
瀟洒なミステリとユーモアに、榛野の線は香りを醸す。
空間と流れの切り取り。デリケートなものを崩さずに、そっと空気を切って表す。
軽やかさと明るさを与えつつ、社会と個人を描く客観。そしてそのなかにある光。
透明な薄く差し込む光には、推理小説女史の理知と英知が潜むようだ。
冷たい影ではなく、軽さを持った明るいまなざし。
羽の軽さと洗練の煌き。
読み手、味わうものには、謎が解けたあとの閃く驚きとあいまって、
安心とクールな微笑みが訪れる。
このあたり、榛野の本領といったところか。
瑞々しく、されど格式ある絵を感じる。色と風さえあるようだ。
気品ある英国の匂い。庭園の花の香に乗せて届けるように、
個性的な二人の調和とバランスが風に乗った。
英国庭園の緑と青空を思わせる、運ばれた薫りが本から漂う。