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商品説明
戦中は軍部と、戦後は占領軍や右翼と対峙し、自由を守ろうとした「新聞人」として、吉田首相に退陣を迫り、保守合同を成し遂げた「政治家」として、リベラルを貫き通した緒方竹虎の生き様を描く。『西日本文化』連載に加筆。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
渡邊 行男
- 略歴
- 〈渡邊行男〉1926年福岡県生まれ。明治大学文学部中退。衆議院事務局、憲政記念館(企画調査主幹)勤務。のち福岡県豊前市立図書館長。著書に「宇垣一成」など。
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紙の本
半世紀前の自民麻生VS民主鳩山の前哨戦は。
2009/08/26 11:38
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まるで、その現場を見てきたように語る人がいるが、著者の場合は衆議院事務局、憲政記念館に勤めていただけに、敗戦後の日本の政治を実況中継で見ているかのよう。臨場感というか緊迫感があるだけに、ついつい読み急いでしまう。
この一冊の中でおもしろいのは、緒方竹虎の評伝でありながら麻生太郎総理大臣の祖父である吉田茂と鳩山民主党代表の祖父である鳩山一郎の政権争奪戦の裏話だろうか。その権力争いの中において吉田茂の側近でありながら、吉田茂に退任の引導を渡したのが緒方竹虎である。残念なことに、総理総裁を嘱望されながら病没してしまったために、記憶に留めている人の方が珍しい。
が、しかし、元日本開発銀行副総裁の緒方四十郎氏の父、元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏の岳父といったら、なにやら、その政治手法に興味を抱かれるのではないだろうか。
この緒方竹虎であるが、朝日新聞の記者から政界入りを果たしたのだが、その新聞記者、政治家への道筋を作ったのが竹馬の友と言うべき中野正剛である。中野正剛といっても戦中の代議士なので知らない人が多いと思うが、東條英機首相を朝日新聞紙上で批判したために、東條お得意の憲兵を使っての因縁弾圧で自決に追い込まれた人物である。その中野正剛の葬儀委員長が緒方竹虎であるが、東條に逆らえば命は無い時代に正義を貫いた人である。
二・二六事件で反乱軍将校が朝日新聞を襲撃した際に対応したのも緒方竹虎だが、もとより命を懸けて国家の行く末を考えていたのだろう。
この緒方竹虎の考え方として驚くのは、戦前の内閣において陸軍大臣、海軍大臣が軍人であることに異を唱えていたこと、枢密院が日本の政治を操っていたことから廃止を主張していたことだろう。貴族院など、華族と爵位を有する退役軍人が多くを占め、とても議会とはいえないものであり、自然に軍部が権力を発揮するのも仕方のない政治機構となっている。
政権交代が目的で政策がなおざりにされている今夏の衆議院選挙をみながら、半世紀以上も前の権力闘争の延長戦が今回の選挙なのではと思えてならない。棚ぼたで権力の座についた吉田茂(麻生太郎)が鳩山一郎(鳩山由紀夫)に政権を譲る、譲らないでもめた政争と同じ事が起きていることに、この国の真の政治改革は無理なのかとため息をついてしまった。
自民党に対する大いなる不満、民主党に対する大いなる不安を抱きながら、国民は翻弄され続けるのだろう。「いま、緒方ありせば・・・・・・」と本書の帯にもあったが、つくづく、そう思う。