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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2006.8
  • 出版社: 角川書店
  • サイズ:20cm/182p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-04-873713-9

紙の本

てのひらの中の宇宙

著者 川端 裕人 (著)

ミライとアスカ、2人の子どもたちと暮らすぼく。妻は、再発癌で入院した。子どもたちが初めて触れる死、それは母親の死なのだろうか。地球の生命、その果てしない連鎖。死は絶望でな...

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てのひらの中の宇宙

税込 1,540 14pt

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商品説明

ミライとアスカ、2人の子どもたちと暮らすぼく。妻は、再発癌で入院した。子どもたちが初めて触れる死、それは母親の死なのだろうか。地球の生命、その果てしない連鎖。死は絶望でないと、どうやって伝えたらよいのだろう?生命のつながり、心打つ宇宙小説。【「BOOK」データベースの商品解説】

ミライとアスカ、2人の子どもたちと暮らすぼく。妻は、再発癌で入院した。子どもたちが初めて触れる死、それは母親の死なのだろうか。死は絶望でないと、どうやって伝えたらよいのだろう? 生命のつながり、心打つ宇宙小説。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

川端 裕人

略歴
〈川端裕人〉1964年兵庫県生まれ。東京大学教養学部卒業。「夏のロケット」で作家デビュー。著書に「リスクテイカー」「竜とわれらの時代」など。

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評価内訳

紙の本

宇宙とは生とは死とは。作品中に散りばめられた、きらきらと輝く珠玉の言葉たちは、読み終えて何日も経過してしまった今でも、しずかに心に沈んでいる

2011/05/15 21:18

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:道楽猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る

だれでもそうだと思うが、小さい頃、私は死が怖かった。
母親が死ぬ夢を見ては飛び起き、傍らにちゃんと母が眠っているのを確認してほっとしていた。
身内が死ぬなんてこと、考えられもしなかった。

けれど5年前、その母の死が現実となった。
父が死に、その僅か1ヶ月後に母も見送ることとなった。

いのちは、どこから来て、どこへ還ってゆくのだろう。

小さな頃からの疑問は、未だ謎のまま。
たぶん自分が死んでも、それを理解することはないのだろう。
だって死は万物に平等に訪れるけれども、自ら感じ取れるものではなく、客観的にしか捉えられるものではないのだから。

子宮体癌の再発のため入院している妻。母親を失うかもしれない5歳と3歳の子どもたちに、父はこの世界の生と死を、どう教えてゆくのか。

青少年読書感想文コンクールの課題図書として選定されていた本書は、息子の夏休みの宿題のため、ずいぶん前に買ってあった。
しかし、身内の死を前面に出している物語が苦手で、なんとなく私自身は手に取らないままになっていた。

身内の死を扱う小説は、どことなくあざといものが多い。死を殊更に美化していたり、それで涙を誘うことが目的であったり。
けれど、実際読むと、本書にはそういった部分がまったくなかった。
そして、あまりの面白さに何故もっと早く読まなかったのだろうと後悔した。

主人公の5歳の息子ミライは、「なぜ?どうして?」真っ盛りな年頃。
理系の父親は、そんな息子の素朴な疑問に、真っ直ぐに向き合う。
そうして、宇宙について生について死について、淡々と、かつわかりやすく息子に語るのだ。

思えば、私も「なぜ?どうして?」少女だった。
物心ついた頃はテレビが映るのがふしぎでふしぎで仕方なく、何度もその原理を母親に問うては「どうしてだろうね」の返事にがっかりしたり、「底なし沼」のことを考えて怖くなってしまったり(本当に底がないのだと思っていた。)もう少し大きくなると、無限とはなんだろうとか宇宙の果てとは?とか、だいたいがぼーっとした子だったので、それはそれは色々と考えていた。
ミライはいいなぁ。「なぜ?」にきちんと答えてくれる存在がいて。
あの頃は、ひとつ物事を知るたびに目の前がぱっと開けて世界が広がるんだよね。
私もこんなとーちゃんが欲しかった。

そして、息子に語りながら、父親自身も様々なことに気付いてゆく。
すべてのものは原子で出来ている、その一番小さいものは素粒子で、と言いつつ

つぶつぶより雲のほうがいいな。境界がはっきりしないほうがいい。

なんて考えていたりする。
そして、すべての生き物は「好き」で繋がっている、と説明をする。
この父ちゃんも結構な夢想家なのだ。
やがて、息子と娘に夜毎語っていた空想の物語を童話として執筆するに至る。
この物語がまたいい。
「人間を背中に乗っけたまま眠っていたカメが目を覚まし、宇宙の果てを目指して旅をする」
てなお話。実際面白い童話になりそう。是非こちらも本当に書いて出版してほしいものだ。

お終いまで読んでも、この物語には劇的なクライマックスなど存在しない。
けれどそこかしこに散りばめられた、きらきらと輝く珠玉の言葉たちは、読み終えて何日も経過してしまった今でも、しずかに心に沈んでいる。
そして、アスカちゃんが「アンモナイト」のダンスを笑いながら踊っている光景がほっこりと浮かぶのだ。
(2~3歳の頃の子ってほんとよく踊るのよね)

それにしても、人ってすごい。
宇宙ほどの大きさのものでも、想像の世界では自分のてのひらに乗っけることさえ出来てしまうんだものね。

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