紙の本
見ためで損をしているような・・・
2008/11/14 22:17
7人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
某所でけっこう話題になっていた。そこで指摘されていたように、まっ黒の下地に金文字で刻印された、おどろおどろしい感じのタイトル名が、なんか「あやしそ~」な第一印象を醸しだしている本だ。
しかし、読んでみると外形的印象とことなり、思ったよりも扇情的なものではなかった。統計データなどもしっかり押さえている。だいぶ編集者になおされて、すこしは柔らかい文章になったとのことだが(だったら装幀ももうちょっと考えたら・・・編集者さん)、基本的にはクールにアメリカ社会の現実とそれを形成してきた歴史を描写している。
オバマ次期大統領誕生の背景には、貧富の差の拡大も理由の一つであったと報道されている。アメリカが「階層社会」であることは最近にはじまったことではないが、アメリカ国民の60~70%を占めるといわれる「中産階級」は徐々に崩壊してきた。ステップ・アップしているのはごく一部で、大半は「貧困」のほうへと二分化してきている。
そのあげく、アメリカの階層は4つに分かれた。「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」の4つだそうだ。上位二階層は500万世帯前後しかいない。残りを「貧困層」以下に分類するのはすこし大げさな気がするが、アメリカ社会に余裕がなくなってきていることはうかがえる。
また、問題点をあげるだけでなく、一章をもうけてアメリカ社会の「心地よさ」についても言及している。
さて、自戒をこめてでもあるが、あまり本質主義的にあるいは十把一絡げに、「アメリカはこうだ」「中国はこうだ」と決めつけすぎるのは避けたい。本書にもその気は多少あった。例えば・・・
《アメリカ社会は全ての人に対して経済的に成功することを期待し、その期待に応えてはじめて責任を果たしたことになり、人間としての価値を証明できる。それがなかったら、何をしても何を言ってもたいした意味はない。》
それでも、全体的にはあざとさを感じなかった。これは、先に述べたように著者のクールな筆致によるものだと思う。
これからアメリカは、貧困層の経済的境遇をかさ上げして中流層の復活をなしえるであろうか。日本はどういう方向に進んでいったらいいだろうか。そんなことを考えながら読んでみたい本だ。
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think tankの草分け Brookings institute, RAND corporation レーガン時代共和党系think tank Hoover Institute (stanford) コンドリーナ ライス、ジョージ シュルツはここのフェロー 外交政策に最大の影響力をもつのはCFR council on Foreign relations 国際関係委員会 これと同様の影響力をもつのがデイビッドロックフェラーが始めた国際会議のビルダーバーグコンファレンス 北米と欧州、日本で1973年から開催されるトライラテラル委員会
プライベート投資ファンド カーライル
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25年前に渡米、シリコンバレー、NYでエコノミスト、証券アナリスト、コンサルと活躍されている(らしい)日本女性が書いた本。アメリカの歴史をなぞりながら、今の格差社会がどう出来上がってきたのか、またそれを前向きに受け止める米国民精神を説く。参照グラフと本文が微妙に頁割がが悪いのがとても気になったものの、全体としてはとても興味深い内容だった。
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これは非常に面白い!アメリカという国のパワーの源と共に、病んでいる部分も映し出している。特にアメリカに住んだ事がある人には興味深い視点がてんこ盛り。
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この本は具体的にアメリカの格差社会の構造に切り込んでおり非常に面白い。日本人としてアウトサイダーならではの客観的な視点で書かれており、宋文州氏の日本のダメ会社斬りに近い鋭さがある。単に「格差社会はけしからん」という日本のマスコミにありがちな視点ではなく、米国社会の強み、弱みにも触れている。この本は、アメリカの資本主義が今後、どのような方向性をたどるかという分析をする上で非常に有益であると思われる。医療制度についてはほとんど触れられていないのが残念であるが、次回に期待したい。
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これは文句なく秀逸!非常に面白かったです。
筆者の知識、造詣は相当なものだと思いました。経済・金融に限らず、歴史、教育、文化などをそれぞれ丹念に辿りながら、アメリカが格差社会と言われるわけ、また、それを感じさせないアメリカ人のオプティミズムなんかを、見事に解析しています。
以前、ニッケルアンドダイムドを紹介しましたが、こちらのほうが全方位的に分析されてて、ためになると思います。
ぜひご一読を!
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自由と平等の国アメリカであるが、はっきりとした階層社会であり、中流階級は崩壊していて「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」の階級に固定化されているという。
今を見るだけでは、その背景が見えないわけでその成り立ちについてアメリカ建国からの歴史の解説が前半は続く。特権層とは建国以来のいわゆるエスタブリッシュと呼ばれる巨万の富(1億ドル以上)を保持する世帯で、ある意味アメリカを牛耳っている世帯でもある。庶民にとっては到達不可能な世界でもある。そこで以下の記述。
しかしながら、「自分が上野層にあがれないのは、社会制度のためではなく、自分に責任がある」と考えるのに十分なだけの上昇モビリティがアメリカ社会にはある。だからこそ自分の生活をよりよくすることが個人の最大の責任であり、そのために役立つことに専念するのが、個人の義務となっている。
なるほど、わかりやすい考え方でもある。今(親の世代)と同じ生活を目指すのではなくそれ以上を目指すというわけだ。「社会もそれを奨励して、周囲の人もそれを励ます」という考えがその証かもしれない。その尺度が「メイキングマネー」となるのはしかたがないのかもしれない。
「貧困問題」を考える際にはグローバリゼーションについて語る必要がある。当然本書でもそれについて語られているのだが、上昇に対するパッションが失われていない限りは社会問題とはならないように感じた。それは新しい血(移民)が常に流入しているからであるからでもある。日本はそのパッションが維持できるだろうかというのは考えさせられる。(今はまだ保たれている)
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現代アメリカの格差社会がどうして生じたか、
どのような過程で生じたか、現状はどうかなど
アメリカに滞在して何十年にもなる日本人の
視点から大変興味深く、論じられていて、
とても参考になった。著者の経歴は
東大経済学部卒、長期信用銀行入行、コロンビア大学
MBA取得、経営コンサルタントなど、
なので、分析の仕方も経済学的に理論化されており、
今までのこちらの思い込みを覆すような、歴史上の事実が
書かれている。
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他国に比べて圧倒的にアメリカ人が持つ気質とは、未知なものに対する強烈な好奇心であり、未知の中にリスクよりも「夢と機会」を感じ取るオプティミズムであり、未知のものに挑戦して何かを達成しようとするハードワーカーであり、精神的に周囲を頼らない独立心であり、未知の人々と交流できる外交性であり、環境を直感的に察知し、かつそれを活かせる頭と強健な身体だ。
アメリカでは、階層を駆け上がる上方移動の可能性が、他国に比較して高い。その最大の原因は、スキルやノウハウといった個人の能力に対し、社会が高い価値を認めているからだ。
世論を形成するのは、選挙民のオピニオンというよりもセンティメントであり、そのセンティメントをポジティブな方向に誘導するのが効果的な政策になっている。そしてセンティメントの中核にあるのはナショナリズムだから、ナショナリズムを奮起させていけば、政府に対する信頼は揺るがず、アメリカに対する自身も揺るがない。
純粋な理論段階・アイデア段階・デザイン段階は、個人のクリエイティビティに大きく依存するから、個人レベルで見ればどこの国にもクリエイティブな人はいるし、活発な活動が見られる。しかしそれを速やかに事業化し、大きく育てるシステムでは、アメリカは圧倒的な優位性を持っている。
日本の格差は、「職業選択と労働報酬」の問題であり、アメリカの格差は「資産」の問題。
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富の6割が5%の金持ち層に集中。国民の3割が貧困家庭。アメリカの豊かな中流家庭は,なぜ貧困層へと転落したのか。日本もそうなるのか? アメリカ社会の構造とその生成過程について,自らの経験と知見をもとに検証する。 (TRC MARCより)
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アメリカという国については、いつも答えの得られない疑問を持っていた。
1.日本人のほうが身を粉にして働いているように見えるが、物質的な豊かさはアメリカのほうがはるかに上。一体どうやってあの豊かさを実現しているのか?
2.アメリカと行くと、なんとなく感じる「作り物めいた感じ」の源泉は何なのか?
3.アメリカは、ヨーロッパなどより、ずっと階級社会であるように感じる。実際はどうなのか?
水野和夫さんの『金融大崩壊』でも、上記のような疑問に対する答えの一部は得られたが、もう一歩踏み込んだ答えがほしいと思っていた。
『金融大崩壊』の感想:
http://booklog.jp/users/spiralrenewal-books/archives/414088276X
そして、ついに本書が、アメリカについての私の全てのモヤモヤを解消してくれた。
著者の小林さんは、長銀に入社後、退社してスタンフォードでMBAを取得。以来、26年間アメリカで生活されている経営コンサルタント/アナリストの女性だ。
この本で書かれている内容は、歴史・現代のアメリカの経済政策・様々な統計データなどを使ってはいるものの、あくまで、アメリカという社会の実態についての仮説である。真実は誰もわからない。
しかし、仮説といえど、小林さんの仮説は圧倒的な説得力を持つ。
それは、小林さんが26年間をアメリカで過ごす中で、実際にご自身で経験し、考え抜く中で醸成されてきた仮説だからだろう。
また、小林さんの著作は本書だけのようだが、何冊も出版する気はあまりなく、この1冊にこれまでのご自分の調査と仮説を惜しみなく展開されているようにも感じた。
おそらく、本書の内容と同様の内容をカバーする本は他にはないのではないだろうか。
富裕層によるアメリカ支配の実態は、他の著書でも触れられれている。
しかし、本書は、それにとどまらず、アメリカの非富裕層がなぜ今の状態で不満を噴出させないのか?という点まで踏み込んでいる。
ただ歴史を異なる角度から見ただけ、統計データを集めて分析しただけ、だれかの意見を焼きなおしただけ、ではなく、鋭い観察と深い考察がなくては踏み込めない点だと思う。
本書はアメリカについての本だが、本書を読んで、今後のフラット化する世界での、日本の探る道についてのヒントも得られた。
きっと、何回も読み返す本になるだろう。
読んだ日:2009年8月27日〜28日
読んだ場所:東海道線 平塚⇔東京
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この本は文字通りアメリカの格差問題についての本である。私たちはアメリカというとみんなが平等で自由であるというイメージではないだろうか?しかし現実にはトップ5%の金持ちがアメリカ全体の6割の富を保有し、金融資産では3分の2を所有している。
このような状況になってしまった大きな原因は一部の富裕層や企業の経営者と政府がお互いの利益だけのために税制などを操作してきたからだ。またこの本ではアメリカの教育が抱える問題についても触れている。アメリカの公立の高校などは教師の質が悪く、さらに生徒もしっかりと教育されておらず、かなり荒れてしまっている。大学に進学させたい親は公立には行かせず、高い授業料を支払って私立に行かせる。大学に行かせる余裕がない公立の子供を持つ親は想像力や思考能力に必要な基礎教育(数学・国語など)ではなく社会で役立つ実務的な教育を要求する。これにより教育格差は広がり、公立に行った子は高度な知的職業には就く事が出来ずますます所得の差が広がるという悪循環に陥っている。
しかしそれでもアメリカ国民独特のオプティミズムや上昇願望によりアメリカ社会は住みやすい国であると感じられるということが最後のほうで述べられている。
この本を読む前、アメリカは実力主義・成果主義の国であるから格差がかなりあることは大体想像できた。しかし格差は差別された政策(お金持ちだけが有利な政策)により拡大されていて、格差により子供の教育の差が出てしまい結果として次世代の格差を創ってしまっている。ということがこの本を読んで衝撃であった。
日本でもしばしば格差についての議論がニュースや学校でされている。現在の日本はアメリカほどではないが格差を示すジニ係数では先進国の中でアメリカに次ぐ第2位なので油断は出来ない。この本は日本の将来を考える上でも役に立つ本ではないかと感じた。
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良書。アメリカという国について、コンパクトにまとめてあります。
タイトルがおどろおどろしいですが、内容は、データが豊富で、偏りがなく、現代アメリカについて、なにか読もうと思ったら、この本は加えておくべきかなと思います。
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以下は宣伝写しです。
アメリカ人は4種類しかない。超金持ちと、仕事のプロと、貧乏人と、社会的落ちこぼれだ--。ニューヨークとシリコンバレーで日本人初女性エコノミスト、証券アナリスト、コンサルタントとし26年間活躍して来た著者が、アメリカでのビジネスの実体験と調査に基づいて的確にとらえたアメリカの「階層社会」の本当の姿。日本の百倍おっかないアメリカ版「希望格差社会」「下流社会」の実態を、具体的なケースと数字で鮮やかに暴く。さらにその上で「それでもなぜ、アメリカは前向きなのか? アメリカは住みやすいのか? ベンチャーが生まれ続けるのか?」というアンビバレンツな疑問を解く。小泉改革末期、「階層社会化」が問題視される日本の今と未来を考える上で、格好の先行事例であり、反面教師でもあるアメリカ社会の秘密を教える、格好のテキスト。
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冒頭で著者は、現在のアメリカはかつて多数をしめた中流ミドルクラスは存在せず、富裕層、プロフェッショナル層、落ちこぼれ層、貧困層の4つに収斂しているという。ミドルクラスの存在が揺らいでいるのは、否定できないものの、のっけから暴論という印象を受けた。しかし、その後に展開される様々な視点からのアメリカ社会の分析には一考に値する議論であふれている。格差という言葉を耳にすることが多い昨今であるが、それは日本という国が資本主義・市場経済の先輩であるアメリカの後を追いかけている結果なのかという疑問が本書に関心を持ったきっかけである。そもそも、アメリカという社会は格差ということに対するとらえ方が異なるのであろう。日本では、格差という言葉の語感には、不平等で理不尽というような否定的な要素が含まれているように思える。一方、アメリカではそのような日本語の格差に相当する言葉ななく、むしろ社会階層という言葉でそれが語られている。本書では、そのとらえられ方について最終章で語られている。日本においての格差は、「職業選択と労働報酬」の問題であるのに対して、アメリカのそれは「資産」の問題であると。日本では、就労機会を阻む社会的構造が問題であり、不合理な既得権益を排除することが直近の課題であると。そしてより価値を生み出すことの出来るスキルを獲得するための教育、そしてさらに就労機会へと課題が移っていく。本書では、著者は教育の問題を初等教育として提起していたものの、どちらかといえば日本は国際的に初等教育は充実しているというべきであり、むしろ問題は就労問題へと直結する大学をはじめとする高等教育の問題であろう。遊んでいても卒業できると揶揄される日本の大学教育が、価値創造の手段となる知識やスキルの習得に貢献せず、人材の教育はもっぱら採用した企業が行うことを何十年も同じ状態で放置してきたことが、現在の競争力の低下の一因であるのではないだろうか。終身雇用と年功序列を柱とした日本の雇用形態は、著者の言葉をかりるならば、それは日本社会の「思い出」であり、それを基準として現状を嘆く格差論はノスタルジーであって建設的とはいえない。一方、米国ではストックとしての資産が偏在していることでの、社会階層の固定化が問題であり、粗末な公共初等教育しか提供されないアメリカでは、日本よりも問題の解決はより困難であろう。格差というのは、その是非はともかくとしても、人間の社会的活動の結果として必ず生じる必然であり、共産主義を選択しなければ、あがなうことの出来ないものであるといえる。アメリカでは、そいういういわば割り切りともいえる感覚で、それをあたりまえのものとして容認しているようにも思える。では、日本以上に格差社会であるアメリカでなぜそれが容認されているのかというところが本書の読みどころの一つでもある。建国の成り行きから、奴隷制度、移民と西部開拓、南北戦争など時代時代の政治的、社会的、経済的背景を織り交ぜながら、社会階層がどのように変遷していったのかが具体的なデータを交えながら提示されている。