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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.10
- 出版社: 解放出版社
- サイズ:21cm/237p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7592-6703-4
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商品説明
わたし探しの「ぷちナショナリズム」が、どのようにして排外主義へ転化するのか? 現実に生起するナショナリズム現象を解明し、ナショナリズム・シンドロームの罠から抜け出す処方箋をさぐる。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
ナショナリズムの復活?あるいはグローバリズムとナショナリズムの共犯? | 李省展 述 | 14−17 |
---|---|---|
国家とナショナリズム | 高橋哲哉 述 | 18−31 |
ODA「日本の心」は「国際貢献の現場」で「排除の心」に変わってしまうかも | 村井吉敬 述 | 32−47 |
著者紹介
高橋 哲哉
- 略歴
- 〈高橋哲哉〉1956年福島県生まれ。東京大学卒業。東京大学大学院教授。哲学者。
〈村井吉敬〉1943年千葉県生まれ。早稲田大学卒業。上智大学外国語学部教授。
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紙の本
「黒い白鳥」ナショナリズム
2007/01/07 21:28
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る
姜尚中(かん・さんじゅん)東京大学大学院教授(政治学・政治思想史)の「従属的ナショナリズム」に関する発言を以下に引用します(『ちょっとヤバイんじゃない?ナショナリズム』50頁。引用文中「僕」は姜尚中氏)。
《 これは、僕の一つの結論なんですが、いまの日本のナショナリズムは、実は自立していない。つまり、アメリカという世界最大級のヘゲモニー(主導権)を握っている超大国への「従属」があって初めて、日本のナショナリズムというものが、あたかも自己完結しているかのように思われ、かつ、見せられるという状態なんです。これは一言で言うと従属的ナショナリズムだと思うんですね。ナショナリズムを自由と独立、そして領土の保全、そして自決権として考えるならば、ナショナリズムが従属的ナショナリズムであるとは、言ってみれば「黒い白鳥」と言っているようなもんで、形容矛盾なんですね。》
姜尚中氏の「従属的ナショナリズム」論は「r」さんや私(喜八)の「属国ナショナリズム」論と大変に近いように思います。それにしても「黒い白鳥」のたとえは絶妙ですね。すなわち「黒い白鳥」ナショナリズム・・・。
さらに姜尚中教授は次のように語ります。この段落には「反米を掲げられない日本のナショナリストたち」という小見出しがつけられています(同書51頁より引用)。
《 ところが、いま最もナショナリストである人が、いわば最もアメリカン・ペイトリオット(アメリカ愛国主義者)であるという、非常に奇妙な現象が起きているわけです。でも、私から見ると、反米を掲げない右翼というのは、やっぱり右翼ではないと思うんですが。ところが、むしろ日本のナショナリストからすれば、反米は一番忌み嫌われるべきものということになります。これはまさしく自己矛盾なわけです。なぜ、こういうことが起きているんだろうか。つまり、日本でナショナリズムのボルテージが高まれば高まるほど従属が深まるという、この明確な自己矛盾が、いわば多くの国民には、必ずしもそのようなものとして意識されていないし、また、それをおもに力強く語っている方々もそういうふうには言わない。》
つい先日(2007-01-05)、私(喜八)は「「米国が一番、日本は二番」保守」ということを書きました(『アメリカの日本改造計画』)。実際のところ日本のナショナリストの中にはアメリカに対して非常に強い一体感を抱いているとしか思えない人たちが相当数いる。雑誌『正論』や『諸君!』を読んでいると、そのことを強く感じます。
彼ら彼女ら「黒い白鳥」ナショナリストたちのアメリカに対する「献身」が報われることはあるのだろうか? きわめて疑わしいと思いますね。そもそも「滅私奉公をすればご主人様はきっと報いてくれる」というような思想(?)はアメリカ人にはまったく通用しないでしょう。いいように使われてあげくのはては弊履《へいり》のごとく打ち捨てられる。アメリカ人が特別に冷酷であるということではなく、「渡る世間は鬼ばかり」の国際社会では、それが「常識」ではないでしょうか。
『ちょっとヤバイんじゃない?ナショナリズム』は2005年11月05日に恵泉女学園大学で開催されたシンポジウム「グローバル化の中の国家・国境・ナショナリズムそして人権」の記録を補正・再構成して単行本化したものです。姜尚中教授以外の方の発言にも啓発される点が多々ありました。特に辛淑玉(しん・すご)さんは光っています(って、単に私が「辛淑玉ファン」なだけなんですが(笑))。