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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.10
- 出版社: 牧野出版
- サイズ:20cm/341p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-89500-095-8
紙の本
国家を騙した科学者 「ES細胞」論文捏造事件の真相
初の韓国・最高科学者の称号を受け、巨額の研究費を手にしていた黄禹錫。だが、難病治療が可能になるとした彼の論文は真っ赤な噓だった。なぜ人々は国を挙げて彼に熱狂し、騙されたの...
国家を騙した科学者 「ES細胞」論文捏造事件の真相
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商品説明
初の韓国・最高科学者の称号を受け、巨額の研究費を手にしていた黄禹錫。だが、難病治療が可能になるとした彼の論文は真っ赤な噓だった。なぜ人々は国を挙げて彼に熱狂し、騙されたのか? 巨大詐欺事件の真相に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
李 成柱
- 略歴
- 〈李成柱〉元東亜日報記者。医学分野を担当した。韓国青年大賞、ペンテック科学論人賞などを受賞している。
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紙の本
反証と確証のシステムが機能しない社会は、真の民主主義国家ではない
2007/01/21 12:40
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みち秋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国内外で科学の信頼性を失墜させる論文捏造事件が止まる所を知らない。
2005年科学誌「サイエンス」に難病患者の再生医療への応用が期待されている患者適応型ES細胞の生成にソウル大黄禹錫教授が成功したとの論文が発表された。しかし昨年この論文は捏造であることが発覚して、日本でも大きく報道されたことはまだ記憶に新しい。
本書によるとこの事件は最初からES細胞の存在はなく、単なる詐欺事件であったにもかかわらず肥大化したのは、政府とマスコミの煽動により黄教授が偶像化され、国民が常軌を逸した行動に出た事件との事。
著者は今回の恥辱的な事件の背景にある政府、マスコミ、国民がなぜあれほど熱狂し、予期せぬ行動に出たかに着目して、さまざまな事象を捉えながら韓国社会と国民の本性を浮き彫りにする。愛国の全体主義も垣間見ることができ、現在の韓国社会と国民性を知る上で貴重な手掛りを得ることができる。
この事件を肥大化させた最大責任者はマスコミであり、民主主義を唱えているマスコミが誤謬を正すべきシステムを自ら放棄して、思いも寄らない方向に国民を扇動した責任は大きいと厳しく糾弾する。
今回起きた国民の特異な行動は典型的な集団ヒステリーでありその要因に資本主義の急激な発展による疎外感をあげている。
近代文化と儒教文化が融合している特殊な抑圧文化と疎外感とが相乗して特異な行動を起こさせたと分析する。卑近な例では盧武鉉政権が領土・教科書問題で反日感情を煽ることにより国民の抑圧された憤怒の感情、攻撃性を分散させていることは知られている。
翻ってわが国はどうか。昨年東大でがん細胞を消滅させる「SIRNA」に関する論文で捏造事件が発覚している。この事件で大学および研究機関の研究体制のお粗末さが露呈され、科学に対する不信感が強まっている。
今科学者は国威発揚、企業発展の下、市場原理が導入され研究費獲得のために、論文数の競い合いで、倫理規範を無視して不本意ながら論文を捏造してしまい、科学の信頼性を失くしかねない状況にあるようだ。一方政治では先の小泉政権下で演じられた「小泉劇場」でのマスコミの行動、大衆の狂気ぶりが酷似している事に危惧の念を抱く。
本書は「マスコミが扇動すれば、いつどこの国でも危機的状況が作り出される」事と、「その社会が真理だと確信している事象であっても、常に反証と確証の機会が与えられなくては真の民主主義ではない」 ということを私たちに示唆している。