紙の本
なぜピョンヤンの写真が ?!
2008/06/03 22:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
建築や景観はカラー写真をみないとわかりにくいが,冒頭に 4 ページにわたってそれがあるのは,新書としては気がきいている.本をよみすすむまで,そのかぎられた写真のなかに北朝鮮のピョンヤンの写真が数枚ある意味がわからなかった.
いろいろな話題がとりあげられているが,そのなかでも著者が力説しているのは日本橋をふさいでいる首都高を地下に移設するカネがあるなら,もっと有益なことがたくさんできるということである.この首都高移設に代表される「景観論」の極致として,整然としていて美しいピョンヤンの景観があるという.著者が最後に書いているのは,こういう「景観論」のいきつく果ては「何ごとも起こらない,変化なき永遠の定常状態.それは歴史の終わりかもしれない」ということばである.
逆説的な書き方だが,著者が生き生きとした都市をもとめていることがつたわってくる.
投稿元:
レビューを見る
少し硬質な文章だけれど、あえてエッセイとして読む。
「安全を標榜しつつ排除と監視に向かう社会」と同質のものが増えていくことについて。
「美しい景観」論者にとっての「ユートピア」都市、平壌について。
投稿元:
レビューを見る
景観の美に対する認識を考えさせられる。自分もはじめは屋外広告物とかコンクリートや電線だらけの町並みは汚らしいと思っていたが、最近はむしろ修正された町並みの方に違和感を感じる。人々の生活がにじみでている景観が必ずしも美しいとは言わないが親近感が持てる。ランドスケープをデザインすることってどういうことなのかと考えさせられる一冊になった。筑波の都市伝説のことも載ってた。(2006/1/23読了)
投稿元:
レビューを見る
先日訪れた上海、大気汚染の中3日間街を歩き廻っていたせいか、いまだに咳がとまらず。。。。皆さん、上海に行くときは、ぜんそくにかからないように注意してください(爆)。
Financial Times にこんな記事が。。。
750,000 a year killed by Chinese pollution
By Richard McGregor in Beijing
Published: July 2 2007 22:03 | Last updated: July 2 2007 22:03
Beijing engineered the removal of nearly a third of a World Bank report on pollution in China because of concerns that findings on premature deaths could provoke “social unrest”.
The report, produced in co-operation with Chinese government ministries over several years, found about 750,000 people die prematurely in China each year, mainly from air pollution in large cities.
China’s State Environment Protection Agency (Sepa) and health ministry asked the World Bank to cut the calculations of premature deaths from the report when a draft was finished last year, according to Bank advisers and Chinese officials.
Advisers to the research team said ministries told them this information, including a detailed map showing which parts of the country suffered the most deaths, was too sensitive.
“The World Bank was told that it could not publish this information. It was too sensitive and could cause social unrest,” one adviser to the study told the Financial Times.
Sixteen of the world’s 20 most polluted cities are in China, according to previous World Bank research.
Guo Xiaomin, a retired Sepa official who co-ordinated the Chinese research team, said some material was omitted from the pollution report because of concerns that the methodology was unreliable. But he also said such information on premature deaths “could cause misunderstanding”.
“We did not announce these figures. We did not want to make this report too thick,” he said in an interview.
The pared-down report, “Cost of Pollution in China”, has yet to be officially launched but a version, which can be downloaded from the internet was released at a conference in Beijing in March.
Missing from this report are the research project’s findings that high air-pollution levels in Chinese cities is leading to the premature deaths of 350,000-400,000 people each year. A further 300,000 people die prematurely each year from exposure to poor air indoors, according to advisers, but little discussion of this issue survived in the report because it was outside the ambit of the Chinese ministries which sponsored the research.
Another 60,000-odd premature deaths were attributable to poor-quality water, largely in the countryside, from severe diarrhoea, and stomach, liver and bladder cancers.
The mortality information was “reluctantly” excised by the World Bank from the published report, according to advisers to the research project.
Sepa and the health ministry declined to comment. The World Bank said that the findings of the report were still being discussed with the government.
A spokesperson said: “The conference version of the report did not include some of the issues still under discussion.” She said the findings of the report were due to be released as a series of papers soon.
投稿元:
レビューを見る
日本橋の景観再生には賛成の立場をとっていた私に、別の視点を与えてくれた。
カオスな日本、キッチュな日本を客観的に見ることができ、今後の景観論争を考えるうえで参考になった。
投稿元:
レビューを見る
激しく同感!!!
こうゆうの考える人私だけじゃなかったんだー!いい景観って果たして何なんでしょうね。
投稿元:
レビューを見る
都市が気になる。
私はきちんと整備された、生活観のない都市を美しいとかんじてしまうが、そんな簡単なものではないんだ。下北沢の道路を広くするから、街もちょっと変わってしまうような話を前聞いたけど、ああいうカルチャーで出来上がっているような街を残していくことも大切だよね。
んー都市を考えるのは、深くておもしろい。
投稿元:
レビューを見る
(111017)
美しいか否かという基準はどんな理由をつけようか人間の主観でしかない。それ故に生じているであろう著者の発言の矛盾は客観的に受け止めてあげるしかない。
それよりも、本書の有用性は、多くの事例や意見(偏りはあるが)を引用することにより、美しさとは何かという問いに対する答えを出すための手助けをしてくれるところにある。
投稿元:
レビューを見る
以前、五十嵐太郎氏の過防備都市を読んで、「集まって住むことの窮屈さと安心感のバランスが重要」というメッセージを受け取りました。
今回受け取ったメッセージは、この巻末の一文がすべてを語っているように感じました。
口当たりのいい復古的な景観の言説に流されず、現実の多様さをそれぞれが深く考えるきっかけになれば、幸いである。
私は「自らのライフスタイルを度外視して、冷凍保存のような景観を生み出すガイドラインなどつくるべきではない」と思っています。しかし一方で、本書に出てくる普通のまちの「笑えるようなだらしない景観」は、なにか拠り所を求めている気がしてなりません。例えば、先日紹介したまちなみ住宅のススメはひとつの拠り所です。ひとつの建築や建築群がしっかりとした意志を持ってライフスタイルに呼応しながら設計されたとき、そのまちは生まれ変わるきっかけをつかむのではないでしょうか。
景観を語るに、私のベースのイメージはいまだに陰影礼讃のこの言葉です。
美と云うものは常に生活の実際から発達するもので、
暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、
いつしか陰翳のうちに美を発見し、
やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った。
(谷崎潤一郎)
生活から逸脱した「美」は劇場的で、刺激を与えてくれる要素ではあるとは思いますが、直輸入した瞬間から陳腐化してしまう宿命にあると感じています。
現実は多様で、その多様性が明日への活力へつながっていくのであり、その生活の実際の中であるべき景観を論じるべきです。色や高さや高速道路といった極論だけがクローズアップされるような状況に流されて、思考停止するような世の中だけにはなってほしくないものです。
投稿元:
レビューを見る
五十嵐太郎氏は『10+1』などの雑誌を開くと名前を非常によく見かける,建築分野の人気作家(?)。なので,私も彼の文章を一度や二度読んだことがあるのですが,あまり惹かれるタイプではなかったので,著書は本書が初めて。というのも,大学の講義の小レポートの課題として選出したので読んだ次第。いかにもなタイトルに読む気がしませんが,まあ読まず嫌いもよくありません。この中公新書ラクレというシリーズも初めて。
第一部 21世紀の景観論
1章 醜い景観狩り
2章 景観を笑う
3章 日本橋上の首都高速移設を疑う
4章 渋谷のドブ川とソウルの清渓川
5章 テーマパーク化する都市
6章 東京の色彩と広告
第二部 計画とユートピア
7章 アジア・メガロポリスの建設と破壊――香港・上海・深圳
8章 押井守の未来都市
9章 幕張はいかにつくられたか
10章 管理社会が生み出す”都市伝説”――ディズニーランド・筑波・都庁舎
11章 ユートピアとしての平壌
12章 過防備都市・再論
案の定というか,本書は『10+1』に掲載された文章を多く含むもので,書き下ろしではなかった。確かに,第一部はかなり一貫して日本の現代都市景観を論じているが,第二部はバラバラな印象で,香港,上海,深圳,平壌といったアジアの諸都市の訪問記あり,押井 守のアニメーションの話ありな感じでまとまりはない。
しかし,思ったよりは頭の固い人間ではないことが分かった。といっても,彼の関心は常に具体的なものに向けられていて,私が好むような抽象論や認識論に関する議論はほとんどなかった。といっても,3章の日本橋の話や9章の幕張の話は,新書という決して文字数が多くない著書の中ではしっかりとした情報に基づいて分かりやすく説明されており,学ぶことは多かった。本書は基本的に景観に美しい・醜いの絶対的価値軸は存在しないという立場に立っている。でも,実のところは完全なる相対主義ではなく,建築家として教育を受けてきたものとしてのかなり強固な価値軸があることも確かである。
投稿元:
レビューを見る
色彩、押井守、北朝鮮の話がおもしろかった。
赤・白(日本的)の秋葉原と青(外国的)の渋谷。
こういう切り口の景観論もあるのかー
中華ゴシック論。
過剰防備について。
資本主義・自由経済では監視カメラやセキュリティによって、
社会主義・共産主義では主体思想を顕現させる装置(モニュメントや計画的都市造営)によって、
実現されるということ。
等々…門漢外なのでおもしろい視点がいっぱいあった。
投稿元:
レビューを見る
ざっくりしか読んでないけど、
建築の人ってこういう感じだよねぇって
改めて実感。
いろんな都市の事例が出てきているのが
興味深かった。
特に、幕張と平壌。
投稿元:
レビューを見る
視点が良いと思う。確かに景観論争は、独裁国家の様相を帯びているし、善と悪に二分して悪を潰すことを正当化している。
途中、中だるみするが、最後までしっかりと書かれていて好感を持った。五十嵐太郎さんは目の付けどころが良い。今まで見過ごされてきたようなことを意図的に論じるので読者の中でも新たな発見がある。実に刺激的な人だ。他の著作全て読んでみようかと思えるほどの出来。
(『16章の・・・』は微妙だったが。)
投稿元:
レビューを見る
すごくシンプルかつニュートラルな考え方で、読んでいて冷や冷やしなかった。
景観論にきっと答えなんて無いんだよね。
平壌の都市計画の引用の部分が特に面白かったな。
この人の本をもっと読みたい。
投稿元:
レビューを見る
現代の情報化時代における都市の知覚と評価のあり方について述べた本。
芦原義信に代表される、ヨーロッパ都市計画への憧憬を掲げたこれまでの都市の捉え方とは異なる立ち位置をとっている。
これまで美しさをよしとしてきた社会に対し、管理されることでなりたつ「美しさ」に、またそもそも主観によって判断される「美しさ」の定義に疑問を投げかけている。
一元的な解釈ではなく、多方向・多視点的に都市の景観を評価することで、今までとは違う価値感を創造できる可能性があると指摘するような主張には、個人的に共感。
主張が強い一貫性を持っていて、やや言い過ぎ、ぐらいの表現であるがそのため専門外の一般の人でもわかりやすいと思う。