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- 税込価格:13,640円(124pt)
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商品説明
社会科教師のおでこのテカリ占いをしては大受けしていた陽気でマシンガンな中学時代からクールで一目置かれる弓道部員の高校時代を経て、大学生になった私がしたことは、恋をすることだった。遠くの的を見抜く力のおかげで視力が2.0以上になっていた私はその年の秋、キャンバスで遙か遠くから歩いてくる同じ学年の男の子に「今度は的じゃなくて、別のものを射抜くことにしたんです。例えば男子とか」と笑いかけていた。怖いくらい、好きになる。それでもいいと思った。最強の恋愛小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
恋はスタンプカードのようなものだ、と私は思う。このカードはいつか、かけがえのない何かと交換できる。そんな日がきっとくる−。ロングセラー「100回泣くこと」の著者が描く最強の恋愛青春小説。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
スクランブル | 5-23 | |
---|---|---|
突き抜けろ | 25-110 | |
春休み | 111-135 |
著者紹介
中村 航
- 略歴
- 〈中村航〉1969年岐阜県生まれ。第39回文藝賞を受賞しデビュー。著書に「リレキショ」「夏休み」「ぐるぐるまわるすべり台」など。
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紙の本
中村の描く人物たちがさりげなく示すユーモア、それが自然なのに、実際には殆どありえないんです。小説におけるリアルを教えてくれるお手本ですね
2006/12/07 19:38
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が裏声で応援しているのが中村航だ、っていったら驚きます?彼の書く作品なら何でも読みます(ウソです、読んだのは『リレキショ』『夏休み』『ぐるぐるまわるすべり台』の三部作と『100回泣くこと』、それに中村作品が出ているアンソロジー『I LOVE YOU』の5冊だけです、はい)。
でも、どれも好きですね。悲劇ですら微温的にしてしまうその表現は、決して甘いものではなくて、どちらかと言うとクール。でも、それは冷たい、というのとはまるで違って、どこか距離がある。その感覚がね、もう掛替えのないものなんです。無論、それはいかにもユーモアにみちて、殺伐とした現代の反映ではないのですが、ではそれは作り事かというと、むしろリアルな願望ではないか、そう思わせる、それがとても新鮮なんですね。
実は、この小説にもそういうオドロキにみちたところがあります。主人公である僕と彼女の二人が、せつないまでにお互いを求め合いながら、その気持ちを大切にしたいがために別れようとする、まずこれです。次は、それを回避するために二人が、というか僕が考え出したこと、これが二つ目です。もう、これだけでも十分にファンタジーです。それも、どこか私たちの心を擽る。
それは、タイトルの軽薄ともいえる強烈さ(中村自身の『100回泣くこと』もですが、同じ出版社から出て、日本中に二匹目の泥鰌を探させた『世界の中心で愛を叫ぶ』を彷彿させる)や、カバーの地の色である赤色の激しさからは、及びもつかないものです。装画は中村作品の多くを手がける宮尾和孝ですが、今回は微妙に内容とズレがあるような・・・
ま、二人の心の奥底で燃える火はこのくらいの熱さではあるんです。そう考えれば、ピッタシかな。ちょっと川村哲司の装幀は安っぽいけれど。いずれにしても、お話の内容は、もしこんな恋が出来たら、そう思わずにはいられない暖かみのあるものです。これは中村のどの作品にもいえる男女の、或は男同士の関係のありかたなんですね。今回も出てきますよ、不思議な男同士の付き合い。
閑話休題。内容紹介に入りましょう。もくじ、ですが
その一、スクランブル
その二、突き抜けろ
その三、春休み
その四、最強の恋のうた
その五、富士に至れ
と、工夫もなにも感じられないそっけなさ、ですが奥付の直前の頁に載っている注が笑えます。少なくとも「その一、スクランブル」「その二、突き抜けろ」までを読み終えた段階で目にすれば、くふっ、っていうくらいの微笑が浮かぶはず。そこにはこう書いてあります。
参考文献『改訂英作文の栞』(山口書店刊)
本作はm「突き抜けろ」の章のみ、アンソロジー『I LOVE YOU』(祥伝社刊)所収のものを加筆改稿しました。そのほかの章は書き下ろしです。
交差点で騎馬戦をしたり胴上げ行為をすることは、道路交通法により禁じられております。くれぐれもマネをしないでください。
(作者)
主人公は僕、大野。一年の浪人生活の後、大学生になったばかりで、現在、寮に入っています。二人が出会ったのは十月の文化祭の時で、初めて交わした会話は、短いものでしたが、その日、再び顔を合わせ、ほぼ同時に「お」と言ったりします。でも、僕は、その頃つるむようになった学科の友人、心優しき小太り坂本と食事をして、一日があっさり終わります。
で、その後も何度か彼女をみかけることはありますが、特に何も起きません。そして、坂本といる時、遠くで手を振る彼女を見て、僕は誕生日よりも血液型よりも早く、彼女の視力データ、2.0という僕のおよそ2倍、坂本の20倍で、それは彼女が高校生のとき弓道部で遠くの弓を毎日睨んでいたからだ、ということを知ります。
お話はこうして淡々と進むのですが、そこはそれ、中村得意の手法が読者を待ち構えています。もっともっと読みたい作家ですね。