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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.10
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/268p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-10-464502-8
紙の本
きつねのはなし
著者 森見 登美彦 (著)
京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し...
きつねのはなし
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商品説明
京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは、あれは何だったのか。さらに次々起こる怪異の結末は—。端整な筆致で紡がれ、妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。【「BOOK」データベースの商品解説】
細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは何だったのか−。『小説新潮』掲載の表題作ほか、妖しくも美しい奇譚全4篇を収録する。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
きつねのはなし | 5-72 | |
---|---|---|
果実の中の龍 | 73-135 | |
魔 | 137-194 |
著者紹介
森見 登美彦
- 略歴
- 〈森見登美彦〉1979年奈良県生まれ。京都大学農学部大学院修士課程修了。「太陽の塔」で日本ファンタジーノベル大賞受賞。他の著書に「四畳半神話大系」がある。
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紙の本
笑いもいいが、シンとしたこちらのほうが好きです
2007/03/16 00:31
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中乃造 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半神話大系』に続き、私が森見登美彦の作品を読むのはこれが三冊めになる。先の二作品は、馬鹿馬鹿しいまでに軽妙でとにかく愉快だったが、これははずいぶん違っていた。そして私は『きつねのはなし』が一番好きである。
収められた短編は各々ほぼ独立しつつ、共通点はある。ケモノや法蓮堂という項はもちろんだが、やはり一冊をまとめ上げているのは貫かれた雰囲気だ。すべて怪奇幻想小説と呼べるだろう短編である。
表題作の『きつねのはなし』が、彫りの深さで最も心に残った。骨董屋でアルバイトをする主人公が、天城という人物に関わって得体の知れない体験をする物語である。
得体は知れないが、読者として煙に巻かれる印象は薄い。なにかしらの思い入れを、そうと解らぬように書き手が変奏している趣ではない。不可思議が不可思議のまま描き出されていて、輪郭ははっきりしているのだが、自分が何を見ているのか理解できないという感触だ。
この作品には細い一条の恐怖がある。無慈悲なものに、供する犠牲が必要ならば、自身もまた無慈悲にならざるを得ない。憐憫を孕んだ甘いものでは決してなく、意志に貫かれた冷徹さ故、厳かにさえ映る。
『果実の中の龍』は、大学生の主人公と先輩、その彼女を巡る短編。ストーリーよりも人物に焦点を当てたような作品で、読後はしんみりとした。登場人物に対し、いちおう名の付いた手持ちの感情——哀しみ、とか——が起こされるので、収録作の中では解りやすい部類に入ると思う。『魔』も読み方によっては同じタイプかもしれない。
『水神』は、祖父の通夜が舞台である。和製ホラーの王道たる水を中心に据えたせいか、恐怖譚的な色が濃い。ぬめぬめとした手触りが独特だ。それでいてどこかノスタルジックなのは、エピソードが時代を遡った由来から語られているという理由だけではない。ラストは印象的で、廃工場の前で佇んでいるような心持ちになった。
私は未読だがデビュー作『太陽の塔』はコミカルな作風だと聞く。大々的にブレイクした感のある『夜は短し〜』などを読んだ限りでも、森見登美彦の笑いが一流であることは疑いない。しかし、『きつねのはなし』のように「得体の知れないもの」を衒いなく見つめ描いた筆の強さのほうが、私は好きだ。
紙の本
きつねにつままれてみませんか
2008/12/24 13:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
きつね・・・狐じゃなくて「きつね」しかもお面の。まさに「面妖な」モノが表紙に載っている本書の装丁は、民俗系のストーリー好きの読者をひきつけるのに十分である。なのに中身は民俗学していない。民話や伝承が出てくるわけでも無いのに、それでも表紙と読者の期待に応えるだけの怪しげな、奇妙な、そしてゾクリとする魅力がここには溢れているのだ。
ねっとりとした、そして梅雨時のじとじと感が始終付きまとっているかのような世界。舞台は夏、あの蒸しかえるようなむんむんとした気持ち悪さが噎せ返るような気持ち悪さが漂っている。後半になるにつけ、ケモノ臭さは生臭さとなり、人間に混ざっていたものからケモノへ、
そして山のヌシのような大物へ・・・異形のものがだんだんと大事に至る。
表題作「きつねのはなし」は変な人間が変な出来事に出会った話に始まり、人間の方になにか変なものが紛れ込んでいるケモノの話へと続く。そして最後は、人間が不可侵のモノに手をつけてしまった・・・異形のものの話。
どれも読んでいてくらっと眩暈を覚えるような、そして気持ち悪さを感じる。あまり多くは語れない。というのも語るに語れない奇妙で不思議で「言い表しようの無い」物語が本書の魅力であり、独特の匂いであり、世界だからだ。
実は『夜市』(著:恒川浩一郎)のような世界を期待して読み出したのだが、それとはまた違うカラーである。『夜市』が異界との交流を介して『人間』を描いているのに対して、こちらは人間世界を介して、あちらさんを描いているのだから。
なんとも、冬の寒空の下なお更ゾクッとさせられる作品なので、防寒具を装着の上、読むことをオススメする。
紙の本
気配
2017/08/23 09:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mino - この投稿者のレビュー一覧を見る
再読。 森見登美彦作品の中では変わり種かもしれないが、私はこの作品が本当に好きだ。何物ともはっきり言うことのできない、京都の闇に溶ける『気配』を感じる短編集。オススメである。
紙の本
京都ならあり得る闇。
2015/12/12 23:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
森見作品で一番好きな一冊。
千年以上の歴史がある古都・京都ならこんな闇があっても可笑しくないと思わせる作品です。
ちょっと不気味で、夜自分の斜め後ろの気配をうかがってしまうような話をもっと書いて欲しいです。
紙の本
森見ワールドとしては、ちと怖い
2008/11/16 22:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
森見登美彦さんが、登場した最初の頃は、
「この人、「太陽の塔」でファンタジーノベル大賞受賞でデビューなんだよ」
と周囲に風潮していた私ですが、
人気作家の道をいとも簡単に歩み出し、NHKの番組TRにも出演していたし、
雑誌ダヴィンチの作家ランキングでも1位でした。
もうファンタジノベル云々とちょっと変な紹介していた私より
回りの皆さんのほうが、詳しいという状況になってしまいました。
で本書ですが、
短編4編を収録した連作集です。
すべて、京都の一乗寺にある古道具屋、「芳蓮堂」が関係してきます。
森見登美彦は、万城目学ともに京都妄想小説というジャンルを作っちゃったわけですが、
本書は妄想というよりは、ちょっと怖い感じ。
エンタメとして、ユーモアを加味せずに、ちょっと違う世界観を出そうとしています。
村上春樹の「東京奇譚集」ならぬ、京都奇譚集といった風合いでしょうか。
"あやしげなこと"が、おこるのですが、"あやしげなこと"はそのままにして
森見のこの雰囲気を味わって欲しいのですよ、、むふふふ、という思惑のまま、
すべてのお話しは、終わってしまいます。
この辺、話題の新書、「日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか」に関係してくるかも、、。
京都の路地を一本入ると、そこにはちょっと不思議な世界があるかもしれない?という
妄想系森見ワールドの大原則はそのままですが、エンタメとしてユーモアを取り入れていた
いや、そこに着地させていた「太陽の塔」とは、読後感は、全然違います。
「太陽の塔」からきた読者はちょっと吃驚するかもしれません。
紙の本
読後の爽快感はないです。次女じゃありませんが、どちらかといえば気味が悪い。おまけに、オチがついていない。だから、夜道を歩いていて話を思い出している時、わ~~!って騒がれたら気絶しちゃうかも・・・
2008/05/28 20:15
6人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読み終わった高二の次女は「気持ち悪い」といいました。フムフム、そうね、だってスッキリしないお話ばかりだし、全体に百物語風に閉めきった部屋で、蝋燭の明りで陰々と語られるような内容だし、何より、体に纏わり着いてくるような濃密な闇の気配が、鬱陶しいし・・・
でも大きいのは、我が家の森見体験が『有頂天家族』という破天荒なスケールをもった明るいお話から始っていることでしょう。少し前に『太陽の塔』を読み、今回が三冊目で、現在、長女が『夜は短し歩けよ乙女』に取り掛かっている最中で、まだまだ森見のことが分ったとは言えない状態で、今回の唐代伝奇集のような妖しい物語にぶつかったわけですから混乱も致し方ないところです。
年齢バレバレですが、私が連想するのはつげ義春の劇画です。それも『ネジ式』あたりの作品。皆さんは京都という舞台に惑わされているようですが、私はつげワールド。あの日本的な湿っぽさこそ森見の世界に溢れるものだ、なんて思います。装画は、そういう和ものを描かせたらこの人、水口理恵子、装幀は新潮社装幀室。ちなみに、今回の装幀は失敗の部類でしょう。色の選択を間違った感じです。
連作小説、といってもいいのですが「魔」だけは、ちょっとメンバーが違うかなと思います。残りの三篇には一乗寺にある芳蓮堂という古道具屋が、何らかの形で登場します。初出も含めて簡単に内容紹介をしておきます。
・きつねのはなし (「小説新潮」2004年3月号「きつねの話」を改題):大学生の私は、二回生のとき芳蓮堂のナツメさんに出会い、三回生のとき店でバイトを始めます。私には付き合って1年半になる奈緒子という同じクラスの恋人がいます。私は鷲森神社の近くの天城さんの屋敷を訪れて・・・。
・果実の中の龍 (書き下ろし):私と先輩とは人文系の研究会で知り合いました。先輩は青森県生まれで、兄が家を出た後、京都の大学の法学部に入り、二回生から三回生にかけて半年休学し、シルクロードを旅したという人で、一乗寺のアパートに住み、古本屋、古道具屋、家庭教師など様々なアルバイトをしています。先輩が付き合っている理学部の大学院生の結城瑞穂さんは・・・。
・魔 (書き下ろし):私が家庭教師をしている西田酒店の高校一年になる次男・修二は、一つ年上の長男・直也とともに清風館という道場で、師範の武田先生から剣道を教わっています。近所の武具店の女子高校生で兄の直也と同い年の夏尾美佳は、中学生の頃までは直也より強かったそうです。清風館には、問題を頻繁に起こすため剣道部を放逐された秋月も通っていて・・・。
・水神 (書き下ろし):父や伯父とともに過ごすことになった祖父の通夜。祖父が芳蓮堂に預けていたという家宝が返却されるという。中々現れない芳蓮堂の人間を待ちながら、皆が語るのは祖父にまつわる不思議な話。そして夜中になってやってきた芳蓮堂の主人が持ってきたものは・・・。
分量的には全体の3/4が書き下しなので、初出もなにもないような気がします。単行本にするために無理矢理残りの三篇を書き足したのでしょうか、それとも当初からこのような構成になることが決まっていたのでしょうか、気になることではあります。
一番好きなお話は表題作です。30歳になるナツメさんと私との関係や、距離をとっていた相手が妖しい要求を持ちかけたりするのがなんとも暗い。これぞダーク・ファンタジーと言えるでしょう。何度も読み返すことができそうな話ですが、暗い物語なので、愉悦感は味わえないかもしれません。
昨日も娘たちと『夜は短し歩けよ乙女』に登場する「先輩」のウザさについて意見が一致して盛り上がりましたが、最後に次女が「この作家、気持ち悪いきつねの話、書いた人だよね」と呟きました。そういうお話です。