紙の本
生き延びるためのラカン (木星叢書)
著者 斎藤 環 (著)
「心の闇」を詮索するヒマがあったらラカンを読め! そうすれば世界の見方が変わってくる。幻想と現実が紙一重のこの世界で、できるだけリアルに生き延びるための、ラカン解説書にし...
生き延びるためのラカン (木星叢書)
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商品説明
「心の闇」を詮索するヒマがあったらラカンを読め! そうすれば世界の見方が変わってくる。幻想と現実が紙一重のこの世界で、できるだけリアルに生き延びるための、ラカン解説書にして精神分析入門。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
斎藤 環
- 略歴
- 〈斎藤環〉1961年生まれ。爽風会佐々木病院医師。思春期・青年期の精神病理、病跡学を専門とする。著書に「若者のすべて」「「負けた」教の信者たち」「家族の痕跡」など。
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書店員レビュー
現代思想にも大きな影...
ジュンク堂書店新潟店さん
現代思想にも大きな影響を与えたフランスの精神分析家、ジャック・ラカン。人が彼について何か語るとき、決
まってみな共通の言葉を口にする。「難解」「晦渋」。そんなわかりにくいラカンの思想を日本一わかりやすく
解説してみよう、というのがこの本だ。曰く「知的に早熟な中学生ならすいすい読める」くらいに。なるほど、
冒頭で著者自らそう断言しているだけあって、まったくのど素人(たとえば私です)でも確かにラカンの思想の
全体像、その輪郭をなんとなく捉えることができるのだ。勿論、言うまでもないことだが、本書を読んだからと
いって、決してラカンを理解したつもりになってはならないけれど。具体例を交えた平易な解説は非常に優れて
いると思う。しかしながら(ラカンの思想の射程は別として)“生き延びるため”というタイトルは多少大袈裟
な感じが否めません。
人文書担当 西村
紙の本
読者層に媚び過ぎている。結果、説明の脇があまりにもアマイ。
2009/04/22 01:22
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:反形而上学者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いまや、沢山の著書で一般的にもかなり名の通った存在となった斎藤 環氏の「ジャック・ラカン」入門とでも言える本である。
私は個人的にはこういう書き方をした本は嫌いだ。あまりにも購買層に媚びすぎていて、鼻につくからだ。
だからといって、内容が悪いかというと、そういうことではない。斎藤氏の視点で実に解りやすくかつ、読者の興味を惹きつける工夫が、本文から滲み出ている。
さて、「ラカン入門書・解説書」の類が通らなければならない大きな関門というものがあるのだが、その一つが「ラカンの使う独自用語」の扱い方であろう。その中でも「シニフィアン」が最大の関門であることは、多くの読者の同意を得られるものと思われる。
そこで、斎藤氏による「シニフィアン」の説明はどうであろうか。本文から引用して論じていくと長大な書評となってしまうので出来るだけ避けるが、斎藤氏は説明は必死にしているものの何故「シニフィアンは相互に隠喩的な結びつきを持っている」のはどういう理由からか?など、結論だけ言っていて根拠やそこにいくまでの過程という重要なものは全く剥ぎ取ってしまっている。これでは「シニフィアン」というラカン用語を引っ張ってきた「ソシュール」について知っている読者と完全に対立することになってしまう。私は「巨人・フロイト」がラカンの基本に控えている限り、「ラカン理論」を説明することと、「ラカン用語」を説明することとは、ほぼ「等価」であると考えている。
よって、携帯電話だなんだという読者層に媚びるような話しは余計だから、もっと「用語の説明」にこそ重点を置くべきであったというのが、私の率直な感想である。
斎藤氏のこうした説明は、結果「でも、よくわからない」というようなことになってしまうからだ。
「これでいい」という人に対しては、私は何も申し上げることは無いと言っておこう・・・。
紙の本
『ヨシモトで読むラカン』という本が一冊書けそうな…
2009/04/09 16:25
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:T.コージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラカンに転移してしまった著者が「日本一わかりやすいラカン入門」を目指して6年の月日をかけ、中学生にも読めるように書いたのが本書。
サブカル論議や精神分析、心理学フェチなら当然知っているレベルの用語だけで見事にラカンが解説されている。難解な専門用語が排除されているわけで、そこに<父の排除>を察する読者からは反発もあるけど、それこそこの本が成功してる証だとすればOK。
吉本に転移している自分からすると、本書はフロイトへの深い理解のためかより一層吉本理論との近似が気になる。吉本や著者への自分の転移は当然として、他者からはどう読めるのだろうか?という新たな知への欲望がさらに喚起され、もちろん必読の一冊として触れ回りたくなる欲望はこの書評を書く衝動を喚起し。。。。
タレントでも著者でも、その人を気に入ったらその人の作品を複数手に入れるのは当たり前。好きな役者の出演するTVや映画はいくつも見るし、著者なら何冊も読むでしょ。好きなミュージシャンのCDやアナログレコードだってたくさん持ってたりするもの。
そんな訳で、斎藤環や吉本隆明の本はたくさん持っている。そのなかでも専門用語を並べた専門書より解りやすく深くて、読んでいて面白い、この『生き延びるためのラカン』はランキングが高い。
漢字は<表象・表音・表意>の三位一体になっていて複雑。記号論で対象になる言語の文字としての<表象・意味>や言葉としての<表音・意味>とは複雑さのレベルが違う。
漢字という書文字はそれだけで絵と記号の両方の機能をもっている。そのために「シニフィアン」「シニフィエ」みたいな意味ありげな用語をいくつ並べても漢字が人間にどう享受されるかは説明できない。同じようなことをラカンの限界として指摘したのが斎藤環の『文脈病』で本書でも同書を参照するよう勧められている。
入門書にしてはラカンの重要概念の由来まで説明されているのもGOOD。<対象a>がマルクスの<剰余価値>をヒントにしているなど、マルクスやヘーゲルからラカンがどのような影響を受けているかという説明は参考になるでしょ。それだけでも西洋思想という文脈の中でのラカンの確かな位置づけが可能。ヘーゲルやマルクスを除外しては現代思想の文脈が成り立たない事実を再認識しないと、日本の論者のこれ以上のフラット化、動物化が避けられないもんね。
『ヨシモトで読むラカン』という本が一冊書けそうなほど、いろいろなヒントやネタが散りばめられた一冊だった。
紙の本
精神分析、三界に、家なし
2007/05/17 21:58
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る
心理学ブームといわれる最近、実際に本格的「心理学」の本を読みはじめた方々は「この学問って」という違和感を覚えることはないだろうか。多分今でも「トラウマ」とか「無意識」とかそういう用語がメインに扱われることはないと思う。昔、「ものぐさ精神分析」で岸田秀先生がそんな自分の経験を吐露されていた。門外漢からみても、「こころ」を扱う学問というのは、心理学・精神分析・精神医学・脳科学と色々あってそれぞれの間に共通了解が成立していない上に、その中でも心理学と精神分析はこれまた色んな流派にわかれていて、まったく「統合」してとらえるのは難しい。それぞれの流派がそれぞれの難解な用語を用いていて、国によって勢力分布が違ったりする。そのなかでも一番難解で、でも哲学をはじめ、いろんな他分野の学問につよい影響を及ぼしたのがジャック・ラカンだ。
この本は「ラカンの理論」あるいは精神分析(フロイトを中心とした)の解説書としては恐ろしく文体も構成も読みやすくかつしっかりした本だ。一つ一つの章が短いから、すぐ達成感が得られる。特に「ファルス」「想像界・象徴界・現実界」「女は存在しない」などの特殊なラカン用語については、本書を読んでかなりすっきりした。
とはいえ、この本が「ラカンの理論」を学術的に学ぶためのファーストステップになるか?というと、多分違うんだろうなと思う。著者が、彼にとって「わかればわかるほどわからなくなる」のが倫理的かつ優れた理論=ラカン理論と断言しているところをみると、本書はあくまで斉藤環氏という一個人とラカンとの格闘戦の実況解説のようなもので、読者のとっての「さらなる理論の高み」への階段にはならないだろう。そういう効率の悪い形、はっきりいえばタイマン勝負でしか伝達できないのが「ラカンの理論」の本質なのかもしれない。
ただ、たいがいの学術書(特に文芸批評・文化研究)で言及されている「ラカン理論」については、プロの人以外はこの本で間に合うように思えます。その程度には誠実なつくりで、本読みとして「生き延びるため」には有用な本でしょう。
紙の本
日本一わかりやすいラカン入門書?
2006/12/04 02:20
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nanako17girls - この投稿者のレビュー一覧を見る
難解なラカンをできるだけ一般の人々に理解できるように書いたのが本書です。もちろん、ぼくもラカンについては「あ〜、なんだかとっつきにくい」という印象があった。ニューアカ世代ではないので、フランスの現代思想かぶれでもないのですが、ついつい手にとってしまった。精神医学でも異端な「精神分析」を理解するのに本書はいいですね。「シニフィアン」「転移」「想像界・象徴界・現実界」など、キーワードが豊富に書いてあり、これらに疎いひとでもきちんと読めばある程度理解できるレベルで書かれている。
思考のスタイルについて考えてみる。ぼくらはときに悲観的になりすぎたり、なんでもできるという思い込みに、しばしば囚われてしまう。「自分は特別なのだ」という思いに。それは正しいのか?いや、それ以前の問題に「自分とは何なのか」ということをかんがえなければならないのかもしれない。迂闊にもそのようなことを深く考えてこなかったので、本書はいい刺激になった。「自分の欲望は他人の欲望」まさに至言である。そして、その「欲望」とは「言葉」であるという。「自分の言葉は他人の言葉」そうなのだ。能動的に語ったり、行動したりすることも実は受動的に「そうさせられている」ということなのだ。そう考えるとけっこう面白くありませんか?
「わかればわかるほどわからない」すなわち「欲望の刺激」である。入門書でありながらそれで終わらない良書である。ラカンに詳しくならずとも「生き延びるために」本書はかならず役に立つ。