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商品説明
【日本推理作家協会賞(第60回)】自他共に認める日本ハードボイルド界の第一人者が、「ハードボイルド」の語源から、日本における意味の変遷、翻訳出版をめぐる人間模様にいたるまで、膨大な資料とユニークなエピソードを交えて語る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
小鷹 信光
- 略歴
- 〈小鷹信光〉1936年岐阜県生まれ。早稲田大学文学部英文学科卒業。日本推理作家協会、日本冒険作家クラブ、マルタの鷹協会会員。ハードボイルド小説の研究・翻訳、ミステリ評論、小説など幅広く活躍。
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紙の本
ハードボイルだって、意味は変わると思います。私にとっては文体でもなんでもなくて私立探偵が出てくればHB.でもルーツをたどれば・・・
2007/02/09 22:08
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
小鷹信光の名前を知ってから随分時間が経ちました。ミステリ・マガジンを立ち読みする若さがあった頃の話です。ともかくその名前の格好いいこと。小鷹、でしょ。それに信光ですよ。小山信夫じゃなくて小鷹信光、それだけで感心しちゃうわけです。そして、私が出会ったエッセイ集(評論、ていう感じじゃあなかった)が『パパイラスの舟 海外ミステリ随想』。
パパイラス、って何でしょう?実は今回の本を読んで初めて分ったんですね。パピルスなんですって。そうか、そういう歴史的に有名な材料で作った舟、っていうことか。沈むかもしれない素材でできた舟でミステリという大海に漕ぎ出す、不安とも意気込みとも取れるタイトル。こんな洒落た題をつけるなんて、凄いな、って今は意味も含めて納得しますが、当時はただただカッコイイ!
しかもですWEB検索して「東浩紀の妻であるほしおさなえは娘」なんて記事を読んじゃうと、おお、血よ、なんて思うんですね。ほしお、って『ヘビイチゴ・サナトリウム』『天の前庭』(二冊とも書評済み)『モドキ』を書いている、あのほしおさなえ、だとすれば、この世界って狭いなあ、なんて思ったりもして。
小洒落た、いかにもミステリ関係書ですよ、という装幀はハヤカワ・デザイン、それに寄与しているカバーイラスト、小扉カットは山崎多郎、本扉・見返し写真は岡倉禎志だそうです。それ以外に、著者の写真などが出てきますが、それは自身のスナップでしょうか。全体は八章構成ですが、巻末の研究篇、資料もボリュームがあります。
著者略歴を見ますと1936年生まれとあります。八章の扉の写真を見ながら納得はするんですが、私のイメージとは10歳違います。1945年生まれくらいのつもりでいたんですね。ペンネームも若々しいし。でも、生き方は一貫して変わっていません。ともかく、ハードボイルド小説の研究・翻訳一筋(ポルノもたまにありますけれど)。
で、えらいな、というのが英語です。ま、この本ではその実力は分りませんが、かなり早い時期にアメリカに行っていることを考えれば、ともかく、正規の英語かどうかはともかく、度胸と勘でやっているうちに板についたという実践英語ではないでしょうか。若いときから徹底的に読んでいます。
で、それをそのまま職業にしちゃった。だから、この人の場合、ミステリ評論、という感じではないです。目からウロコ、といった理論というよりは、随筆、エッセイです。自分とハードボイルドとの関係、その取材から何から記事にする。確かに、創作といったタイプではありません。はじめに、のなかに斎藤美奈子の「ハードボイルドとは男性用のハーレクイン・ロマンスなのだ」という言葉が紹介されていますが、小鷹にこういう切れのいい、人をはっとさせるような言葉を望むことは無理でしょう。
頭のいい人、というよりコツコツやる努力と信念の男。だから、文筆で稼げるお金が本業に追いついた時点で、さっさと独立をします。その割り切りが、凄いです。人に使われるサラリーマンではいられない。でも、自分のテリトリーを弁えて、せっせと書く。その結果、アメリカに不動産を所有して、そこを基地にしてさらに取材を続けます。結果として、海外にいた時間が通算すると五年近くになる。
驚いたのは映画評論家の双葉十三郎さんのこと。名前だけは知っていましたが、「ハードボイルド」にここまで深く係わっていたとは・・・。それにしても、小鷹は若いときからかなり自由にお金を使っている気配があります。父上が銀行員を30代で辞めて上京、仕事を始めたとありますが、実際、かなり商売は上手くいっていたんだろうなあ、なんて思います。
最後に一言、文中に「幸運に恵まれ」るというところがあります。単純に「幸運なことに」のほうがスッキリしたんじゃあないでしょうか。