紙の本
不満があるならはっきりいいましょう
2007/01/14 21:36
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
小惑星「イトカワ」にあなたの名前を届けよう。そんなキャンペーンにかつて応募した人間の一人としては、その配達者「はやぶさ」の活躍記録とあっては、読まないわけにはいきません。と思ったのですが、実際の内容は少し違うようです。
本書の前半は、日本ロケット開発史が描かれており、その中で糸川英雄という人物が、どれほどの功績を果たしたのかということが賛美されています。そして、宇宙研というものがどれほどすばらしい研究機関であったか、ということも。その過程で、官庁間の綱引き、政治闘争があったということも。
確かに、これはこれで面白い話ですし、読めて良かったとは思いますが、主題とは異なるのでは?とも思いました。研究機関同士の権力争いやら、研究の主導権争いの道具として、純粋に「はやぶさ」に興味を持った人を巻き込むような、こういうやり方はいかがなものかと思います。
投稿元:
レビューを見る
はやぶさプロジェクトの背景に迫っている本。糸川先生の話から始まって、日本の宇宙開発が辿ってきた道のりを解説している。特に、糸川先生や宇宙研が持ち続けてきた科学者としての「信念」がどういうものだったか、それによりどんな性格を持つようになったかという話が面白かった。お手本になる。
投稿元:
レビューを見る
ロケットの打ち上げや宇宙探査などの報道は失敗するとやたらと取り上げられる印象がある。
そう思ってる私にとってこういう本がでることはうれしい、もちろん読み物としても感動できる。
投稿元:
レビューを見る
(2010.06.25読了)(2008.10.12購入)
「オイラーの贈物」を書いた吉田さんの本というだけの理由で買っておいた本でした。それが、最近のニュースで、「はやぶさ」が帰ってくるということを知りました。
「はやぶさ」は、役割を終えて既に宇宙のかなたに消えたものと思っていました。
ところが、「小惑星イトカワ」に着陸し、イトカワの石を採取して地球に持ち帰るのが使命で、トラブルのために石の採取には失敗したけれど着陸の際に舞い上がったチリぐらいは持ち帰ったのではないかと期待されています。
「はやぶさ」が打ち上げられたのは、2003年5月9日、地球に帰って来たのは、2010年6月13日、何と7年がかりの仕事になりました。持ち帰った物の分析には、数カ月かかるそうです。(回収されたカプセルには、1ミリ以上大きなものは、入っていなかったそうです。)
この本は、2006年末に出版されたにもかかわらず、2010年6月のことが書いてあります。そこには「アフリカでは、サッカーW杯が開催されていた。「はやぶさ」の長く苦しい旅も、ついに終わりを迎え、最後の挑戦、「再突入カプセル」の切り離しを残すのみとなっていた。」(290頁)とあります。驚きです。
この本は盛りだくさんです。糸川英夫の伝記、日本のロケット開発の歴史、はやぶさの話が盛り込まれています。興味のないところは、適当に読み飛ばしながら読んだのですが、かなり面白く読めます。著者の前書きにも以下のようにあります。
「山あり谷あり、まさに波瀾万丈、息つく暇もなく、事件が次から次へと主人公に襲いかかる筋立ての映画を「ジェットコースター・ムービー」と呼ぶそうである。ならば「はやぶさ」の物語は間違いなく第一級のそれである。しかも、こちらはノン・フィクションである。如何な映画も及ばない、苦難と克服、歓喜と落胆の連続ドラマを、お楽しみいただきたい。」(7頁)
●科学と技術(91頁)
科学にとって最も大切なことは、人類の知見を広げたか否か、という点にある。技術にとって最も大切なことは、人類の福祉に貢献したか否か、という点にある。
●国会議員はもっと勉強を(118頁)
固体燃料ロケットは、ミサイルに道を通じている、という主張が熱心になされ、「両社は全く別物で、もし仮にロケットをミサイルに転用しようとしても、新たにミサイルを開発するのと同じだけの時間と労力が必要となるので、それは有り得ない」という高木らの懸命の説明も、一向に理解されなかった。
●失敗を記録し発表(124頁)
ロケット打ち上げに失敗し、燃料室後部が破裂、火のついた破片が飛び散り、ロケットは海中に没し、二段目が海中から飛び出し、実験班の方に向かって飛翔し頭上を飛び越し、防砂林に消えた。
糸川は、周辺を徹底的に調べ、記録することが事故原因の究明と今後の保安を考える上で重要と判断し指示した。
糸川はこの「失敗の記録」を国際会議で発表し、世界のロケット開発に役立てた。
●真善美(180頁)
理学は、真理の探究であり、工学は善の実現である。そして、藝術は美の表現である
(であることが望ましいのでしょうが、現代では、そうはなっていないのではないでしょ���か)
●二番ではいけないのか?(183頁)
科学の世界では一番だけが評価されるシビアな世界である。一番以外は、二番も百番も同じである。科学の世界に「銀メダル」は存在しない。
●「はやぶさ」(201頁)
・糸川英夫の作った一式戦闘機「隼」への敬意
・内之浦へ行くための寝台特急「はやぶさ」への郷愁
・瞬時に獲物に飛びかかり奪い去る俊敏な鳥「隼」のように小惑星イトカワの岩石サンプルを採集してくるという決意
故障が次々と起こることに関し、何という品質管理の悪さ、と言いたいところなのですが、5年から7年に渡って、稼働すると家庭内の家電製品でさえ、一番弱いところがやられてしまうことを考えると、過酷な宇宙空間でよく稼働しつづけたと評価してもいいのかもしれない。
(糸川さんの教えに従って、失敗から多くを学んでほしい)
☆吉田武の本(既読)
「オイラーの贈物」吉田武著、ちくま学芸文庫、2001.11.07
「はじめまして数学(1)」吉田武著、幻冬舎文庫、2006.12.10
「はじめまして数学(2)」吉田武著、幻冬舎文庫、2006.12.10
「はじめまして数学(3)」吉田武著、幻冬舎文庫、2006.12.10
(2010年6月29日・記)
投稿元:
レビューを見る
2006年に初版の新書。左開きという科学書の体裁で、はやぶさの計画から帰還までのミッション(予定含む)を書いてある。2刷は2010年6月。はやぶさ帰還にあわせて慌てて刷ったみたい。2010年6月の帰還予定のページ2枚は2006年の初版の時点では判らなかったのでは??慌てて2ページ分を付けたした感じ。
投稿元:
レビューを見る
『はやぶさ』に興味がなくても、読む価値はあると思う。失敗や過去…そこから何を得られるのかが大切。…なーんて、それらしいことを書いてみる。
投稿元:
レビューを見る
最初に注意しておくとこの本、第1版は2006年11月30日。
つまりイトカワ離脱→通信不能→通信回復ぐらいまでなので要注意
(確認せずに買ってしまいましたよ、ハイ)
それを差し引いても面白い内容でしたけどね
で、著者が述べたいのはやぶさというよりはペンシルロケットの糸川博士から脈々と受け継がれている「宇宙研」の精神
ちょっと持ち上げすぎ気味なところもあるんですが、確かに他国に比べれば低予算でここまでやってるのは凄い、もっと評価されるべきと思います
投稿元:
レビューを見る
最近はやぶさの期間でにわかに宇宙への興味が増えてきたが、日本においての宇宙技術の礎を築いた宇宙研の歴史とはやぶさの記録が書かれている。
2006年に出版なので、その後のアクロバティックな運用については書かれていないが、2010年のカプセル帰還がほど予想と同じ通りなったのには驚いた。
投稿元:
レビューを見る
ミッション終了後、雨後のタケノコのようにちまたに溢れた「はやぶさ」関連書籍とは一線を画す本書。なにしろ初版は2006年なのだから。
2006年といえば、「はやぶさ」プロジェクトが暗礁に乗り上げていたころだ。
05年に無事イトカワに到着後サンプル回収中のトラブルに見舞われ、そのあと年をまたいで46日間の消息不明ののち満身創痍の姿で見つかり、やっと地球に帰れると思ったら今度は四機あるイオンエンジンがすべて停止という最悪の状況に陥っていたのが06年だ。
当時、はやぶさを知るひとは「もうダメだろう。でもよくがんばったよ」という雰囲気だったろう。
本書はそのころに出版された。
「はやぶさ」にとって最悪の状況なうえ、世間では「はやぶさ」なんてまったく気にも留めていなかった。なのになぜ出版されたのか? それは「はやぶさを知ってほしい」の一念だったのかもしれない。
著者の思いは「はやぶさ」だけには留まらないようで、本書では「はやぶさ」の生みの親である宇宙科学研究所の数奇な運命や、「はやぶさ」が目指した小惑星「イトカワ」の名前の由来になった日本宇宙開発の祖、糸川英夫教授の苦心の研究にもかなりの紙面を割いているのだけれど、そのせいでタイトルの「はやぶさ」がかすんでしまっているのが惜しい。
本書を好意的に解釈すれば「はやぶさの背景も含めてよくわかる本」と言える。でもそれにしても背景が多すぎるのだ。これではほとんど糸川教授の一代記になってしまっている。タイトルが「糸川英夫」や「宇宙科学研究所の歴史」だったらタイトル通りだったろうに。
しかし。
本書が柳の下のドジョウを狙ってちまたに溢れる「はやぶさ」本とはまったく違う生い立ちなのは確かだ。
「宇宙科学研究所と糸川教授の研究、そしてはやぶさプロジェクトを知りたい」というのならオススメの本である。
投稿元:
レビューを見る
成功とは過去の栄光である。自分達の未来を、過去に託すことはできない。何が分かっていないか、を分かっているのがプロなのである。その為の知識である。このことを弁えない知識自慢は、素人の証明である。(69ページ)
前例とは、自身がそこに安住していない、ということの確認のためにこそ必要なのであって、そこに留まってることに安心し、心理的な保証を得る為にあるのではない。(144ページ)
日本人に独創性、創造性が無いなどというのは途方もない。誤解である。誤解の発端は、見事に発達した官僚機構に屈した故である。如何なる新規なアイディアも、「前例と書類」という鋳型に嵌めれば、その新鮮さを失ってしまう。それは全てが新しいのではない。「一歩」が違うだけなのだから。泉の如くアイディアが溢れ、それを実現させるに足る能力を持った人物は、今も何処かに、確実に居るのである。彼等に不足しているのは発想ではない。前例主義に屈しない交渉力と肝力である。(145ページ)
「物作り」は教育になるが、「金扱い」は教育にはならない。金の操縦法を幾ら学んだところで、実は金に操縦されているのである。(284ページ)
投稿元:
レビューを見る
「はやぶさ」本は沢山出ていますが本書は同じ学術系の著者が公開されているデータに解説を加えつつ宇宙研や糸川博士の歴史もおりまぜて客観的に書かれています。理工の協力による成果等の学術的に見方はある意味面白いですし公開データも分かりやすいです。ただカラーページも少なく地道に読む人向けかと。昨年ちょっと共著論文の査読も受けていた私には面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
「はやぶさ」は成功したから注目を集めたが、宇宙研の真骨頂は「失敗してもめげずにしぶとい」点にありそうだ。宇宙研が世界に誇るべきなのは、はやぶさの成功そのものより、少ない人数と最小限の予算で試行錯誤を繰り返し、天才に頼ることなく泥臭い汗と工夫を積み重ね、何より失敗を糧として少しずつでも前進してきた歴史なんじゃないだろうか。世界を驚かせた頃の日本は全体がそうだったんじゃないかという気がする。失敗を責め立て、恐れ、汗をかくのをいやがる組織や国は没落する。
本としては話があっちこっちに飛んだり、妙に前のめりで大仰な書き口のわりには人の姿が(糸川英夫以外)は見えてこなかったりしていまいち。むしろ淡々と読みたかった話。
投稿元:
レビューを見る
はやぶさ帰還前の本なのではやぶさの成果等には触れられていない。
完全版としてはやぶさの成果までまとめた本を出して欲しい…はやぶさ関連書籍ラッシュの頃にも出なかったし2019年になっても出てないからさすがにもう無理か。
投稿元:
レビューを見る
かっこよすぎる。あまりにもかっこよすぎる。はやぶさが帰還する前に書かれた本ですが、はやぶさの物語を満喫するにはおそらく最高の一冊。そのままプロジェクトXの台本になりそうな熱い語り口、一読の価値ありです。
投稿元:
レビューを見る
世にあまた出ている小惑星探査機はやぶさの成功物語の一つかなと思って読み始めたが、本書はちょっと趣が異なっていた。最終的には「はやぶさ」の物語に行き着くのだが、サブタイトルの「宇宙研の物語」に方に重きを置いている印象を受けた。はやぶさの目指した小惑星の名前にもなっている故糸川英夫教授によるペンシルロケットの開発から始まった日本の宇宙開発(宇宙探査)は、宇宙研という組織の下で、独特の発達を遂げてきたのだということがよく分かった。いつもはその結果でしか評価されない組織の内部事情が垣間見えて、とても興味深かった。科学を探究する者に必要な素質とは、一度や二度の失敗にもめげない胆力のようなので、私には無理だろうと思える。