紙の本
60年代の空気が
2021/01/11 17:37
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
ものすごくリアリティあっておもしろいです。知人が山崎豊子の最高傑作というのもわかります。ものすごくおもしろかった。
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
山崎豊子の長編作品を彷彿させるような大阪を舞台にした社会派小説。組織の闇に迫る姿はすさまじさも感じる。
紙の本
翻弄する山崎豊子の挑戦
2004/12/21 04:55
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投稿者:RinMusic - この投稿者のレビュー一覧を見る
<それは勤音へ行く会員か、音連へ行く会員か解らなかったが、一本の太いベルトのような列になって繋がっている。この若い群衆を組織し、政治的に利用しようとする集団が、現代の仮装集団であるのだ—。流郷は、舗道の上に洪水のようにさらに広がり、列なって行く群集の若い巨大なエネルギーにぶつかり、圧倒されながら、その群集の中を突きぬけて行った>—音楽という場に政治と思想を持ち込んだ集団に、流郷正之という音楽好きな一人の野心家の姿を描いた、山崎豊子らしい長編である。しかしどうだろう? <書きにくい小説だった>という著者の告白にもあるが、音楽業界の持つ音楽以外の目的とイデオロギーを小説化したかった意図は多分に感じられるものの、『白い巨塔』で見せた社会小説としての鋭い追及は見られない。音楽業界が人間の生命に携わる医療現場とまったく異質の舞台であることも一因であろう。つまり、「感動する体験」を商品にしている音楽業界の、実態のないいかがわしさ故に、筆者もリアリティある深遠にたどり着くことができなかったのかもしれない。社会小説家としての山崎豊子の正義感が空しくも、健闘の様が垣間見える一冊である。
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山崎豊子中期の作品。
山崎作品にしては短いし、その緻密な取材もモチーフを得た団体からの取材拒否によって阻まれるなどしたため片手落ちな感じ。
ただその文体は素晴らしい。
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労働組合系のクラッシック集団内の闘い。
かつて真剣に組合運動をしていた時代に受け入れられたと思う。
今となってはリアル感が薄い。
でも、人間関係の複雑さ時代背景の描写力。どちらも流石に上手い。
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音楽が政党や経営者に利用され、大衆は翻弄される。作者の真骨頂は文章力に加え取材力だが、本著でも充分にうかがえる。著者の作品で一貫しているテーマは「正義」といってもよいだろうか。10.10.2
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組織がイデオロギーに動かされて次第に冷静さを失っていく姿がフィクションとは思えないくらいの現実感をもって描かれている。こんなことって、身近な組織でも容易に起こりうるのではないのだろうか(例えば目先の収益見込みをコスト度外視で追う、など)。いつもながらに主人公はcool(この表現まさにぴったりだと思う)。
筆者のあとがきも秀逸。「純粋に音楽を鑑賞する団体に、音楽以外の目的とイデオロギーが持ち込まれた場合、どのような複雑怪奇な問題が起こり、それが集団の中の人間関係とどう結びつくかを描きたかった」(あとがき)
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「労働者の音楽鑑賞団体」の内実は、左思想政党の支持者獲得装置。リアリティがすごくて、身近にこんな組織がごろごろしてそうでこわい。
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働く人のために安くいい音楽を聴ける勤音という文化団体が次第に人民党に浸食されていく様子と、それに翻弄されるノンポリの敏腕プランナーの姿を描いている小説。
私自身もかつて人民党のモデルになった政党が絡んでいる病院で働いていたことがあるので、この小説に漂う微妙な空気感さえもリアルすぎておもしろく読めました。
読んでいて思い出しましたが、かなり昔に読んだ小林よしのりの「脱正義論」でも同様の様子が描かれています。
人民党とその関連の思想団体がいわゆる「乗っ取り」を」する時の手口がこの2冊でよくわかります。
印象に残った言葉
「大衆を馬鹿にする者は、何時かは大衆に葬り去られる」
思い出したけど、この手の団体の人たちってなぜか物言いがエラそうなんですよね。
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著者の作品の中で唯一映像化されていないもの。
追悼フェアで買って読んでみた。
山崎豊子作品は大著が多く、敬遠されがちだが、割とスラスラ読めるものも多い。本作もご多聞に洩れず。
読み応えはある作品だが、本作が今後映像化される可能性は低いだろう。∵扱った題材が共産主義思想の浸透・普及という、過去の産物であるため。共産主義とは何だったのかを振り返るのであれば、それなりに意味はあるが…。
また、結末も物語のプロットが拡散したままで終わっている。これも執筆当時の情勢からすると限界だったのか。
他の作品群に比べるとインパクトは今ひとつだが、読了はできると思う。
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生真面目は洗脳されやすい。洗脳された手段はもっと怖い。共産主義の巻き込み方はは人間をよく研究したやり方。心理学のの大家やなぁ。
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組織の大きな力に翻弄される主人公、やはり勧善懲悪の感は強いが、社会派の巨編まではいかず、中途半端な立ち位置かもしれない。
本人も書きにくかったらしい。
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昭和42年に発表された山崎豊子作品。安保闘争のはざまの時期、そして、いまだ労働組合の組織率が高く、労組運動も顕在化していたという時代背景もあっての作品。党や労組が、他の団体・集団にいかに入り込んでいくか、といった組織の怖さが描かれている。「オルグ」「フラクション活動」など、いまや死後と化している用語もいたるところで出てくるのも、時代の趨勢ということか?
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流郷の書斎とロシアのバイオリニスト招致の仕事ぶり、あとがきが印象に残った。音楽に情熱を傾けて、組織力を存分に活かす努力で仕事を成功させる。菊村姉弟が静かに流郷や斉子を尊敬してる思いが美しい。流郷が斉子と菊村姉のふたりを可哀想に思う気持ちがリアル。カップルができるわけでもなく誰の仕事もハッピーエンドでない不思議な物語。比較的リベラルと思った作者が労音や共産党、赤旗にこんな違和感を持っていた。党員たちのアジりっぷりが、短絡思考が、適切に描写されていると思う。自分で一生懸命党の意向を解釈しようとして党に従う愚かしさ。もう一人くらい政党色に辟易するごく普通の職員もしくは会員がいたらさらに感情移入出来たと思う。相変わらず女性は色モノだが、流郷に
全く溺れない斉子が際立っている。
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勤労者音楽同盟という名称からして左翼がかっている。このグループが急速に組織拡大していく中、不明瞭な運営資金の流や、特定の政治団体と蜜月になるなど不穏な行動が目立ちはじめる。純粋な音楽普及活動に尽力する職員がいる一方で組織運営内で微妙な齟齬が生じはじめた。
またこのグループに対抗すべく、政治的な動きを機敏に察した資本家が企業主導の音団設立に動き出し・・・さてお話しの結末はいかに、内容に興味をもてず、ストーリーにしてもいまいち。