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商品説明
蘭の花を真似るカマキリ、腐肉の匂いを漂わせるラフレシア、分子をいつも変えるマラリア、異性を妄信させる結婚詐欺など、さまざまな「似せてだます」戦略。その現象に迫り、擬態のしくみ解明に最先端の科学で挑戦する一冊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
藤原 晴彦
- 略歴
- 〈藤原晴彦〉1957年兵庫県生まれ。東京大学大学院理学系研究科生物化学課程修了。理学博士。同大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻教授。著書に「よくわかる生化学」がある。
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紙の本
自然界にある騙しのテクニックを図版と共に楽しめる一冊
2007/04/28 01:55
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
圧倒的多数の生物にとっては油断が捕食に直結する。特に体が小さく、力の少ない個体ほど犠牲になっていく。対抗策として多くの生物がR型の進化戦略、すなわち多数の子孫を生み出して、捕食され尽くされないようにする戦略を採る。
しかし、それだけではまだ弱い。生物個体が生き残るための努力が払われている。まさに命がけで。その手段として有効なのが擬態である。
たとえばナナフシ。植物の繊維にしか見えない外見を活かし、周囲に溶け込んで捕食者の目から逃れるのが戦略。シャクトリムシやミノムシ、カメレオンにカエルも同じように周囲の景色と区別がつけづらいようにしている。
一方で、周囲に溶け込まなくても良い擬態もある。アゲハチョウの幼虫は4齢幼虫(脱皮の回数が3回まで)は鳥の糞にそっくりの外見をしている。これが5齢幼虫になると、幼虫が餌とする柑橘系植物の葉に近くなるから不思議だ。私の実家にはミカンの木があり、子供の頃はよくそこに居候を決め込んでいたアゲハの幼虫をつついてはあの臭いにやられたいたものだ。
別のパターンの擬態もある。毒虫にそっくりの外見をすることで、自分は不味いぞとアピールするものだ。
それどころか、捕食者の側が擬態を遂げることもある。ハナカマキリは見事なまでに花と同じ形状をしていて、騙されてやってくる被食者をじっと待つ。他には、他のメスそっくりの形をしたりフェロモンを出したりしておびき出されたオスを食べてしまうというものもある。
一言で擬態と言っても実に多様であることが分かると思う。本書は奥の深い擬態の世界をやさしく教えてくれている。虫が苦手な人には逆効果かもしれないが、多くの図版があることでその擬態の見事さに感嘆させられる。ここまでで挙げてきた擬態には違った名前が与えられていて、それぞれに興味深い例がいろいろあることには生物界の進化の妙を思い知らされる。
視覚だけではなく、あらゆる情報を使って生き残りを図る生物の努力には生物の奥深さが見えて面白い。熾烈な競争の結果が、事実は小説よりも奇なり、というほどの複雑さを生み出しているのだろう。昆虫は苦手だとか気持ち悪いなどと一刀両断せずに、複雑な世界を覗き込んでみたらきっと新たな知識を得る喜びに巡り会えるだろう。
紙の本
擬態という現象への分子生物学的,生物社会学的考察が実に刺激的!
2009/03/04 09:21
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
動物(主に昆虫だが)の擬態……つまり捕食者から逃れたり逆に獲物に気づかれずに近づいたり,あるいは獲物をおびき寄せたりするために「自分でないなにか別のもののふりをする」ことだが,について紹介した本,進化論的な説明を試みた本はたくさんあるが,これは以下の二点において異色なものである。
まず第一に著者の藤原先生は分子生物学者であり,いままでたとえば「アゲハの幼虫であるイモムシにはヘビの目玉のように見える模様があります。捕食者はこれを見て危険を感じ手を出さないんですねぇ」てな記述をされていただけだったその目玉模様について,それが幼虫の体内のどんな分子がどんな条件下で働いて発現するものであるかと明らかにしようとしている(研究途上なので「すべて明らかにしている」ではないんだけど)。目玉模様の黒い輪郭を描くのにドーパミン(ニンゲンにこれが不足するとパーキンソン病になる)が作用しているとか……。この部分はあなた,とっても読みごたえありまっせ。
第二に擬態という現象が効果を発揮する,生物間の相互関係について考察している。たとえばドクチョウ科の蝶はその名の通り毒を持ち,またそのことを喧伝するかのように翅にも黒地に赤,黄色といった目立つ模様を持っている。自分は毒を持たないくせにこの模様を擬態するシロチョウ科の蝶がいて,こういうのをベイツ型擬態というのだが,この擬態は捕食者である鳥が「あの模様を持った蝶はマズイ」という認識を持っていないことには有効に作用しない。
シロチョウはドクチョウを擬態することで捕食から逃れ生存の機会を増すわけだが,擬態している個体があまり増え過ぎると鳥の側の認識が揺らぎだす(つまり「あの模様の蝶を食ったが旨かった」という経験を持つ鳥が増えてしまう)。こういう相互依存関係から敷延して,ニンゲンの行ういくつかの行為,例えば犯罪なども「広義の擬態」の範疇に入れて考察することが可能ぢゃないか,と論じてるわけ。上の分子生物学部分にはジンマシンが出ちゃうヒトもこっちは面白く読めると思う。