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「魚類の中でもっとも麺類といえる魚、それはドジョウ」 この意味不明な一言を待っていた!吉田戦車の電車エッセイ。
2012/04/18 18:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
「伝染るんです。」の作者・吉田戦車のイラストエッセイ。
イラストエッセイ第一弾『吉田自転車』の続編だ。
このエッセイのために、著者は用事を作って電車に乗り、ネタを探しつつ、“顔出し”から顔を出し、麺類をすすることも忘れない。
顔出しと麺類は、『吉田自転車』からの掟なのだ。
ところが著者は、ドジョウ鍋の店に向かった。
掟を破るつもりなのか。
「麺類じゃないじゃないですか」
と担当編集者。
すると著者は、
「穀物の栄養も炭水化物だけなわけじゃない。たんぱく質やカルシウムも含まれているんだ。たんぱく質やカルシウムといえば魚。魚類の中でもっとも麺類といえる魚……それはドジョウだッッ!」
(【第16回 弁当半額! 大人のホビーと江戸の実力】より)
と担当編集者を折伏。
「いい麺類だったな」
とは、ドジョウ鍋を食べ終わった著者と担当編集者の弁である。
ところで、乗り物よりも用事の方に内容が割かれがちな、このシリーズ。
しかし今回は、電車を堪能したものもいくつか。
【第9回 レール! 歳三うどんはミルク入り】
高所恐怖症の気がある著者が、モノレールの脱線「かりっ」に怯え、モノレールの中にいて自分がどうであるか、あらためて感じてみたいエッセイ。
高幡不動で、乾麺『新撰組 土方歳三饂飩』を購入した著者は、友人とともにモノレールに乗り込み、車体が傾き「かりっ」が起こるかもしれないカーブを体験する。
【第10回 戦車誕生 よみがえれスマートな俺よ!】
「腹もやばいが、ほっぺや顎もやばい」著者が、スマートな俺を目指し、下高井戸―三軒茶屋間を走る東急世田谷線沿いを、端から端まで歩くエッセイ。
線路の中に『推全』なるプレートを発見して、『推理全力』か『推薦全然』かなどと悩みつつ、線路沿いの花壇に「花壇の花は盗まないこと」というプレートを発見し、『花泥棒』という言葉におフランスな、しゃれたイメージを浮かべながら、著者は線路沿いを歩き続ける。
【第19回 スズメ捕獲! 千葉県“いすみ鉄道”前編】
【第20回 竹の子過剰! 千葉県“いすみ鉄道”後編】
千葉の上総中野―大原間を走る、なんかいい感じのローカル線『いすみ鉄道』の旅。
いすみ鉄道に乗り込んだ著者と担当編集者は、本多忠勝の居城だった大多喜城にある忠勝の“顔出し”から顔を出し、『家来』という居酒屋の店名に、殿様と家来の子孫の攻防を夢想し、スズメと竹の子に遭遇する。
相変わらず、妙なものに目を惹かれ、妙なことを考え、妙なタイトルをつける著者は、最後にこう締めくくる。
「『吉田電車』は今回で終わりです。これでまた自転車に乗れるぞ、とホッとしてます。電車にもいいところもいっぱいありますが、唯一不満なのは、自分で運転が出来ないところだ」
ですます調から一転、だである調に。
あらたまった挨拶が苦手な、恥ずかしがり屋さんの著者であった。
* * *
「どんなに電化されていようと、長距離を行く列車は電車ではない。厳密に言えば山手線や西武線なんかも、俺の中では電車ではない。電車とは、路面電車だけが名乗れる称号なのだ」
(【第14回 トンガリ川! 函館市電に高鳴る鼓動】より)
これは函館出身の、著者の友人が言った言葉だ。
分かるような分からないような、とにかく強いこだわりが伝わってくる。
これを読んだとき、内田百けんの電車エッセイ『第一阿房列車』での言葉を思い出した。
「長距離阿房列車でなく、区間阿房列車にすると考えたら、もっと手近な所で、阿房電車も運転することが出来ると思いついた。電車と云うのは浅川へ行ったり沼津まで走ったりするあの電車ではない。チンチンゴウゴウと走るチンチン電車の事である」
言いたいことは別のようだが、なんとなく似たような区別をしている点が面白い。
路面電車が身近だった人にとっては、こういう感覚なのだろうかと、百鬼園先生が例の仏頂面でチンチンゴウゴウと遠ざかっていく姿が頭に浮かびつつ、ノスタルジックな気持ちになった。
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伝染るんです。はわたしの笑いの判断基準になっていて、伝染るんですが嫌いな人とは友達にはなれないな、と思うくらい吉田戦車の漫画に深い思い入れがあるんですが、エッセイはいまいちでした。忍び錠とか、お茶ノ水勝蔵とか、匂いは感じるのだけど。
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吹き出すことにできる限りの抵抗はしたんだけれども、戦車VS小学生のシーンになると、どうしても負けてしまい・・・
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レビューはブログにて。
http://tempo.seesaa.net/article/35526946.html
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この人の漫画も好きだった。でも、本人も好きかもしれない。脱力感がたまらないです。一緒に旅したい人です。そして、とてもいいパパだ。
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自転車に続いて電車です。最近ちょっとした鉄道ブームらしいですが、これぐらいの好き具合がゆるくて良いんじゃないでしょうか。相変わらず麺を食べ、怪しい視線で街を観察。駅のある街の風景が戦車目線で楽しめます。
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笑いどころで、ふふと笑い、どうでもいいところで大爆笑したい欲求を存分に満たしてくれる…好きだなあ、この人。出てくる場所が馴染み深いところばっかりなのもまた良い。それにしても、あの著者紹介は誰が考えてんの、すっごい笑える。
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10月13日読了。吉田戦車による企画エッセイで、気になる電車に乗って着いた先で「麺類」を食べる、というもの。これに先立ち「吉田自転車」というエッセイ集もあったらしい。熱心な「鉄ちゃん」でもなく、古いものについ惹かれる自分の感覚を「じじむさい」と分かってもおり、行く先々で見つける「へんなもの」は実際はたいしたことはないものに決まっているのだけれど、それでもささやかな妄想にふける楽しみがやめられずにいる・・・など、この人の漫画も好きだが文章も私の感覚に合うようで、とても面白い。肩の力が抜ける。ババーンと「これが、俺の趣味だぜ!!」と大アピールするのではなく、人に迷惑をかけないように、隙間の楽しみ方をする。こんな大人になってもいいではないか。
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『吉田自転車』に引き続き、エッセイ続編。今度は自転車ではなく電車に乗ってネタ探し。相も変わらない表紙絵のしいたけが素敵だ。やっぱり赤いマフラー…。
電車に関する薀蓄なんか出てこない。出てくるのは観光地の顔出し看板に対する情熱や、おいしい麺類へのあくなき追求の姿勢だったり、お茶の水博士の下の名前を考えたりする妄想だったりする。
この軽い感じのエッセイは何度読んでもいい。
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『吉田自転車』に続くエッセイ。
電車やら鉄道やらには詳しくないが、詳しくなくても楽しめる。
読んだからといって電車に詳しくなるはずもなく、ただただ妄想力がつく。
イラストがかなり素敵。
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立ち読みしながらおもしろすぎて吹き出しました
続けて読んでいられなくなったので購入
庶民的な感覚と、ちょいちょいにじみ出てる卑屈さがスキ。
モノレールの「カリッ」と、西武多摩川線の話がお気に入りです。
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面白いんだけど…若干あれ?何か違うと思っていたら、『吉田自転車』と違って太字の部分がなかったのです。残念…。
それでも爆笑してしまうのだけれどね。
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吉田戦車が語る電車など
我が心の師匠、吉田戦車によるエッセイ。
・飛田給駅に向かう京王線某駅ホームで「通信」と書いてある用途不明の箱をほれぼれとながめる。
・世田谷線を下高井戸から三軒茶屋まで散歩で謎の文字「ぬ」や「推全」のプレートに注目する。
・白馬にむかう大糸線の運転席の近くで「手歯止よいか?」のプレートを見つけ、よいかと問われ、ど…どうなんだろうと迷う。
自分の中に吉田戦車成分が入っていることを再認識できる一冊。伝染るんです世代の方はぜひご一読を。
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【本の内容】
戦車イン電車!
激走!
鉄道の旅エッセイ。
人気漫画家が鉄道の気配と麺を求めて全国を巡る「電車の旅」エッセイ。
懐かしいセンスあふれる近鉄特急で「いつもと違う感」を満喫。
伊勢うどんをすすれ!大江戸線では異様な駅名「面き番」に困惑し、西武多摩川線で八王子系ラーメンに邂逅。
健康的イラスト&写真満載の○(マル)車シリーズ第2弾。
[ 目次 ]
ああ近鉄!―伊勢湾にひびく巨獣の咆哮
魚罵倒!―ゴッドパワーを信じて
Vゴール!―魂の兄弟たちとの出会い
生玉ネギ!―ナイスバイク号はおかんむり
六本木!―ああミニスカポリスの脚
サンドイッチ!―胆沢平野に白鳥は舞う
ザネリ!―賢治ゆかりのつるつるしたもの
ジェームス!―八方尾根にコンタクトは光った
レール!―歳三うどんはミルク入り
戦車誕生―よみがえれスマートな俺よ!〔ほか〕
[ POP ]
吉田戦車が電車に乗って旅に出る。
そこで見たもの、聞いたもの、食べたもの、思ったこと、考えたことを自由気ままに綴った紀行文。
「吉田戦車というと、えーっと、かわうそ君、だよね……?」くらいの知識しかなくても、存分に楽しめる。
過激で豪快で破天荒な雰囲気を勝手に想像しつつページを開いたが、まったく違う。
実につつましやかで、ほほえましくて、こんな言われ方は心外だとは思うが、なんだかかわいらしい。
行く先々で必ず面白いことに出会う、あるいは面白いことを見つけてしまう、思いついてしまう著者のアンテナの冴えっぷりが素敵。
何かしてやろうという意気込みはまったくないのに、それどころか、かなり気の抜けた旅路なのに、あんなことが起きたりこんなことに遭遇したり。
ところどころに添えられたイラストも、なんとも楽しい。
本書の前後に出された「吉田自転車」、「吉田観覧車」も読まずにはいられなくなること請け合い。
そこかしこで顔がにやけたり吹き出しそうになったりしてしまうので、電車のなかなど人目のあるところで読むのは避けるべし。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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正直漫画は「写るんです」くらいしか読んだことないんだけど、
この人の日常生活を捉えるフィルターってすごいな、って思う。
何度読み返しても、
クスクス笑ってしまう。そんな一冊!