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商品説明
進化の歴史をどこまで遡れば、ヒトという定義を当てはめることができるのか。ヒトに特有の特徴とは何か。ダーウィン進化論以後の現代的な課題に答える。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
原初的人間とは何か | 山極寿一 著 | 1-32 |
---|---|---|
食から見たサルと類人猿の進化 | 山極寿一 著 | 33-52 |
類人猿との分岐点 | 中務真人 著 | 53-79 |
著者紹介
山極 寿一
- 略歴
- 〈山極寿一〉1952年生まれ。京都大学大学院理学研究科教授。日本霊長類学会会長。専門は人類進化論。ゴリラやチンパンジーの野外研究に従事し、初期人類の生活様式や社会性の解明を目指す。
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紙の本
人間はいつ人間になったのだろう
2007/05/23 20:11
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人類の誕生に関する本は数多く出版されている。最近の特徴は専門分野だけからの分析では人間の誕生を語れなくなったことだろう。古生物学を中心に語られた人類誕生の謎が、DNA分析の発展により、多方面の研究成果を取り入れながら全体像を描くようになり、これでこそ真実に接近できると期待している。
本書もそんな多方面の研究からヒト誕生の真実に接近しようとしているが、最大の特徴は社会の形成をも考えながら論じていることだろう。そして、思い込みや定説といわれるものにとらわれることなく、いろいろな説を検討している。これはとても大事なことだと思う。自分が発見したものを、これこそ真実だ、と発表し裏付けたい気持ちはわからないではないが、まだまだ未解明なことの多いこの分野でそれをさせると読者はかえって困るだろう。
さて、類人猿との分岐点、これはいまだにはっきりしていないのだが、道具や文化、他者の心情、性の進化、社会性などから分析した内容はなかなか興味深い。これからもヒトの誕生についての研究は進むだろうが、きっと他分野における地道な研究が必要だろう。
ところで、約5万年間(これは推定なので注意)、ホモ・サピエンスと共存していたとされるネアンデルタール人。このことに以前から関心を深めているのだが、本書を読んでますます興味を高めた。
ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が争った形跡はなかったとされている。平和共存していたとしか考えられない。ところが、文化の内容に大きな違いがあるし、ネアンデルタール人の生活圏は徐々に辺境の地に狭められ、ついに絶滅した。
ネアンデルタール人には、障害をもつ者をいたわった形跡や死者を埋葬した形跡がある。すでにそうした心をもっていたにも関わらず、私たちの祖先と文化が大きく違っていた。
同じ場所で共存していた可能性が高いにも関わらず、文化の共有がなかったというのは謎である。ネアンデルタール人は言語を持たなかったと推測する説もあるが、構造的には言語を話せる構造だったという。
でも、言語によるコミュニケーションがはかれ、共存していたのなら、文化は接近していくように私たちの現在の感覚では思われる。この謎は何を意味するのか。今後の研究に期待したい。ここにホモ・サピエンスとの本当の分岐点があるのかもしれない。