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商品説明
今も胸に残る、強い想い。心の底に潜む、深い闇。そして待ち受ける、驚愕のどんでん返し。世界を舞台に描く、最新作品集。【「BOOK」データベースの商品解説】
一面識もない財界実力者からの呼び出しは、30年の時を超え、信じ難い密室殺人の真相を浮かび上がらせた…。表題作他、「ストックホルムの埋み火」「サンフランシスコの深い闇」など、世界を舞台に描いた全5編を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
ミハスの落日 | 5-51 | |
---|---|---|
ストックホルムの埋み火 | 53-115 | |
サンフランシスコの深い闇 | 117-169 |
著者紹介
貫井 徳郎
- 略歴
- 〈貫井徳郎〉1968年東京生まれ。早稲田大学卒業。93年鮎川哲也賞最終候補作となった「慟哭」でデビュー。ほかの著書に「悪党たちは千里を走る」「愚行録」など。
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紙の本
本格ミステリーとは呼べないが、主人公たちの人生の苦さはある程度心に響いた
2007/04/07 20:35
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
5つの異国を舞台にしたクライム短編小説集。
「ミハスの落日」。アンダルシアのある大富豪に招かれた男。他界した母とこの老人の過去には未解決の殺人事件が絡んでいた…。
密室犯罪と呼ぶには真相が少々強引で、作者自身も「あとがき」で、「まともに書いていたら噴飯もの」と謙虚に認めています。そのために「背景を作り込む必要が」あったといいますが、私はあまり心引かれるところがありませんでした。
「ストックホルムの埋み火」。岡惚れした女性客につきまとうビデオショップの店員。ある日彼女が他殺体で見つかる…。
読者を惑乱させる騙し絵のような展開は悪くないと思いました。その仕掛けに私は途中で気づきましたが。
事件そのものよりもむしろ、最後の1行にニヤリとさせられたというのが正直なところです。こういうのが好きな読者は結構いるのではないでしょうか。
「サンフランシスコの深い闇」。過去三度の結婚相手が次々と事故死して多額の保険金を受け取った女性。彼女は果たして連続殺人犯なのか…。
「あとがき」によれば別作品の姉妹編にあたるものだとか。そしてまたこの物語の後にも続きがありそうなエンディングが気になります。
「ジャカルタの黎明」。娼婦連続殺人犯は一体誰なのか…。
筋書きよりも次の言葉がずっと心に残りました。
「選ぶのは勇気がいるよな。じゃぁ勇気を出す秘訣を教えてやろう。選ぶ前にひとつだけ、決めておくんだ。絶対に後悔はしないってな。どんな結果になっても、意地でも後悔はしない。後悔さえしなければ、選ぶのはもう怖くないぜ。」
「カイロの残照」。アメリカ人女性旅行客のガイドとして雇われた男が辿る末路は…。
事件の真相こそさほど驚きを与えるものではありませんでしたが、この事件を生んだ過去と、事件によって生まれた未来の苦さは私の口の中に残りました。本書収録作品の中ではこれが最も印象深いものでした。
紙の本
いくつか納得できないところがあります。そのせいで最近の貫井作品ほどのレベルにはない気がします。かなりいいところまで行っているのですが。無論、出来不出来があるのが自然ではあるんですけど・・・
2010/10/15 22:32
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の中で貫井徳郎の評価がジワジワあがっています。何も、貫井作品が直木賞候補になったとか、『慟哭』が鮎川哲也賞最終候補となったから、ということではありません。何といっても、私は貫井の本を数えるほどしか読んでいないのです。『ミハスの落日』を入れて『悪党たちは千里を走る』(光文社2005)『追憶のかけら』(実業之日本社2006)『空白の叫び 上下』(小学館2006)『夜想』(文藝春秋2007)『後悔と真実の色』(幻冬舎2009)『明日の空』(集英社2010)七作品だけ。
でも、です。読むたびに、面白いと思います。驚き、とは違いますが、感心します。ですから、この『ミハス』も、そんなに面白いのだから、旧作だっていいに違いない、そういう思いで読むことにしました。文庫が出たばかりですが、私が読んだのは単行本の方。タイトル文字が凝っているほうです。ただし、カバーだけみると文庫のほうがすっきりして美しいと思います。やはり、写真を横使いするのは無理があるな、とも思います。単行本には
カバー写真 JTBフォト
章扉写真 貫井徳郎
装幀 新潮社装幀室
とあって、章の扉に使われている写真は著者自撮です。椎名誠のような本格的なものではありません、むしろ素人っぽいといってもいいのですが、それなりに味があります。私としては、ちょっとボケ気味の表題作の写真、これがベストかなと思いますが皆さんはいかがでしょう。しかし、こうやってみると沢木耕太郎や椎名誠の写真というのは立派だなあ、と思います。
いずれも海外を舞台にしたミステリで、各話について著者自ら「あとがき」で詳しく経緯を説明しています。といっても、ネタばれには全くならないので興味のある方が最初に読んでも全く問題ないものです。むしろ、最初に「あとがき」を読んでから、挑むつもりで取りかかったほうが面白い、という鬼のような方にはそちらを勧めたいくらいのものです。
目次に従って各話の初出、簡単な内容を井かに紹介します。
・ミハスの落日(「アレナル通り殺人事件」改題。「小説新潮」1998年10月号):ジュアンのもとにオルガス&ペレス製薬会長のビセンテ・オルガスから、ミハスまで足を運んでほしいと告げられたのが二週間前。見ず知らずの創業者は、なぜ会いたいのか理由を明かそうとはしない。ミハスに出かけたジュリアンはオルガスから「君の母と知り合いだった」と告げられるが・・・
・ストックホルムの埋み火(小説新潮臨時増刊「警察小説大全集」2004年3月号):最近、ビデオショップに来なくなってしまった美人の客クリスのことが気になるブラクセンは、調べておいた相手の部屋に忍び込むが、そこで見つけたのは・・・。偉大な父親の名前を常に意識しながら捜査に当たるスウェーデン国家警察警視庁メルスタ署殺人課所属の34歳のロルフ警部補は、別れた妻モニータのことが忘れられない・・・
・サンフランシスコの深い闇(「小説新潮」2004年10月号):保険会社に勤務する俺が嫌いなのは、上司である課長マルガリータのいう「女の勘」、そしてイケメン刑事で親友のロナルドから夕食や酒をたかられること、最後がサンフランシスコ警察の極悪コンビヘンドリック・キングとスティーヴィー・スミスの二人と顔を合わせること。そのスミスが突然事務所にやってきて、知り合いの女性の夫の保険金をおろせという・・・
・ジャカルタの黎明(「小説新潮」2006年4月号):ジャカルタの店でそこそこ売れている21歳の私ディタのもっぱらのお相手は東洋人、それも韓国人か中国人、日本人といったところ。そんな私のところにフロアばあさんが声をかけてきた。相手は流暢にインドネシア語を使う日本人。私は初めての相手に、自分がこんな商売を始めた理由、子どもまで作っておきながら女と浮気し、借金を遺して逃げた夫アグンのことを話し・・・
・カイロの残照(「小説新潮」2006年10月号):誰もが認める美人の妻ガミーラと結婚し、自宅も構えたガイドのマフムードの今回の仕事の相手はアメリカ人の美女、ナンシー・コードウェル24歳。モデルといってもおかしくないスタイルと美貌の持ち主は、失踪した夫を探してカイロにやってきたという。彼女は、捜索に協力してくれたら、別に料金を支払うといい、カイロの危険な地域に足を向け、仕事は長引くが、相手が美人なこともあって妻には理由を言いかねる・・・
あとがき
表題作で腑に落ちないところがあります。ジュアンはオルガスのことを全く知らないはずなのに、最初にオルガスに会ったとき、母親と知り合いだったと聞かされて「知っていました」と答える、そこがどうもスッキリしません。最初に読んで??? と思い、今回、評にしようと読み直しましたが、やはりスンナリ理解できません。
有名な会社なので、創業者の名前は知らないけれど、オルガスの名前は知っていた、というのがどうも不自然です。大会社の創業者の名前はよくマスコミに出ますし、それが知人と同名同姓であれば、もしかして、と思うのが普通です。無論、多分違うだろうけど、と思うのも自然だとは思います。その相手から接触があれば、「やっときたか」と思う方が自然ではないでしょうか。
それと最後の「カイロの残照」です。愛する妻に理由を説明せず、むしろ隠すかのように仕事をする、それが不自然です。毎日、夫が夜遅く帰ってくる、家をあける、その理由を説明しないとなったら、私はそれだけで不機嫌になり、問いただすはずです。ま、こうしないと話が成り立たないのは分かるのですが、あまりに不自然ではないでしょうか。評価を上げている貫井ですが、『ミハス』については、もう一つ、といいたいところです。