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紙の本
楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史 (ハヤカワ文庫 JA)
著者 牧野 修 (著)
夢を見ない理由、死体に似た街、腐敗してゆく自分、地下室で蠢く父、時の王国におわす神、娼婦工場の太った女、演歌と神秘主義の密接な関係、妄想を媒体にする言語人形—現実の皮が剥...
楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史 (ハヤカワ文庫 JA)
楽園の知恵
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商品説明
夢を見ない理由、死体に似た街、腐敗してゆく自分、地下室で蠢く父、時の王国におわす神、娼婦工場の太った女、演歌と神秘主義の密接な関係、妄想を媒体にする言語人形—現実の皮が剥がれたときに見え隠れする幻覚妄想恐怖戦慄神秘奇蹟を、ヒステリーの治療過程に見立てて並べてみせた、凄絶作品集。『傀儡后』で宇宙的悪夢を描いて日本SF大賞を受賞した牧野修が虚空の果てに見いだした、甘美なる知恵。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
病室にて | 7-14 | |
---|---|---|
いかにして夢を見るか | 17-30 | |
夜明け、彼は妄想より来る | 31-55 |
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紙の本
「病室にて」にやられてしまった
2018/08/22 21:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:休暇旅行 - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒頭の掌編「病室にて」にやられてしまった。ナイーヴでさえあるこの掌編が、しかし心から離れない。
つづく短篇群は、四章構成の枠外にあるこの掌編の語り手が書いた小説かとも読める。もっとも、同じく枠外にある末尾の短篇「付記・ロマンス法について」が「病室にて」と連続してはいないので、必ずしもそうは解せないのだが。「病室にて」はこれで完璧だと思うので、無理につづきを書かなくてよかった。あるいは「付記・ロマンス法について」は「病室にて」をより卑俗に、つまりちゃんと終わりまでいけるように仕立て直した作品だともいえる(ただし実際には「付記・ロマンス法について」のほうが先に書かれている)。
そしてつづく短篇群がまた、そう読んで「病室にて」の感動を汚さないすばらしい出来である。とくに一章の4篇は傑作ぞろいだ(二章以降も出来はいいのだが、作品の雰囲気が若干異なってくる)。
一章2篇目「夜明け、彼は妄想より来る」は、直球の希望ないうらぶれた人生と、山尾悠子「夢の棲む街」を思わせる怪奇な過程が、空虚と知りつつそれゆえの救いに着地するまさに「病室にて」スピリットを継承する作品(まあぶっちゃけ、視点人物女性という共通点に食いつく私個人の性癖というだけかもしれないが)。
一章4篇目「いつか、僕は」は、どうやら初出を見ると初出の場よりもこちらで読んだ方が終盤の展開が予想不能になるようだったので、この短編集で読んでよかったと思う。