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商品説明
東京裁判で被告人全員を無罪としたインド人裁判官パール。インドでの生い立ちや法学者としての活動、東京裁判とパール判決書、戦後繰り返し訴えてきた再軍備反対や平和憲法の死守、絶対平和主義など、彼の思想の根源に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
中島 岳志
- 略歴
- 〈中島岳志〉1975年大阪生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。北海道大学公共政策大学院准教授。著書に「中村屋のボース」「ヒンドゥー・ナショナリズム」など。
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著者/著名人のレビュー
東京裁判で被告人全...
ジュンク堂
東京裁判で被告人全員を無罪としたインド人裁判官パール。それは日本無罪論ではなく、戦勝国による一方的断罪を認めればどんな侵略戦争も正当化されてしまうことへの警告だった。裁判後も日本を何度も訪れ、「武装によって平和を守る、というような虚言に迷うな」と再軍備反対・平和憲法の死守を主張しつづけたパールの、妥協なき生涯を描く。
出版ダイジェスト:2008年10月
テーマ『人間活動の英知を集結した「人文知」 理系のための「文系」教養』より
紙の本
勝ち目の無い戦いを始めてしまった中島岳志くん
2007/11/27 16:54
22人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
心情左翼の中島君。「中村屋のボース」でやめときゃいいのに、よせばいいのに「インドについては、俺のほうが詳しいんだぞ」とばかり「パール判事」を本にして、これをネタに安倍政権のパール判事遺族訪問にケチをつけた。「極右安倍がバカな行動に出た。パール判事の『真意』も知らず、インドを巻き込んでの浅薄な『価値外交』なんか展開するな。恥を知れ。お前の魂胆は中国包囲網の形成だろう」とやらかした。私はインドを巻き込んでの価値外交のどこが悪いのだと思うのだが、中島君は思わなかったらしい。どうしても「アジアは友であり連帯しなければならない」と言いたいらしい。でも、日本の価値外交なんて、ロシアや中国が展開している露骨な『価値外交』に比べればかわいいもので、それにそもそも中国包囲網なんて出来ないし、安倍政権自身、中国包囲網なんていきなり形成しようなんて思っていなかった。外交というのは囲碁に似て、そのときはなんでもないように見えた石の置き方が、後になって決定的に重要な布石だったなんてことになるものなのである。だから、そのときは意味の無いように見える石でも、とにかく置くことが重要ということもあるのだが、中島君にはこれが我慢ならなかったようだ。全く一方的なドグマのとらわれ人となると、白いものも黒く見えてしまうようだ。あと、中島君の計算外だったとは思うが、安倍攻撃に現を抜かして「勝った」つもりでいたところ、小林よしのりという「歯牙にもかけていなかった」伏兵から、思わぬ攻撃を受け、防戦一方となったことだろう。かたや下賎なる漫画家。かたや北海道大学大学院法学部准教授。片方は、はじめから失うものをもっていない捨て身の攻撃が可能な男。片や戦に巻き込まれれば巻き込まれるほど失うものばかりで得るところの何ももたないカタギの職業。この勝負、初めから小林よしのりが断然優位にたって開始されたわけだが、経過は案の上である。小林の言論はネット上で数々の疑義が呈されており、その言論はトータルとしてみれば、穴だらけ、間違いだらけで信頼性は低い。にもかかわらず「寸鉄人を殺す」ではないが、時折散発的に放たれる「流れ弾」のような小林の指摘は結構いい線をついているものがあるのである。パール判事が広島の原爆慰霊碑の碑文「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませんから」を読んで「これでは誰が加害者かわからないではないか」と激怒した事実を巡るやり取りや、同じく広島の本照寺の「大亜細亜悲願の碑」をめぐるやり取りでは小林に軍配が上がりそうである。中島君は調子こいて安倍を叩いているうちに、小林よしのりという手ごわい(悪い)相手を喧嘩相手に選んでしまったようである。
紙の本
50年間の人類の進歩とは何なのか?
2007/10/08 00:41
13人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の「中村屋のボーズ」を以前読んだことと 最近インドに行く機会があったことで本書を読んだ。パール判事に関しては 東京裁判で無罪と判定した判事が一人いたという程度の知識があった程度で 具体的に読んだのは今回が初めてである。
読後の感想として二点挙げたい。
まず一点目。東京裁判で被告を無罪と判断した理由が実に良く分かった。パール判事自体は 太平洋戦争での日本の行った戦争行為に関しては断じて肯定はしていない。この点で パール判事の判断を 太平洋戦争での日本の戦争責任から免責の根拠にしているという言説に対し 本書ははっきり異議を提出している。一方 東京裁判という場を造り 戦勝国が敗戦国を裁くことの法的根拠の無さをパール判事が指摘している点も大変良く分かった。
パール判事は裁判自体の無効を主張する以上に 戦勝国も敗戦国も 戦争をやったという点は同罪であり かような裁判が成り立ってしまうことは「戦争に勝てば正義」という風潮を招きかねないという問題提起を行った点で 今尚現在性を保っている。
二点目。まさしく その「現代性」である。
今の中東を巡る 米国とイスラム教国との「正義のあり方」に関して 本書は大変に示唆に富んでいる。先日チョムスキーの「お節介なアメリカ」を読んだ際にも思ったが 例えばイラクのフセイン大統領への裁判も 基本的にはパール判事が指摘した「東京裁判の欺瞞」の延長上にあると思った。
従い パール判事の50年前の主張が今なお生きている点で 本書は誠に時期を得た本であると思った。
パール判事が若し今生きていたら「人間はこの50年に進歩しなかった」と嘆息するに違いない。読んでいて一番感じたのはこの点だった。
紙の本
安倍首相は、恥を知るべきである
2007/09/12 04:34
18人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この人はなぜ、”わざわざ”こんな行動をとるのだろう。しかも、他国のマスコミも注目する外遊の場において。
安倍晋三首相は8月末のインド訪問の際、東京裁判でA級戦犯全員の無罪を主張したパール判事の長男に”わざわざ”面会を求めた。
これに対し、東南アジアのマスコミが厳しく批判をしているそうである。「日本の国内法によれば、A級戦犯は戦争犯罪人ではない」との首相自らの国会答弁を正当化しようとしたとの批判である。
「確信犯」という言葉がある。自身の信念に基づき、周囲からの批判や周囲への影響の大きさを予測した上で、あえてその行動をとる人を言う言葉である。しかし、安倍首相の場合は、この「確信犯」と呼べるほどの深い策略や計算高ささえ無いようである。とにかく、する事なす事がすべて単純なのだ。自分の感情だけで、したいことをする。周囲の空気を読み自身の行動を制御したり、周囲の反応を計算して何をすべきか考える、といったことは、この人には無縁のようだ。「深慮遠謀」などという言葉とまったく対極的な人格のようだ。
今回の件にしても、首相はどこまでパール判事の主張を理解した上で長男を訪問しているのだろう。
パール判事は、決して日本の戦時中の悪行非道を許し、あるいは認めずに、A級戦犯無罪を主張したわけではない。むしろ、日本軍の残虐行為が実際に行われたことを肯定し、これらの行為を厳しく非難した。「鬼畜のような性格」を持っていたと断罪した。無罪を主張したのはあくまで東京裁判で裁かれた「平和に対する罪」「人道に対する罪」「通例の戦争犯罪」のうち前2者について罪刑法定主義の原則から疑義を投げかけたに過ぎない。日本の戦争犯罪の道義的責任の有無とは全く別の話である。
パール判事は純粋に平和を愛する人であった。東京裁判でA級戦犯に有罪を言い渡すことより、戦勝国主体であった裁判の行き過ぎを抑制する方を選んだ。将来的な世界平和につながる道を自分なりに考えた。それは彼の信念に基づくものであり、それだけに、戦争犯罪に対しては、例え戦勝国側に対してであろうと真摯に反省を求めた。アメリカの原爆投下に対しても日本のアジア侵略に対してと同様、「通例の戦争犯罪」の適用を求めた。
『満州国建国の茶番は西洋帝国主義の論理を日本が継承した結果に他ならない。にもかかわらず連合国は自分たちの植民地支配を棚に上げ日本の行為を「平和に対する罪」に問おうとしている。日本も西洋諸国も道義的に同罪ではないのか。』
著者の記すこの言葉が、彼の信念をよく物語っている。
パール判事は戦後も、帝国主義国の「非道」を正当に裁くことのできない国際社会の限界を冷静に指摘し続けた。そして「世界連邦」の実現に向けて人類が一致して努力すべきことを訴え続けた。
パール判事の平和への思いを理解しないばかりではなく、まったく歪んだ解釈をし、自論の正当化に利用しようとした安倍首相は、恥を知るべきである。
国連をも無視し、世界中で単独行動を続けるアメリカ、そしてそれに無条件に追従する日本。そんな日本の姿こそ、パール判事が心底嫌ったものであることを安倍首相は理解しようともしない。
安倍首相は、国会演説で日米豪印の四国同盟による「拡大アジア」構想を提唱した。露骨な中国包囲網である。パール判事の唱える「世界連邦」の姿と比較した時、その愚かさは説明するまでも無い。
紙の本
皮肉なことに、パール判事の存在を知ったのは「プライド-運命の瞬間」の映画からです。
2007/08/19 09:10
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の序章と終章において映画の「プライド-運命の瞬間」を批判する文章が出ている。平成10年(1998)に公開されたこの映画は住宅メーカーの東日本ハウスが創立記念事業として制作したものだが、新聞でも「東京裁判忘れた方がいい」という論調でこの映画を批判した。
皮肉なことに、この新聞での批判記事に惹かれて映画を鑑賞したが、東京裁判にインド代表の判事が加わり被告の全員無罪を主張していたことに驚きを覚えた。これを観た人は開戦時の首相である東條英機が無罪となることに反感を覚えたのだろうが、パール判事の業績を強く表現するためには東條英機をクローズアップするのが一番と製作者側は判断したのだろう。連合国が開いた東京裁判では無罪でも、東條英機はその他の犯罪で日本人に訴追され刑に服さなければならないと思っていたので個人的には特に東條英機が善玉に変わったとは観賞後も思えなかった。
むしろ、パール判事という人物がいたことを知って一見の価値はあったと思った。
このパール判事の業績を追った本書を読みながら、もしかしたらパール判事は昭和23年(1948)にアメリカで出版されたヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡・日本』を事前に読んでいたのかなと思った。ヘレン・ミアーズはアメリカにおける日本研究者としてGHQの招きで来日し、主に日本の労働政策にあたった人であるが「アメリカは日本を裁くほど公正でも潔白でもない」と主張したため、マッカーサーは『アメリカの鏡・日本』の日本における翻訳出版を禁じた。
パール判事の判決書の考えがヘレン・ミアーズの著書の内容と一致する部分が多いからであるが、偶然なのだろうか。
パール判事はガンディーの非暴力主義に傾倒していたという。
しかし、東京裁判で東條英機等が絞首刑となった後の世界を見ると、日本を侵略者として糾弾した中国はチベットを侵略し多くのチベット人を虐殺し、インドと中国、インドとパキスタンは武力衝突を起こした。昭和39年(1964)には中国が原爆実験を行い、平成10年(1998)にはインド・パキスタンが地下核実験を行っている。
パールが望んだ世界平和とはかけ離れた状況が展開されているが、この情勢をなんと評するだろう。
とまれ、東京裁判は忘れるものではなく再検証することでパール判事の理念を確認するものとなるが、本書はその大枠を理解するためのものである。