紙の本
赤と黒(上)
2016/03/28 10:41
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投稿者:Carmilla - この投稿者のレビュー一覧を見る
1820年代のフランスを舞台に、立身出世を目指す貧しい木こりの子(この文庫本では、彼はそれなりに裕福な木材商の子弟とされている)・ジュリアンの野望と転落を描いた、スタンダールの小説。世界史の歴史に載るほど有名なのに、今まで読む機会がなかった。安倍政権発足以来、日ごとに高まる「反知性主義」に対抗するためには古典を読むのが一番だと思いながら書店内を散策していて、たまたま目に入ったのがこの本である。
主人公ジュリアンは実家を出て、地元有力者・レナール家の家庭教師になる。ほどなくして主人の妻・ルイーズと恋愛関係になり一線を越えた関係になるが、主人は二人の関係に疑念を持ち、レナール家に気まずい空気が流れてしまう。主人公の立場をおもんぱかったルイーズは、彼を神学校に入学させることにする。ジュリアンはレナール家の一員になって以降、上流階級の持つ欺瞞性を嫌悪していたが、神学校入学後はその思いを強めていく。彼は自らの知性と美貌を武器に「上流階級」に一泡吹かせようという野心を抱くようになる。
階級間の格差が広がりつつある現在、ジュリアンと同じ野望を抱く人間は増えていることだろう。問題はその野望が「世間をよくしよう」という方向ではなく、自己顕示欲に向かう人が多くなるのでは?ということである。1820年代のフランスに流れる空気が、現代日本にも漂っているのだろうか?
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スタンダールは、大学時代に読んだ「パルムの僧院」以来で、初読というのが恥かしくなるほどのド古典だが、初読。
訳者の野崎歓が言う通り、1830年代当時よりも、自らを偽って生きることの多い(そして恋愛のゲーム化がますます進む)現代において、なお共感されるところの大きな小説と言えるだろう。現代的なエンターテイメント小説と比較すると、構成に荒削りなところは多いが、それでも「近代小説の嚆矢」と言われるスタンダールの面目躍如といった作品で、ほとんど一気読みだった。
野崎訳に対する批判は、すでにあちこちで論じられている通り、違和感のある文章がなかったと言えば嘘になる。しかし、そもそもこの問題は、翻訳自体に対する批判というよりも、改訳に対する編集部の姿勢を批判しているものと理解している。
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語訳の話もあったので、最新の4版を購入。
が、93ページから123ページまで紙がしわくちゃだったので3版に交換。
この本とは、相性悪いというか縁がない。。。
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読んだ理由:レビュー一覧に文学作品を載せたかったw
感想:階級社会における抑圧と葛藤、許されぬ恋を圧倒的な内面描写で表現している。プロット自体はよくできた昼メロのような感じ。「情熱の文学」という表現が見事に当てはまる一冊。
野崎氏の新訳は難解なところもなくすらすら読めた。「文学を読む!」というふううに肩肘を張らなくても、エンターテイメントとして楽しめるものに仕上がっていると思う。
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1830年の七月革命の勃発を予感させる時代。その時代背景としての身分・階級や党派の確執や思想を色濃く受けるなかで、人間関係と恋愛の策略とスリルを克明に描いた小説。
私は、小説を、いかに共感できるか、という視点で読み、評価することが多いが、この作品はそうした普段の視点とは別に物語の筋自体を楽しめた。ジュリアンの持つ、強烈な自尊心と偽善と情熱と崇高な精神は、時代中でかなり個性が強く共感しがたいが、そのこころの動きを一貫して丁寧に克明に描いている、その作者の抜かりのなさが素晴らしい。そして一瞬で移ろう人間の普遍的な心理を細かに、そしてリアルに描けている。上巻の野崎氏の解説で、歴史的背景への理解が深まり、また「この小説は『史上初の、サラリーマンを主人公とする小説』だと述べる研究者(Yves Ansel)もいる」との話と、その解説に納得し、最近流行りのビジネス小説(ハゲタカとか?)のさきがけなのかもしれない、とも思い興味深かった。恋愛という観点から言うと、手練手管の要素が多い中で、男女の心の微妙な変化、機微の中の表層的な部分をよく描いていると思う。
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Amourの国、フランスの古典に初挑戦。
きっかけは、映画の予告編。
昼ドラっぽい雰囲気+
早世されたなんとかフェリペとかいう
主人公の麗しい俳優に誘われて
いつもと違う分野に手を出してみた。
が、結果は、あえなく惨敗。
自尊心の高さ故に人妻にちょっかい出したり
情緒が全然安定しない主人公が理解できず
そこから燃えてしなだれる恋の駆け引きに
発展するのもよくわからなかった。
そう、私には気持ちと言葉が濃すぎました。
下巻も借りてますが、読まずに返却します。
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ロシア文学に負けないくらい登場人物が多い。
神父に教えてもらったラテン語を武器に上流階級の家で家庭教師をする農民の子ジュリヤン・ソレル。
私が読んだ(そんなに読んでない)フランス文学の中では1,2を争うくらい面白いです♪
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歴史を全く勉強していなくても「とりあえず王党派と自由主義者が対立していてなかなか本音が言えない時代なのね」と納得して読めば大まかな図式はつかめるはず
どうしても心配なら先に解説を読んでしまうのをオススメします
政治の話やら時代を中心にした描写の部分では?となるけれど、おもしろい
普段私小説とか日常を元にした本ばかり読んでいるから、歴史を基にした話は新鮮
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浦野所有。
これは理屈抜きに楽しめる小説ですね。恋愛小説というより、痛快な冒険小説の色が濃くないともいえない内容です。時代背景がわからなくても、ストーリーだけで十分、読み進められると思います。
『赤と黒』は『モンテ・クリスト伯』とならび、「これぞ小説のなかの小説」といわれることも多い作品。この世界を触れるためだけにパラッと読むのも悪くないです。
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1820年代のフランスを舞台に、立身出世を目指す貧しい木こりの子(この文庫本では、彼はそれなりに裕福な木材商の子弟とされている)・ジュリアンの野望と転落を描いた、スタンダールの小説。世界史の歴史に載るほど有名なのに、今まで読む機会がなかった。安倍政権発足以来、日ごとに高まる「反知性主義」に対抗するためには古典を読むのが一番だと思いながら書店内を散策していて、たまたま目に入ったのがこの本である。
主人公ジュリアンは実家を出て、地元有力者・レナール家の家庭教師になる。ほどなくして主人の妻・ルイーズと恋愛関係になり一線を越えた関係になるが、主人は二人の関係に疑念を持ち、レナール家に気まずい空気が流れてしまう。主人公の立場をおもんぱかったルイーズは、彼を神学校に入学させることにする。ジュリアンはレナール家の一員になって以降、上流階級の持つ欺瞞性を嫌悪していたが、神学校入学後はその思いを強めていく。彼は自らの知性と美貌を武器に「上流階級」に一泡吹かせようという野心を抱くようになる。
階級間の格差が広がりつつある現在、ジュリアンと同じ野望を抱く人間は増えていることだろう。問題はその野望が「世間をよくしよう」という方向ではなく、自己顕示欲に向かう人が多くなるのでは?ということである。1820年代のフランスに流れる空気が、現代日本にも漂っているのだろうか?
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やべー。どんな内容だったかすっかり忘れた=3
「まぁまぁ面白かった」気が...。
ラスト、どんなんだったっけ??
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フランスの歴史が少し分からないとつらいけれども
ナポレオンが主人公に多大な影響を
与えてた、と言う事実を知れば
問題なくは読めると思います。
その気質ゆえに家では散々疎んじられていた
ジュリヤン。
一見おとなしげに見える彼は
実は心のうちには「大きな野望」を抱いていたのです。
そして計算高い彼は
一人の夫人を誘惑し、
ついぞは彼女をものにさえしてしまいます。
そして彼はその計算高さ、狡猾さを武器に
地位までも手に入れようとしています。
だけれども脆さも見えるという不思議。
それが下巻では
どうなっていくのでしょうか。
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あらすじを読むと青年ジュリアンの恋愛と出世の話のように思われるが、読んでみると副題の十九世紀年代記にふさわしく当時のフランスの社会情勢をよく反映していることに気づかされた。要所要所に派閥の対立やもっと漠然とした体制的な臨場感がかかれており、ジュリアンを通してその時代を感じるようであった。
恋愛小説としては私たちの感覚とはすこし違うものを感じるのが正直なところだが、ジュリアンが恋愛によって支配しようとして逆にに翻弄される様はおもしろく、また悲劇的であった。
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高校生のときは新潮文庫で読んだ。当時はよく分からなかった部分も今となっては余裕をもって楽しめる。面白くてムラムラする。
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「罪と罰」とは対照的に、主人公が出世欲や感情の激しさ、思考と行動を一致させようとしている点など、自分に投影できる部分が多く、面白い。こんな風に生きたいものだ。
「罪と罰」ではラスコーリニコフは「一人を殺すことで多くの命が救われるならば殺してもよい」と考え高利貸しの老婆をころしたが、結局は罪悪感にとらわれる。一方「赤と黒」のジュリアン・ソレルは、「多くの人間を救うためならば2・3人殺したってかまいやしない」と述べ、最後まで英雄的。非常に対照的な2作品である。