電子書籍
不思議な不思議な物語
2016/01/24 22:21
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投稿者:とと - この投稿者のレビュー一覧を見る
千夜一夜物語の現代版リメイクとも呼べる本作品。とらえどころのない不思議な雰囲気、謎の登場人物、たくさんの小道具。など、ファンタジー好きの元少年少女必見!
紙の本
エキゾチック・ロンドン
2014/12/27 14:23
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
アラビアンナイトの名を騙っているが、19世紀末ロンドンを舞台にした冒険談であり、怪物も魔法使いも登場するわけもなく、紳士と悪党の入り混じるドタバタ劇だ。
その中心になるのは、ボヘミア国なる謎の国の王子。ヨーロッパなのにエキゾチック、アラブと中間ぐらいな気がして、かつ高貴な伝統も思わせる絶妙なポジション。そのボヘミアの王子がお忍びでロンドンに住んでいたりするのだから、暴れん坊将軍的でもある。
自殺願望のある者たちを集めて、希望をかなえるというクラブに潜入する王子だが、それは確かに奇妙な冒険である。
またもう一話では、さる将軍がアフガニスタンの王からもらったというダイヤモンドをめぐっては、その収束役として活躍する。
自殺がどの程度の反道徳的行為だというのかいまいち捉えずらいのだが、ここは王子の怒りの強さに引きずられる。ダイヤモンドの魔力に憑かれて狂奔する人々は、アフリカで専制を敷いていたという軍人に、牧師の地位を投げうって賭けに出る男、財産狙いの結婚であることを隠さずに散財に走る夫人、名の通った紳士、淑女の顔はしていてもではあるが、みな妖怪のような人物だ。つまり19世紀ロンドンという、科学技術の発展した世界にも存在しうる怪物の姿を描き出して、それを退治する冒険談というわけだ。
怪物と戦うための武器は、知性と勇気であり、それを育む高貴な血筋というのも、ここでは大きな意味を持っているらしい。そういうシャーマニズム的気風が現代のロンドン、パリで幅を利かせて、理性を誇る人たちが窮地で縋るいるというのも一種のウィットであろうし、表面的な取り澄まし具合との落差は愉快でもあるし、果たして我々にそれを笑えるのか自問自答もする。
怪物達に振り回される無垢な人々はというと、馬車で、徒歩で走り回り、泥まみれになり、恐怖と驚きに動転し、と存分に蹂躙される。こうして冒険小説の要素がぴったりと大都会にあてはまり、スピード感のあるチェイスが繰り広げられる。
コナン・ドイルも、チェスタトンも、ロンドンを舞台にした冒険小説を創出したが、スティーブンスンは植民地やその他の世界の侵入、産業化によって生じた価値観がヨーロッパにもたらす新しい闇の中に、その舞台を求めて、市民社会が揺らいでいく瞬間を切り取ってみせている。
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『自殺クラブ』は子供のころにあかね書房のシリーズで読んだっけ。懐かしい!訳文も小説の世界を壊さない、実に雰囲気のある訳文だと思う。それにしてもフロリゼル王子の行く末がなんとも・・・
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新聞小説って片手間に読むのに向いてて手持ち部沙汰なときによいなぁ。主人公をコロコロ変えながら事件の真相に迫っていくんですが、設定も事件もファンタジックなのでシリアスな雰囲気はないです。まさしく冒険小説! タンタンとか好きな人は好きそう。
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アラビア夜噺というタイトルを耳にした時点で膨らむ妄想。
アラビアンナイトのようにわくわくした話を期待したけれど、なんか違う。
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ミステリ風の奇譚、冒険譚といったところか。最初の「自殺クラブ―クリームタルトを持った若者の話」は、“自殺クラブ”という設定が面白いし、フロリゼル王子と忠臣ジェラルディーン大佐の主従は何となく「暴れん坊将軍」を思い起こさせて楽しめるのだけれど、次第にその影が希薄になって行くのが勿体なくもある。
連作なので短編ごとに語り手の視点が変わるのはいいんだが。
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イギリスの最も素敵だった時代にぴったいの不思議なおとぎ話。
なんてことはないきっかけが、一夜のうちのめくるめく冒険に変わっていく…。
これで思い出したのが、以前友人から唐突にもらった坂田靖子氏の
漫画。(彼女はとにかくイギリスの最も素敵だった時代を描くのがうまい)日本では20世紀、漫画・コミック文化が華やぎこのようなお話にはたくさん恵まれているため、逆に重宝されないジャンルかもしれない。しかしイギリスならでのブラック・ユーモアは、一読の価値あり。
クリームタルトが食べたくなる。
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なにがアラビアなのかがわからない。
解説読んでそういうことなのねと気づく。アラビアンナイトを知らない僕にとってはそこからまず読むべきなのだ。
とはいえ、中身はすごくオリジナリティがあり、ミステリアスな物語。かといって冒険活劇のような痛快さも含まれている。
この著者のは、子供も大人も楽しめる作品がおおいよね。
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著者は「宝島」「ジキルとハイドなど」のスティーヴンスン。
悪漢が闊歩するヴィクトリア朝ロンドンで、ボヘミアの魅力的な王子フロリゼルと、忠臣ジェラルディーン大佐の冒険譚です。
しかし…この作者は、スティーブンソン、スチーブンソン、スティーヴンソン、スティーヴンスン。。などなど翻訳者さんにより表記が違うので、検索するときに非情に見つけづらい!!ヽ(`Д´)ノ
『自殺クラブ』
自殺志望者が集まる秘密結社『自殺クラブ』を巡る3つの物語。
ロンドンに滞在するボヘミアの王子フロリゼルと、忠臣ジェラルディーン大佐が訪れたバーで、人々にクリームタルトを配って回る若者が現れた。若者は、生きることに絶望して「自殺クラブ」へ入会し、最後の散財をしているという。興味を示したフロリゼル王子は、自分も自殺志望者だと偽りその怪しい組織へと潜入する。
そこではクラブの会長が会員たちを集めて、トランプゲームにより殺される者と殺される者を選び出していた。
クラブ参加者の命運を見た若者は自殺を思いとどまるが、ある夜フロリゼル王子が殺される者のカードを引き当ててしまう。
/「クリームタルトを持った男」
自殺クラブを解体させたフロリゼル王子だが、会長の影響力はまだ強かった。
アメリカ人青年スカダモアは、美しい女性から逢引の誘いを受ける。すっぽかされたスカルダモアが家に戻ると、自分のベッドに男の死体が残されていた。
呆然とするスカダモアの前に友人ノエル博士が現れた。ノエル博士はスカダモアの大きなトランクに死体を詰めさせ、旧知のジェラルディーン大佐を紹介する。スカダモアはフロリゼル王子とジェラルディーン大佐の一行に加り、税関も素通りできた。
しかしこの死体は、自殺クラブ会長を追っていたフロリゼル王子の手の者だったのだ。
/「医者とサラトガトランクの話」
街を歩いていたリッチ中尉は、優雅な二輪馬車の御者により不思議な屋敷に送り届けられた。屋敷の中は紳士たちの賭博場だった。そして屋敷の主は客たちの様子を観察するかのように屋敷を回っている。
ホストの目に叶ったのは、リッチ中尉と歴戦の老兵オルック騎兵少佐の2人だった。
ホストの正体はジェラルディーン大佐で、フロリゼル王子が自殺クラブ会長との決闘の立会人として、信頼できる紳士を探していたのだった。
/「二輪馬車の冒険」
『ラージャのダイヤモンド』
世界で6番目に有名なダイヤモンドを巡る4つの物語。
最後にサラッと書かれていたフロリゼル王子のその後が…(@_@;) 王子なにやってんの…
60歳になるトマス・ヴァンデラー卿は「ラージャのダイヤモンド」と呼ばれる素晴らしいダイヤモンドを持っていた。贅沢三昧により破産寸前となった若い妻は「ラージャのダイヤモンド」を含む財宝を夫から盗み出そうとする。
ヴァンデラー卿の秘書のハリーは、ヴァンデラー夫人から丸い箱をある場所に持っていくように頼まれる。その場へ向かうハリーをヴァンデラー卿と、夫人の従兄弟が追いかけてくる。
走って逃げるハリーは、侵入した他人の家の裏��で、丸い箱の中の宝石をばらまいてしまう。
/「丸箱の話」
ヴァンデラー卿の「ラージャのダイヤモンド」を拾ったのは有能な若い学者で聖職者のロールズ師だった。ロールズ師はダイヤモンドの美しさに魅了されてネコババしようとする。
ロールズ師がダイヤを持っていることを知った持ち主のトマス・ヴァンデラー卿とその弟で元軍人のジョン・ヴァンデラーは、ロールズ師を狙う。
やがてロールズ師は、ボヘミアの若くて魅力的な王子フロリゼルと知り合いになり助けを求める。
/「若い聖職者の話」
銀行員の若者フランシス・スクリムジャーに、匿名の素封家から援助の申し出がある。どうやらスクリムジャーはその匿名者の私生児で、彼の言うとおりの結婚をすれば財産をもらえるらしい。
しかしこの話には「ラージャのダイヤモンド」を巡る人々の出し抜き合いが隠されていた。
/「緑の日よけがある家の話」
ロールズ師の持っていたラージャのダイヤモンドは、いまはボヘミアの王子フロリゼルの手に預けられた。
外交特権のあるフロリゼル王子だが、このまま持っていては国際問題になる。だが持ち主に返せば罪に問われる者、理不尽な処遇を受ける者が出てきてしまう。思考を巡らす王子の前に刑事が訪れる。
さあ、いかにすべきか。
/「フロリゼル王子と刑事の冒険」
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19世紀のロンドンを舞台に、アラビアンナイトを下敷にして書かれた物語集。自殺クラブから始まり、ボヘミアのフロリゼル王子が関わる一本の大きな物語が、いくつもの短編で紡がれていく。
最初は一体何の関係があるの?という物語でも、少し読み進めると、あーここに繋がるのか!という感じ。
あとがきにもあったが、19世紀ロンドンは経済発展著しく、他の国からすると、魔都のようでまさしくアラビアンナイトの世界だったのかもしれない。
今のロンドンはガス燈でもないし、暖炉の使用が禁止されてから霧の都でも無くなったけど、それでも夜はビクトリア朝を思い起こす画がある。
中学生の姪っ子にお薦めしたい。
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理由なき自殺願望者が集う、ロンドンの街。ボヘミアの王子フロリゼルは、悪の正体をつかむべくロンドンの夜を奔走する。
これも何も知らずに、文庫裏のあらすじだけ見てふっと借りた本(私はそれまで、スティーヴンソンは一冊も読んだことがなかった)。
で、すっかりハマってしまった。
とうにかく私は、こういう話が好きなんである。人間的な感情よりもむしろ、物語としての魅力が詰まった、軽妙だけど割りとこってり系の本が。
この本も読んでいて、会話や文章どころか、行間からも(!)物語の匂いがぷんぷんして、もう堪まらなかった。うーん、最高。物語の香りに酔えた一冊。
でも、多くの人が言っているように、最後がちょっといただけない。というか、もったいない。
私は登場人物の中で、聖職者のロールズが好きだったので、このロールズ氏が成り上がって、フロリゼル王子と全面対決してほしかったな、どうせなら。
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勧善懲悪というか信賞必罰が貫かれているので
読後にモヤモヤせずに済む。
また狂人が出てくることもないので、感情移入もしやすい。
読むにあたって知っておくべきこともないので、
頭を使わずに読める本として非常に面白い。
ただ読後に何か考えさせられる本か、というと違うと思う。
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題名が気になって手に取ったら、話も面白そうで借りてみた本。
しかも、「宝島」の作者ってのも気になって。
いきなり「自殺クラブ」の話(わりと非道な感じの)でビビり、一話一話の主人公がくるくるかわるけど、事件は続いていて、どんどん話に引き込まれていく感じだった!
主人公のフロリゼル王子がまた、魅力的!
最後はビックリしたけどね…
でも面白かった!!!
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『自殺クラブ』3篇『ラージャのダイヤモンド』4篇の二部構成で、各篇のメインキャラクターは異なっているがボヘミアのフロリゼル王子がストーリーに絡む。「これで(とわがアラビア人の著者は言う)「~の話」は終わる」と各章は締めくくられる。最初よくわからず?となったが、読み直してから意味がわかった。フロリゼル王子の視点で書かないことで、突然わけのわからない状況に置かれたメインキャラクターのきもちになれてワクワクした!
『宝島』と『ジキル博士とハイド氏』と同じ作者とは思えない、荒唐無稽なファンタジー!
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漱石の『彼岸過迄』の中にこれについての言及があるそうな。これはジュブナイルじゃないかなあ、ギリかなあ。あまり評価していない割によく手に取ってしまうのは「クリームタルト28個」のせいだと思う。我ながら浅ましい…。
19世紀末のロンドン。ボヘミア王子のお忍び譚。ストーリーより舞台がいいんだよね。ホームズがアドラー嬢を追い回しているのとどこかですれ違っていそうな気がするんだよね〜
誉田哲也『ストロベリーナイト』のネタ本は、これの「自殺クラブ」だと思います。石田衣良 『反自殺クラブ −池袋ウェストゲートパークV』ってのもありますが、これは趣旨が違うみたい。