紙の本
宗教と心理学
2023/08/21 23:32
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投稿者:こっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
未知なるものに対する恐怖を宗教で覆っていた時代が終わり、科学が神を凌駕する今、宗教の意義が問われている。フロイトは神経症による不安を取り除くことと宗教儀式とに類似性を見た。キリスト教文化が神経症をつくったとまで述べている。恐らく氏はユダヤ人であるが故にキリスト教に敵対心があるのかも知れない。そのことを差し引いても真に迫る一冊だった。
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さすが、なんだろう。
2020/04/27 22:25
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投稿者:ゆきき - この投稿者のレビュー一覧を見る
光文社古典新訳文庫シリーズの名訳もあってか、読み終えればなんとなく何かがわかったような気になる。
しかし本当にわかっているのか。フロイトの頭の中を覗いてみたいものだとおもう。
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しかしここで指摘された矛盾のうちで、とくに重視されている矛盾について考えてみよう。人間は理性的な根拠にはあまり影響をうけず、欲動の願望に完全に支配されている存在である。だとすると、人間に欲動の充足を禁じて、理性的な理由を与えようとしても、意味があるのだろうかという疑問についてである。ただしこれについては、人間はたしかにこうした存在であるが、そうでなければならないのか、人間のもっとも内的な本性からして、こうした存在であらねばならないのかは、自明なことではないことを指摘しておきたい。(p97)
(前略)たしかにわたしたちは、人間の知性の力は、欲動の生の力と比較すると弱いものだと、繰り返し強調してきたし、それは正しい主張なのである。しかしこの知性の〈弱さ〉には、ある特別な要素があるのだ。知性の声はか細いが、聞きとどけられるまでは、黙すことはないのである。繰り返して拒否されても、やがて聞きとどけられるものなのだ。そこに人類の将来について楽観できる数少ない理由の一つがある。(p109)
ここでフロイトが展開した宗教批判、宗教教育批判の重要性は、現在でもまったく意義を減じていない。
それは、フロイトが批判した「宗教」とは、「人間の本性はこんなものだから仕方がない」という現状容認的な考え(思考停止)の普及による支配の形態、『宗教による思考の禁止の力』(p99)ということに、その力点を持つものであり、現在は、通常宗教の名で呼ばれるものにとどまらず、自国(自民族)中心主義とか歴史修正主義とか新自由主義とか、ある種のリベラリズムとか、さまざまな形態をとって、そうした支配の形態(思考の禁止)が幅を利かせていると思われるからである。
フロイトは、文化を「自然から人間を防衛する」ものととらえるわけだが、欲動のままに自由を求める人間にとっては文化による強制は敵視されるほかないものだから、「人間を文化と和解させ」る方策が必要であると言う。
それがつまり、「宗教」をはじめとするさまざまな「幻想」の存在理由であるが、フロイトは、そうした幻想が人間にとって不可欠なものであることを認めながらも、むしろだからこそ、「知性」によって自分が幻想のなかに生きているという現実を常に批判的にとらえ続けることの大事さを説いたわけである。
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ジークムント・フロイトの三論文「幻想の未来、文化への不満、モーセと一神教」が乗っている。
宗教の成立を心理学的視点から考察しており、フロイトの論理構成は必ずしもわかりやすいものではない。宗教を否定しつつも大衆の道徳規範や大衆の規律のために必要だと論じている。
一貫してフロイトの前提が話を進める上で必須であり読みにくいです。まぁ、論文だからしょうがないかー。
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面白かった、まずはその一言に尽きる。今後はものの見方が少し変わってしまうかも知れない。そのくらい強烈な印象を受けた。
と同時に自分が芸術作品から得ていたある種の予感が決して的外れではなかったことが分かったことで少し安心した。
あと、やっぱり日本人て特殊だなと思った。日本人には父の記憶がないから、無闇にカリスマを求めるのかな。
天皇陛下だってもともと祭祀しか司ってないもんな。
これは文化的に遅れてるということなんだろうか、分からん。まあここでは関係ない。
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本書からは1930年の『文化への不満』をピックアップした。文化•宗教論シリーズは、個人分析理論を社会集団にあてはめて汎用性を試したものだが、論述は様々に広がってゆき、フロイト思想の総体が見えてくる。
また、各論的に、幸福論、ストレス学、美学、恋愛論、人格論などが内包されてもいて、リアリスト•フロイトの洞察には感嘆するばかり。近代の超克の人間的側面はすべてここから始まったと言いたくなる。
エロスとタナトスの衝突が文化の本質という定義を、さらに考え続けなければならない。
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精神分析で知られるフロイトの論文3編。主に宗教批判とユダヤ教についての考察をまとめたもの。
文化とは、人間の生を動物的な条件から抜けださせるすべてのものであり、動物の生との違いを作りだすもののことであると定義する。
出版された時代の技術の進歩についても論じられており、宗教と文化との対比もされている。
僕もいよいよ本の中で迷子になっている。
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精神分析で知られるフロイトの文化批判の著書。「人間は現在という時間をただ素朴に生きている」という未来の予測の困難さについて書かれた箇所に共感した。
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昔の作品なはずなのに
現在読むと衝撃を受ける作品です。
うん、彼は生まれるのも早すぎたように思えます。
ですが、このような警鐘を昔にしてきたからこそ
今の状態をよく眺めることができるように思えます。
科学技術が進歩した今、
宗教はある種の転換を迎えているのかもしれませんね。
結局のところマイナスの方向にしか
動けなくなっているのですから。
トラウマのところが結構薄ら寒いです。
これは日本でもありえないことではないので
要注意です。
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マーケティングの神様と言われるフィリップコトラー氏が最も影響を受けた著書とされる、フロイト著「幻想の未来/文化への不満」を読了。人間は、他の動物と同様に、理性的な生き物である以前に生まれつき多様な欲動が素質としてそなわっていることを幼児の精神分析によって明らかにすると共に、欲動のままに生きる動物とは異なる制御システムとして文化が生まれたと説く。この文化の形成によって人間は自然な欲動を放棄して生きることになるが、フロイトは欲動の放棄を招く文化は害とし、文化からもたらされる害から身を守ろうとする仕掛けの一つが宗教と解説している。その後にキリスト教、ユダヤ教等の宗教論が展開されることになるがそこは割愛するとして、私が本書を通じて感じたことは、日本の社会や現代の若者は、本来人間の資質としてそなわっている「欲動」を無意識的、意識的に”過度に”制御しながら生きているという点であり、その背景には日本特有の文化や偏差値偏重の教育システム、規制等が影響を及ぼしているということである。「欲動」を完全に制御しないことは社会のシステムが成立しないという点で容易に理解できるが、それが行き過ぎると逆に新しい価値を生み出しづらくなるという弊害を生む。日本の社会や企業がもっと元気になって新しい価値を生み出し続ける為には、まずは現在の「欲動」が制御された状況を明確に認識すること、その上でバランスを考え、政策や企業経営に活かしていくことが求められると考えました。
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フロイトの作品の中ではかなり分かりやすい文章を選んだ3作品。フロイト精神分析のとっかかりとして、『文化への不満』から入るのは丁度いいと思う。
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光文社古典新訳文庫 フロイト 宗教批判論文3編。
キリスト教の抑圧性や神経症患者との共通性から、宗教や文化を批判する論調。3編が共通テーマであり、フロイトのユダヤ人問題や宗教論を理解できる構成。中山元 解説のおかげで読めた。
随所に 科学重視、合理主義、個人主義の立場から、キリスト教批判は見受けられる。
各論文のテーマとアプローチ
*幻想の未来
宗教は幻想であり、科学に未来を託する論調。強迫神経症とキリスト教儀式の共通性からアプローチ
*文化への不満
キリスト教道徳の抑圧性が文化への敵視、不満とする論調。欲動論からアプローチし、文化の発展は人間の種の生存を賭けた闘いであるとした
*人間モーセと一神教
反ユダヤ主義の原因を考察。トーテミズムから始まり、ユダヤ教の多神教から一神教化とキリスト教誕生を経て、反ユダヤ主義に至る宗教史からアプローチ。
幻想の未来
*カントの啓蒙の立場から宗教批判
*啓蒙=人間が自ら招いた未成年の状態から抜け出る
*宗教=人間が自然や文化から身を守る仕掛け
*宗教の教えは幻想〜理性では宗教の教えは証明できない
*幻想は 人間の願望から生まれる
文化と宗教の関係を変革する
*科学的な理論の変遷は発展、進歩であり、転覆でない
*科学は幻想でない
強迫神経症と宗教的儀礼の共通性
*宗教は普遍的な強迫神経症
*宗教の教えは神経症的な遺物であると理解すること→宗教の意味を理解し、歴史的価値を認識
文化への不満=集団妄想の狂気
*大洋性の感情=外部の世界の全体とともに生きている、結びつきの感情→残存した原初的な自我感情
*宗教の集団妄想性を批判〜キリスト教の性道徳→欲望の抑圧→神経症へ逃げ込む
*欲動論〜文化の発展は、人間の種の生存を賭けた闘い
*人間が頼れるのは、神の救済でなく、エロスが死の欲動に対抗することだけ
欲動論
*エロスの欲動と破壊欲動の対立
*エロスの欲動=自己保存欲動、性欲動
*破壊欲動=死の欲動(タナトス)
*文化の発展は、人間の種の生存を賭けた闘い「エロスと死の闘い、生の欲動と破壊欲動の闘い〜この闘いは人生そのものの本質的な内容」
反ユダヤ主義の原因
*キリスト教化された諸民族の嫉妬
*割礼による去勢不安
*キリスト教への不満、土着信仰への愛着
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西洋社会を規定していたキリスト教ならびに宗教のメカニズムを、文化からの制約に対する「一般に見られる強迫神経症のようなもの」、「集団妄想の一つ」とする、精神分析的宗教論。
破壊的人間への回帰。