紙の本
イスラエル・ロビーの影響力の強大さに圧倒される
2008/02/23 16:38
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どの国の政治家も圧力団体の飴と鞭に調教されているものらしい。アメリカによるイスラエルに対する一方的肩入れが、中東の動乱を招いていることは明白であるが、その原因がアメリカン政界におけるイスラエル・ロビーの活動であることが解明されている。その影響力の強大さに圧倒される。ユダヤ系アメリカ人が政治経済やその他各方面で活躍し、重要な地位を占めている人々が多い為もあるであろう。イスラエルの行動の是非を検討せず、米国自体への利害を無視して、全て是認し、経済・政治・軍事で圧倒的支援をさせている、その点に反発を感じる。イスラエルの行動の是非を検討することや米国自体への利害を検討することさえ封じてしまっているとなると、いくら合法的な活動の範囲であっても、道義的には問題であろう。しかし、この本の基になった論文が発表されて以来、議論がなされるような雰囲気に変化してきたという。アメリカ政治と国際政治の流れを変えることになるかもしれない、重要な論文・書籍とのこと。少なくともこれまでの米国の中東政策の問題の原因がよく理解できた。
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うーん、イスラエル系圧力団体について比較的公平な視点からよくまとめられている本ではあるんだけど、この本の出版が「事件」になるとは、どんだけ米国でユダヤの話題がタブーなんだよ、というのが第一印象。ユダヤ系圧力団体が議会、行政、学会に強いコネクションを持っているかということが事例を交え紹介されている。たしかに、ユダヤ人がアメリカ政治を乗っ取っているというのは誇張されすぎというのはよくわかるんだけど、これだけ各方面に強い圧力をかけられる団体は無いだろうし、最強の圧力団体であるという指摘はあながち間違いじゃないんじゃないかな。米国のイスラエル政策がアメリカの国益を損ねているという指摘はごもっともで、じゃあどうすればいいんだろう、ってのは後編で書かれているのかな?米国の政治に興味がある人は読んでおいて損はないと思いますよ。変な陰謀論に釣られないためにもね。
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『 イスラエルは現在、年平均で三十億ドル(三千六百億円)の直接的対外援助を米国から受け取って
いる。その額は米国の直接的対外支援予算のおよそ六分の一であり、イスラエルのGDPの約二%に
相当する。近年では、イスラエルに対する米国の支援の約七五%は軍事援助であり、残りは様々な形
の経済援助に分かれている。この直接的対外支援のレベルは、イスラエル国民一人あたりでみると、
年間五百ドル(六万円)を超える支給額だ。他国と比較してみると、米国からの対外援助受給国の第
二位のエジプトでも一人あたりわずか二十ドル(二千四百円)。パキスタンや配置などの貧困国はそ
れぞれ五ドル(六百円)と二十七ドル(三千二百四十円)前後を受け取っている。 』
藤本さんおすすめ、ありがとうございます!
目次見ていたら?よさそう。2009年1月、イスラエルのパレスティナに対する空爆はますます激化。
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世界同時発売の2部作の1作目です。(2部は2007年10月上旬発売予定)
イスラエル・ロビーとはどういったものなのか、アメリカとの関係等について書かれています。
世界を震撼させた論文をもとに、論文では制限があり論じることのできなかった重要な問題も本書では取り上げられています。
世界中の知識人と読者人層の話題の書です。
イスラエル・ロビーというとあなたはどんなイメージをもっているのでしょうか?
秘密結社や陰謀集団?
しかし、実際にはどのような団体か知らないはずです。
それは今までは、マスメディアではほとんど報道されていないタブーだったからです。
しかし、この本が世界同時発売されることにより、「イスラエル・ロビー」について知ることができます。
それも世界最先端の重要な情報です。
この本を読まないと世界情勢についての議論する資格がないほど重要な位置づけの本です。
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アメリカのイスラエルへの過剰な支援が、アメリカの国益や中東地域の安定に本当に寄与しているのかどうかを検討した後、こうしたイスラエルへの支援を実現させているAIPAC等のイスラエル・ロビーの活動を分析。Ⅱへ続く。2009-02-03
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目から鱗の論文。イスラエル・ロビーという存在がいかにアメリカの外交政策に影響を与えてきたか、またそれがアメリカだけではなくイスラエルにも不利益になっていることを論理的に、そして明快に書かれている。イスラエルを正当に批判するだけでも、「反ユダヤ主義」というレッテルを貼られるアメリカにおいて、このような論文を発表した2人の政治学者に敬意を表したい。
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イスラエルはテロとの戦いにおいてアメリカにとって有益なパートナー。
イスラエルロビーの目的は椅子れるの主張をアメリカ国内で広めること。さらにイスラエルの利益になると信じる方向に、アメリカの外交政策が決定されるように影響を与えることも彼らの目的である。
アメリカはイスラエルについて大恩人。
イスラエルとあまり親密な関係を持つことはアラブ世界との関係を壊し、ソ連が中東で影響力を入手できるチャンスを与えてしまうことであった。
社会の風潮をイスラエル寄りにすることが重要。
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何故アメリカは、テロ戦争の矢面に立ってまで、イスラエルを支援し続けるのか、暗黙知のように語られない謎について、丁寧な説明がなされている。
イスラエルという国家の、戦時下とは言え非人道的な活動や、アメリカ政界におけるイスラエルロビーの隠然たる影響力。彼らの支援なしには、議員の当選がおぼつかない現状。
ただ、これだけの説明をするのに、これ350ページを越える分量がいるの?と。扇動的な週刊誌のゴシップ記事がいいとは言わないけど、冗長な説明に疲れ果ててしまった。まだ下巻があるの?さすがに読む気がしない。
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読者に理解してもらう点.
①米国はイスラエルに対して並外れた物質的な援助と外交支援を与えていること.
②「イスラエル・ロビー」の存在が米国のイスラエル支援の主要な理由であること.
③このような無批判かつ無条件の支援を続ける関係は米国の国益に適っていないこと.
【冷戦中】
イスラエルは,中東へソ連が膨張してくることを封じ込める役割を果たしていた.
【冷戦後】
「米国とイスラエルは共通の敵を持っており,国際テロとの戦争を闘っている」という見解は間違い.アメリカはイスラエルを支援したことによって,中東での人気を失ったのだ.
【近年】
ユダヤ人は,ヨーロッパでの境遇と同じように,中東でも長い間ずっと犠牲者だった.しかし,イスラエルはパレスチナ人に自立した独自の国家を認めるのを拒否していること,占領地区でパレスチナ人の基本的人権を拒む司法・立法・軍事上の体制を押し続けていることから,イスラエルは民主国家といえない.
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いかにユダヤ系が世界を動かしているかというのがわかる一冊。
代ゼミ世界史の諸岡先生の授業が思い出せれる。
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イスラエル•ロビーⅠ』ー書評
「私の外交政策における最優先課題は米国を守る事だ」と日本の政治家が言えばどうなるか?おそらくその人物は激しい批判に曝されるはずだ。しかし、米国内ではことイスラエルになると話は別だ。イスラエルを守る事に関し、政治家はしばしば誰が最もイスラエルに忠実かを競い合う。米国の中東での対外政策は『親イスラエル』に極めて同調的だが、その背後には強力な圧力団体としての<イスラエル•ロビー>の働きがあるのだ。
本書は米国における偉大な国際政治学者二人がが米国社会でのタブーに挑んだ書として論争を巻き起こした。紆余曲折を経て出版された本書が興味深いのは、至極論理的で冷静なリアリストの立場からの提言にも関わらず、この本が「反ユダヤ主義」との批判を受ける現実かもしれない。この事実は、逆説的ながら筆者らが指摘するように、<イスラエル•ロビー>の常套手段であり、対イスラエル政策に対して、言論空間が極めて狭い「米国社会の闇」を浮き彫りにしているといえる。
Ⅰにおいて、戦略性や人道性などからイスラエルの支持を無条件に要求する言説を批判的に検討し、一貫した親イスラエル政策が論理的でなく米国の利害を蝕み始めている事に懸念を表明する。そして、なぜ小規模なユダヤ社会を代表した<イスラエル•ロビー>が合法的プロセスを経て、不釣り合いな影響を与えうるかをその組織力から説明する。Ⅱでは、イラク戦争などの事例から、<イスラエル•ロビー>の言説が、いかに米国の中東における対外政策を規定するかを具体的に説明する。驚くべきは、イラク戦争がイスラエルの安全保障の観点からなされたものだという主張か。
『親イスラエル』言説に見る「神学的」で「人道的」な論調に対し、米国の利益を最大化するために採りうる手段を提示し、新たな議論が成されるために提起された書である。
評価—☆4
上下で優に600ページを超える本書だが、文体について非常に平易に書かれている点が良く、論理展開に一貫性があり、専門用語は無く非専門家にも分かりやすくなっている。直接的に扱っている内容は、政治学上の利益団体(圧力団体)という狭い範囲の対象であるが、それにとどまらない内容の濃さがある。米政治及び外交政策の決定過程を描いた学術本であり、また米国社会のタブーとしてのイスラエルに関する言論空間(言論の自由)を広めるための挑戦的書でもある。
フクシマでも明らかになったが、学者がしばしば、権力に都合のいい内容を書く事が多い中、出版された経緯(当初米国では論文を掲載出来ず、最初に英国で論文発表された事)や本書によって被る圧力(既に反ユダヤ主義のラベルを張る勢力が多数いる点)を考慮するとそのスカラーシップに敬意を与えるべきだろう。
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理論展開が非常に丁寧で隙がない。
主張が書きっぱなしになっておらず、
必ず意図するところを細かく説明している。
読者を程よくリードしてくれるため内容を無理なく理解でき、
問題がどこにあるかをスッキリ把握できる良書。
イスラエル/パレスチナ関連の本を読む際に必ず現れる
イスラエルロビーについて知りたいのであれば、
読んで損は無いと感じた。第二部も楽しみ。
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[ベンチ裏の「最強」]米国議会や行政府、さらには出版業界に至るまで、「イスラエル・ロビー」とされる存在が幅広い影響力を誇っていると提起した作品。その内容から、アメリカやイスラエルを始めとして、国際的な議論と関心を巻き起こしました。著者は、シカゴ大学教授のジョン・J・ミアシャイマーとハーバード大学教授のスティーヴン・M・ウォルト。訳者は、御自身でも多数の著作を出版されている副島隆彦。原題は、『The Iseael Lobby and U.S. Foreign Policy』。
本書で指摘される「イスラエル・ロビー」の役割や、筆者の主張、そして出版後に巻き起こった賛成・反対こもごもの反響をひっくるめて、政治とは闘争の場なんだなと改めて確認させられました。「イスラエル・ロビー」の影響力の大小はさておき、日本ではなかなか巷間に知られていないロビー活動がどのようなものかを考える上でも有益な作品かと思います。
また、この作品を読む際には「イスラエル・ロビーが強い」→「米国の国益が損なわれる」ではなくて、「米国の国益が損なわれているのはなぜか」→「イスラエル・ロビーが強いから」という方向に主張の方向性が構成されている点を留意する必要があると思います。それ故に、著者両名の本当の関心はアメリカの国益(及びそれにほぼ必然的に関連することになるイスラエル)とそれに見合う外交政策の再定義ではないかと感じました。
〜もし<イスラエル・ロビー>が現在のように強力でなければ、米国の中東政策は大きく違ったものになっていただろう。もしくは<イスラエル・ロビー>が違ったアプローチを米国政府に求めていたなら、米国の中東政策は異なったものになっていただろう。結果は米国の国益により適ったものとなっていただろうし、イスラエルの国益にも適ったものとなっていたに違いない。〜
訳者がなんで本作を訳したか(あとがきで記されています)も要注目かと☆5つ
(注:本レビューは上下巻を通してのものです。)