紙の本
刻々と新しくなっていく遺跡の謎。
2016/03/02 01:12
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投稿者:色鳥鳥 - この投稿者のレビュー一覧を見る
時間を逆行しているとしか思えない謎の遺跡。その真実を調査していたヘシュケが巻き込まれた宇宙規模の大事件とは・・・。
タイトルどおり時間衝突の、謎解きに関しては、どうも、何かごまかされている感じ満々で、読みながら唸ってしまいましたが、まるで物質と反物質みたいに、時間同士が衝突するという、アイデアがすごい。さらに、そのアイデアを矮小化しちゃわない、スケールの大きな人種&異星人が入り乱れる生臭い感じの世界に圧倒されました。特に中国人コロニーの存在感は、時間の謎解き以上にインパクト大で、生産レトルトと娯楽レトルトって・・・どうなっているんだ、そのつなぎ目はー!? 時間を制御できる彼らは、罪人に対して与える罰が、地味におそろしくて、個人的にはこちらの発想のほうに度肝を抜かれました。
紙の本
マニアのアイドルでは終わらない
2003/03/19 00:35
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投稿者:kokusuda - この投稿者のレビュー一覧を見る
見かけは不恰好なのにチョコマカと素早いブルテリヤのような
SFです。
SFの持つ異世界の感覚、論理のアクロバット、知的な冒険。
この作品にはその全てがあります。
異星人の襲撃により、文明の遺産がことごとく失われた
はるか未来の地球。
異星人が残した遺跡の調査を進めていた考古学者ヘシュケのもとに、
ある日、驚くべき資料が届けられた。
300年前に取られた1枚の写真。
そこには現在のものよりもはるかに古びた遺跡の姿が写っていたのだ!
これはなんらかの詐術か、それとも遺跡が新しくなっているとでもいうのか?
異星人が残したとおぼしき時間旅行技術を秘密裡に習得し、
タイムマシンを開発していた彼らは、300年前の過去に赴くが…?
(文庫巻頭解説より)
新しくなる遺跡、人種差別政策の独裁政権、入り乱れる時間線。
時間線の中を過去から未来へではなく斜めに横切る超知性体。
中国人の太陽系外コロニー、時間理論の工業的応用…
怪しげで魅力的なアイデアが詰まってます。
相対論と量子論の統合から導かれる推論の一つである虚時間。
それを出発点にして惜しげも無くアイデアを詰め込んだ作品です。
個人的には作品内の虚時間の数学的展開には疑問もありますが…
サイバーパンクの旗頭スターリング氏が師と仰ぐベイリー氏だけあります。
小説としては難解でストーリーや論理の展開に難があります。
しかし、ヘンテコな理論を分かった気にさせる。
読者を煙に巻いてしまう。
だまされている気がするが、どこが嘘なのか良く分からない。
一筋縄ではいかない作品です。
ディック氏の作風と似ていますが、論理やストーリーに破綻はありません。
最初に書いたように論理のアクロバットに振り回されて独特の読後感です。
ベイリー氏は「マニアのアイドル」と呼ばれているようです。
納得できるような読後感です。
しかし、マニアじゃなくともSF上級者には先の読めない展開はお奨めです。
紙の本
編集部コメント
2003/03/03 20:05
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投稿者:東京創元社編集部 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『SFマガジン』ベストSF1990 第3位!
英国SF界にこの人ありと謳われた鬼才作家ベイリー。日本でも『カエアンの聖衣』をはじめとして人気を博し、ファンの絶大な支持をうけたアイデア派の雄。その彼が、空前絶後の時間理論に挑んで並み居るマニアをうならせた最高傑作が本書です。日本版序文を執筆しているのは、なんと『スキズマトリックス』のブルース・スターリング! 本書も星雲賞受賞作です。
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某知人が勧めていたので手にとってみた一冊。
読み始めの頃は時間SFというよりも、種族差別だとかを詳細に書いたものかと思っていたが、
意外に独自の時間論を展開しており、物理学と照らし合わせると納得できない部分も多く、
どうにもファンタジー半分と言う目で見てしまうが、そこを割り切ってしまえばかなり面白い。
広げた風呂敷を畳んではいないが、綺麗に解いているので
中盤からはページを捲る手が止まらなくなる。
――ただ、一つ残念なところをあげるなら、物語り自体は面白いのだが、
それに関わってくる人物の詳細な心理描写が登場人物に因って足りない印象を受ける。
もう少し、掘り下げて、葛藤を絡めたほうが良かったのでは、と。
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謎の異星人との戦闘状態に突入している遠未来の地球。異星人が地球に残した遺跡を調査している考古学者のロンド・ヘシュケは、300年前に撮影された遺跡の写真が現在の遺跡より遥かに古びていることに気づく。まさか、遺跡は年を経るごとに新しくなっているというのか?折しも異星人の時間旅行機が捕獲され、ヘシュケは時間旅行機を使った極秘任務を命ぜられるが・・・
わはははは、すげー!面白い!
何がスゴいって、いきなりブルース・スターリングが序文を寄せてるってところからブッ飛んだんですがヽ( ´ー`)ノそんなのはまだ序の口で、ベイリーなのにちゃんとストーリーがまとまっているところに一番感動しました(笑)いや、だって「禅銃」がヒドかったんだもん(^_^;
さてこのSF、ジャンル的には「時間SF」なわけでして、現代の最新理論物理学においてもその本質が解き明かされていない「時間」をネタに古今東西の大御所SF作家たちが腕をふるってきたジャンルでもあります。時間とは何か?空間とは何か?そんな哲学的ともいえる問いに、奇才・ベイリーが「こんなこと考えちゃったんですけど〜」と答えたのがこの作品。ストーリーはタイトルそのもの、時間衝突。これが比喩でもなんでもなくて、何と異なる時間線を持つ世界が正面衝突しちゃうという実にそのままな話なんですねー。・・・どこからそういう発想が出てくるんだろうな、この人は・・・(^_^;
そんなわけで、作中には奇妙奇天烈な時間理論が登場し、これが重要なファクターとなって物語が進んでいきますが、この理論が理解できなくてもハッキリ言って読み進めるのに何ら支障はありません。つーか、理解できる方がおかしい(笑)時間が衝突する瞬間の描写も出てくるんですが、理論と全然噛み合ってないし。この作品の楽しみ方は、そんなトンデモ理論に気持ちよく振り回されつつ、それをネタに展開される一大スペクタクル(ドタバタ劇といった方が正確かもしれないヽ( ´ー`)ノ)で手に汗握る、といったところではないかと思います。絢爛豪華で何でもありのベイリー節は本作でも健在。
それに、「禅銃」でもそうでしたが、この人はユニークな社会構造を描かせたら超一流ですね。とんでもないんだけど妙に説得力があるベイリー流未来社会は、実は人間の現実の歴史を極端にカリカチュアライズして未来に置き換えたもの、と言ってもいいでしょう。本作において未来の地球を支配している軍事政権「タイタン」は、誰がどう見ても某第三帝国以外の何物でもないですしヽ( ´ー`)ノ突き抜けた共産主義的コロニー国家を維持しているのが中国人の末裔という設定は本気なのかシャレなのかヽ( ´ー`)ノこの二つが絡んだら大変なことになるんじゃないの、と思ったら何だかよくわからん自己チューな「超知性」が登場して無理矢理話を纏めちゃう、というヽ( ´ー`)ノよくこんなヤバいネタ使えるよなぁ。と妙なところで感心しつつも、決してハッピーエンドとは言い切れないほろ苦い結末を読むと、ベイリーはちゃんと「わかって書いてる」ということがしみじみ理解できます。現実の歴史の汚点をもネタの一つに昇華してしまうベイリーの力技、恐るべし。
しかも、巻末の解説において、ベイリーのトンデモ理��は最新理論物理学の世界ではあながちトンデモとは言い切れないらしい、ということが明かされ、最後の最後で鮮やかに背負い投げを決められた感じです。大森望氏のあとがきも超名文。ワイドスクリーン・バロックへの愛が溢れています。序文から解説まで丸ごと一冊、無駄なところが全くありません!(笑)やっぱりベイリー面白い!本気で「カエアンの聖衣」も探します、ハイ。
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未来から過去に向かって進む時間と、過去から未来に向かって進む時間があることが分かった、衝突はあと三百年後、さあどうする!という構想を基本に、白人至上の差別社会な地球やら、自在に時間を操り宇宙で暮らす超ハイテク中国人コロニーやら(鍼治療で言語もすぐに習得できる!笑)、抵抗組織やら、のSFガジェットが駆使されたお話。
ベイリーは、禅銃についてけなかったので、若干避けてた作家。大森望が絶賛してたので読んでみた。
が、うーん…。
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読みたかった本。古い本ってことが随所に出てくる。マシンガンとか白人至上主義とか。
地球に複数の生命体が存在し、互いに互いが未来から侵略してくるという時間軸逆転発想が面白いのだが、中国人星間居住区だとか、スーパー知性体だとか言ったところが少し違和感があり、大きな感動がなかったのが残念。
少しがっかり気味のオールドSF探訪だったな。
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「時間封鎖」がすっごくおもしろかったので、SF者になれちゃうかも、と調子づいて読んでみたらば。むむー。SFの壁は厚かったかも。つまらなかったわけじゃないんだけれど、わたしには高度だったかも。時間の理論とか説明されても、時間のことなんて普段考えたこともないのでなにがなんだか。SFをたくさん読んでいる人は基礎知識があるんでしょうかね。解説とか見ると、ものすごいアイデア、驚くべき発想、みたいなことが書いてあるんだけれど、ほかにSFをあんまり読んでないので、これがそんなに新しい、今までなかったようなアイデアなのかどうかはわからなくて。SFなんだもん、これくらい普通では?と、驚きがなく。あと、たぶん、未来すぎて(設定は西暦にすると何年くらいなのか?3000年くらい?←めちゃめちゃ適当ですが。2100年くらいだとわたしもついていけるような気がするんだけど)、もはや想像できないというか、わけわかなんないからどうでもいいや、というか。おもしろかったところは、中国人が先祖と思われる高度文明の異星(もう名前も忘れたし、説明もできん)に行きついたときに、鍼や気功みたいな技を使ったりしてその星の言語をすぐにマスターさせるとか、そういうところ。わたしはやっぱり細部が好きなので。もっと、たとえば、一生働かないで遊ぶばっかりの「娯楽レトルト」での詳しい生活ぶりとか、そういう細部が読みたいなと思うわけで。
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面白い時間ネタを思いついたので書いて見ました。ネタ以外はおまけ!ってな感じのある意味SFらしいSF。個人的には嫌いじゃない。物語的にはツッコミどころ満載(少なくとも説明不足)とは思うのでストーリー重視の人にはおすすめしない。逆にアイデア重視の人には面白いんじゃないかな。
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考古学者ヘシュケのもとに届けられた1枚の古い写真。そこに写された異星人の遺跡は、現代のそれと比べはるかに古びているのだった。遺跡は時間が経つにつれ新しくなっているのか!?
あらすじから感じたファースト・インプレッションの斜め上を遥かに超えた物語でした。
『時間線が衝突する』
突飛なアイデアで序盤を飾った当著は、それだけでなく、奇妙な進化を遂げた遠未来の文明だとか、中国人(なぜ中国人なんだ?)が支配するレトルト・シティだとか…
色んな奇想発想を詰め込んでありまして、だからこそなんかB級映画(決して低予算の意ではない)を鑑賞しているみたいで、いや面白かったですよ。
大ボラ野郎!
って初めて思ったSFは、A.E.ヴァン・ヴォークト「イシャーの武器店」だったんだけど、ベイリーさんあなたの方が上手でした。
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時間というテーマに対して、物語の確信となる興味深い理論。それを補強する惜しみ無く使われるアイディア。ワイドスクリーンバロックと呼んでいいのだろうか?面白く一気に読めた。
しかし奔放に放たれた様々な物語の決着点に不満が残る読者もいるのでは?と思わせる。
それはさておき、ホカである。ホカ、語りてぇ。語るべき描写もないけど広げてぇ、ホカ。
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異星人が遺したとされる遺跡を調査していた主人公は、遺跡がどんどん新しくなっていることに気がつく。過去から未来へと生きる我々以外に、未来から過去へ生きる文明があるらしい。そしてそれぞれの時間は、あと数百年で衝突してしまう状況にあった、という話。
こんなのよく思いついたなぁ。こういう、考えるとくらくらするような果てしなさがSFの醍醐味だよね。
未来から過去に生きるイメージはまだなんとか浮かぶけど、後半に出てくる「斜めの時間に生きる存在」っていうのが、僕の頭ではまったく想像できなかった。
ただ、ラストは文字通りの「機械仕掛けの神」がなんとかしてくれちゃうので、未来と過去とを壮絶に行き来するバトルみたいなのはあんまりないのが残念。
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タイトルに「時間」が付いているが本書において「時間」はガジェットの一つでしかなく、一般的な時間軸の移動をテーマとするSFとは少し毛色が違う。
それどころか「時間線」という新たな概念を持ち出してそれを縦横無尽に駆使する。
時間は過去から未来へ向けてのみ流れるのではなく逆行する流れもある。さらに「前後方向」しか存在しない一次元的な存在ではなく支流という二次元的な存在も言及される。
ただ、本書の主要なテーマのひとつが「人種差別」であることには注意したい。
白人による中国人の蔑称「チンク」という語が頻出するのだが、アムラック、ロリーン、ウルキリといった人種がどういった人種的特徴を持つのかがよくわからない。
欧米人だったらわかるとでも言うのだろうか…。
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アイディアはすごいが、小説として書ききれているかというと、ちとイマイチかも…。「永劫回帰」の方も読み直さなくちゃ。
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『カエアンの聖衣』と 『禅銃』にはぶったまげた。以来、SFともしばらくご無沙汰していたので、その後に翻訳されたバリントン・J・ベイリーは読んでいなかった。気がついたときには、ほとんど絶版。ようやく生き残っていたのが『時間衝突』。
時間を過去から未来に伸びるひとつの直線と考える。その中途に「現在」があって、秒速1秒で未来に進んでいる。ところが、この現在から400年先にも別の「現在」があって、その「現在」の地球には人間とは似ても似つかない生物が文明を築いているのだが、彼らの「現在」はわれわれにとっての未来から過去に向かう方向に進んでいる。つまりわれわれの「現在」に向かって秒速1秒で迫ってくる。200年後にはこの「現在」と別の「現在」が正面衝突することになる。これが本書冒頭4分の1ほどで明かされる基本アイディア。しかも、現在のみが「生きており」、過去は存在していても「死んでいる」し、未来に生命は空っぽという設定は、物理学的時間に依拠したSFを読んできた読者にはかなりぶったまげる考想かも知れない。かつてのSF少年は哲学的時間論にも親しんだので、私には抵抗はなかったが。
ただその後、このメイン・アイディアは大変な災厄という以外に生かしようがなくて、時間にも3次元あるとか、時間と生命とが密接に結びついているとかいったアイディアと、ナチスばりの人種差別国家によって話は駆動されていく。
恐らくベイリーにも「現在」と「現在」が正面衝突したら何が起こるかわからなかったのだよ。小説中には時間が止まるとか書いてあるが、ぶつかって跳ね返るとか、きりもみ状態になって「現在」がどこかへ飛んでいくとか、いろいろ馬鹿げたアイディアはあるではないかと思いつつ、ともあれ「時間衝突」なんてことを考え出したベイリーに拍手。