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紙の本
薄桜記 改版 (新潮文庫)
著者 五味 康祐 (著)
旗本随一の遣い手と言われた丹下典膳は、はからずも左腕を失い市井の浪人となった。一方、一刀流堀内道場の同門である中山安兵衛は、高田馬場の敵討で剣名を挙げ、播州赤穂藩浅野家の...
薄桜記 改版 (新潮文庫)
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商品説明
旗本随一の遣い手と言われた丹下典膳は、はからずも左腕を失い市井の浪人となった。一方、一刀流堀内道場の同門である中山安兵衛は、高田馬場の敵討で剣名を挙げ、播州赤穂藩浅野家の家臣・堀部安兵衛となる。立場は異にしても、互いに深い友情を感じる二人。だが、浅野内匠頭の殿中刃傷は、二人の運命をさらに変転させた。時代小説界の巨人が、侍の本分を貫く男たちを描いた名篇。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
おもしろい
2016/12/07 21:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひのえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
どの時代でも頭がいい人は強いですね。武士の話を読んでいると剣道をしたくなります。やっぱり武士はかっこいいです。
紙の本
五味流の奇想に基づく古風な美学は読者を選ぶ
2012/08/13 22:57
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近TVドラマになった物語である。
ドラマにはあまり興味がないが、
題に聞き覚えがあって調べてみたら原作は五味康祐の小説で、内容にも興味を覚えたので読んでみた。
五味康祐といえば、かつて芥川賞も受賞した時代小説の重鎮である。
ただその感覚が今でも通じるのかどうか。
何しろ『薄桜記』が発表されたのは昭和30年代なのだし、
現代においては読者を選ぶ作家といえるかもしれない。
五味は、たとえば宮本武蔵は二人いた、という『ふたりの武蔵』のように、
歴史的奇想とでも言おうか、史実として一般に知られることを大胆に改変して見せるのが得意だが、
なんと本書は、有名な丹下左膳と赤穂浪士の堀部安兵衛を強引に組み合わせて見せる。
赤穂浪士随一の剣客堀部安兵衛と、吉良方につくことになる隻腕の達人丹下典膳とが
不思議な縁あって微妙な友情に結ばれ、また別の縁あって敵味方で戦う、という話。
だが話はけっこう横滑りする。これもまた代表作とされる『柳生武芸帖』でもお馴染みの五味の特徴だ。
横滑りだけでなく、話はとかく冗長になるから、
全編をきっちり読みたいタイプの読者は、難儀するかもしれない。
赤穂浪士の討ち入りに関しては講釈が長い。要するに俗説にいろいろ異を唱える。
これを語りたいがために小説を構想したのではないかと思われるほどだ。
そうした興味があればよし、そうでないとなかなか丹下の話が進まないので苛立つかもしれない。
いっそ斜め読みするのも手だろう。
美男美女を配して、現代の感覚からするといささか古風な娯楽性があるのだが、
古風といえば、そもそも中心人物たちの行動原理が古風である。
武士道と呼ぶのか何なのか、侍の考えはときに信じがたく、
あるいはそれを超えて理解しがたい。
これは小池一夫原作のマンガなどにもいえることだし、
そもそも忠臣蔵の話についていけないという読者はあると思う。
五味の小説の場合はさらに、行動の裏にある信念なりこだわりをあえて明言せずに
謎として展開したり、暗示で話を進めたりすることが多いからややこしい。
初期の傑作、「柳生連也斎」の決闘の結末も曖昧なものだった。
こうした点も好みが分かれそうで、馴染めない読者がいても不思議はない。
しかしいったんそうしたものを受け入れることが出来さえすれば、これほど切ない話もない。
重ね重ね悲劇へと導びかれる丹下も切なければ、彼を慕う人々の報われない思いも切ない。
そうした切なさ、さらにいえば美学に浸れるかどうかだろう。