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紙の本
時雨みち 改版 (新潮文庫)
著者 藤沢 周平 (著)
にがい思い出だった。若かったとはいえ、よくあんな残酷な仕打ちが出来たものだ。出入りする機屋の婿養子に望まれて、新右衛門は一度は断ったものの、身篭っていたおひさを捨てた。あ...
時雨みち 改版 (新潮文庫)
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商品説明
にがい思い出だった。若かったとはいえ、よくあんな残酷な仕打ちが出来たものだ。出入りする機屋の婿養子に望まれて、新右衛門は一度は断ったものの、身篭っていたおひさを捨てた。あれから二十余年、彼女はいま、苦界に身を沈めているという…。表題作「時雨みち」をはじめ、「滴る汗」「幼い声」「亭主の仲間」等、人生のやるせなさ、男女の心の陰翳を、端正な文体で綴った時代小説集。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
帰還せず | 7−43 | |
---|---|---|
飛べ、佐五郎 | 45−70 | |
山桜 | 71−95 |
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紙の本
山桜
2022/09/22 21:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るい - この投稿者のレビュー一覧を見る
篠田三郎さんが、山桜を朗読なさるとのことこを知り、聴きに伺います前に読みました。
蝉しぐれなど、以前、読みましてから、久しぶりの藤沢周平の世界に触れました。
何処か優しく控えめな文章が好きです。
最後に、野江が幸せになるところも。
人間、本人の直感というか、本当に気持ちが落ち着くところにおさまることが、一番幸せに生きられるとこの山桜で、改めて、感じました。
紙の本
いちばん「山桜」が好きです。
2019/04/11 06:31
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
どれも良かったですけど、できればハッピーエンドが嬉しいです。
捕らわれている弥一郎が無事に戻ってくるかどうかは書かれていませんが、たぶん山桜の縁は幸せを運んでくると思います。
紙の本
読者に結末を託した全11編の短編小説集
2009/12/02 19:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を読むと、ほとんどの作品に明確な結末を描かれていないことに気づく。
しかし決して中途半端なまま、結末を読者に丸投げしているのではなく、着地地点を予想できうる踏み切りを行い、その上で着地を読者に託していると感じた。
その結果、着地地点は皆似たような所になるが、着地方法が異なることでさまざまな味わいが生まれるように思う。
人によっては尻切れトンボとも取れる終わり方をしているように思えるかもしれないが、この結末を読者に託す方法は、暗記してしまうほどに読み返し物語が自分の中に溶け込んだとき、読んだ者が持つ思いや考えが登場人物たちの心情と融合し、読者それぞれの結末を与えてくれるという作用を持つものだと思う。
もし物足りないと感じる人は何度か読み返してみてください。
そしてこれらの作品を読み終えたとき、先日読んだ谷崎潤一郎著「文章読本」の中で『含蓄』について解説されていた『あまりはっきりさせようとせぬこと』、『意味のつながりに間隙を置くこと』という二つの指針が思い出された。
この解説は『饒舌を慎むこと』を分解して分かり易くしたもので、本作品の大胆とも思えるはっきり書かない結末は、これを最大限に利用した作品のように思える。
『帰還せず』
公儀隠密の塚本半之丞が突き止めた、山崎が隠密の潜入先から戻らない理由。
情にからまれた山崎の刃が半之丞を襲う。
『飛べ、佐五郎』
逃亡生活の果てにツキが回ってきた敵持ちの新免佐五郎。
世話になっていたおとよに逃亡生活の終わりを告げたことが運のツキだった。
『山桜』
二度の結婚に失敗した野江。心には山桜の枝を手折ってくれた一人の男。
遠い回り道をした野江の辿り着くべき場所がある。
『盗み食い』
労咳持ちの弟弟子・助次郎を心配し、しばしば面倒を見ていた政太。
政太の目を掠めて助次郎が盗み食いしたものは……
『滴る汗』
公儀隠密の森田屋宇兵衛の耳に入った、城下の隠密潜入が知れたという情報。
自分に違いないととった行動が、滴る汗となって彼を襲う。
『幼い声』
おきみが人を刺したと聞いた櫛職人の新助に、幼い頃おきみへ優しくしてやれなかった悔恨が貫く。
出獄したおきみが遠ざかる姿とともに、新助の心に響いた幼い頃のおきみの声が遠ざかっていった。
『夜の道』
昔さらわれた娘ではないかという女が、記憶にないおすぎに付きまとう。
おすぎが亭主と喧嘩して家を飛び出し、後を追いかけてきた子供を受け止めたとき、夜の道の記憶が甦った。
『おばさん』
亭主に先立たれ一人寂しく暮らしていたおよねが掴んだひとときの幸せ。
幸せを拒んでまでおよねが貫いた意地の結末は……
『亭主の仲間』
亭主が連れてきた日雇いの仲間の安之助。安之助は気持ちのいい男だった。
日がたつに連れ、金を無心しだした安之助を追い払った代償が二人を襲う。
『おさんが呼ぶ』
度をこえた無口のおさんが心に抱える辛い思い。村のために江戸で懸命に働く兼七がおさんの心を溶かす。
失意のうちに村に帰る兼七の姿はおさんを解き放ち、おさんは兼七を呼び止める。
『時雨みち』
大店の機屋に婿入りした新右衛門は、昔別れたおひさのことを聞き、胸に苦汁の思いが溢れた。
裾継ぎで再会した新右衛門の心に、別れたときの後悔とおひさの泣き声が去来する。
ところで映画化もされている『山桜』は、今回とても楽しみにしていた作品で、映画の光景を思い浮かべながら読んだ。
映画の光景を思い浮かべながら読んでも違和感がなかった映画『山桜』には、藤沢小説の一節が浮かんでくることが度々あり、今まで見てきた藤沢周平原作の映画の中でもっとも好ましく感じられた作品でもある。
映画では原作に描かれている野江の心情が的確に表現されており、原作『山桜』と映画『山桜』に感じられる印象に差異がない。
しかし映画『山桜』は原作にまったく忠実ではなく、視聴者のための工夫が見受けられる。
それが前述した「結末を読者に託している」部分で、原作のラストよりもう少し先の場面まで描き、視聴者に着地方法を見せている。
原作『山桜』を読み砕き、監督なりの着地方法を描いた映画『山桜』は、原作を読んでもガッカリしない作品だと思う。