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紙の本
「言語技術」が日本のサッカーを変える (光文社新書)
著者 田嶋 幸三 (著)
日本サッカーに足りないのは自己決定力であり、その基盤となる論理力と言語力である。公認指導者ライセンスなどのカリキュラムで始まった「ディベート」「言語技術」といった画期的ト...
「言語技術」が日本のサッカーを変える (光文社新書)
「言語技術」が日本のサッカーを変える
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商品説明
日本サッカーに足りないのは自己決定力であり、その基盤となる論理力と言語力である。公認指導者ライセンスなどのカリキュラムで始まった「ディベート」「言語技術」といった画期的トレーニングの理論とメソッドを紹介する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
田嶋 幸三
- 略歴
- 〈田嶋幸三〉1957年熊本県生まれ。筑波大学大学院修士課程体育研究科修了。日本サッカー協会(JFA)専務理事。JFAアカデミー福島スクールマスター。
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「論理力」と「言語力」こそ、いま最も日本人に必要なスキルである。カタカナ語の「ロジカルシンキング」を一過性の流行に終わらせないために必要なメソッドとは
2010/02/23 16:38
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本のサッカーを世界水準に引き上げるには何が必要なのか。それはずばりいって、選手の個人としての「自己決定力」であり、その基盤となるのが「論理的」に思考し、それを的確に表現できる「言語力」である。著者は、自らの現場(フィールド)であるサッカー界を舞台に、「言語技術」や「論理力向上」をともなった「サッカー選手の育成プログラム」の取り組みの実際を具体的に紹介している。
高校・大学時代そして実業団時代には選手として活躍した著者が、指導者(コーチ)になるため1980年代前半に留学したドイツのケルンで体験したものは、子供たちのサッカーに「バカ蹴り」がない!という事実だった。
「バカ蹴り」とは、監督にいわれるがままに無意味な大蹴りをして、ボールを遠くにクリアすること。ドイツでは10歳の子供たちでも、「バカ蹴り」はせず、自分が出したパスの意図を、コトバによって言い合いをする・・・。著者にはこれは大きなショックだった。これこそが、日本とドイツもその一つである欧州サッカーとの大きな、そして埋めがたいまでのギャップだったのだ。個人として「自己決定」したうえで身体技術を駆使し、自らの行為を「論理」で説明できるプレイ。これが日本のサッカーには欠けているのだ、と。
なぜなら、「サッカーは、スピーディーなゲームの最中に究極の判断を求められるチームスポーツであり、刻々と変化していく局面に対してその都度、自分の考えを明確にし、それを相手に伝えていく必要性が生じるからです。こうした姿勢や対応能力は、日本人がこれまで最も苦手にしてきた領域だといえるでしょう」(P.15)。
著者の問題意識をもとに始まった、指導者向けの「ディベート」訓練と「言語技術」訓練。個人としての選手のもてるチカラを最大限に引き出し、チームのチカラを勝利に向けて導いていくのが、「論理的」に説明し、納得させる能力をもつ指導者のチカラなのである、と。そこにあるのは選手どうし、選手と監督、コーチとのあいだで交わされる、論理と論理のぶつかりあいである。
そしてユース向けの中高一貫コースでの「言語技術」訓練。論理力と言語力を鍛えるためには、中学生から「言語技術」を生活習慣化させることが必要だと、著者は実践をとおして主張している。
本書は、「言語技術」や「論理力向上」をともなった「サッカー選手の育成プログラム」の取り組みの実際を具体的に紹介しているが、サッカー以外の世界でも、日本人が真剣に取り組むべき方向性を指し示してくれたと受け取りたい。
全体をとおして繰り返しの表現がやや多いのが気にはなるが、それは著者の情熱のほとばしり捉えるべきだろう。また「エリート養成」という表現が鼻につくという人も多いだろうが、これは真の意味におけるエリート、すなわち一流の人材であってかつ、いずれ人の上に立つことになる指導者(リーダー)と言い換えて理解してもいいだろう。
「ロジカルシンキング」というカタカナ語を一過性の流行に終わらせないためにも、「言語技術」は生活習慣化していかねばならない。これによって、国際水準で張り合っていける日本人は必ず育成されるはずだ。
この本はまた、新しい時代に求められる「リーダーシップ」とは何かを示してくれる本でもある。すぐにでも応用可能なメソッドの実例が紹介されており、サッカーだけでなくビジネスでも、またその他どんな世界でも、一流を目指し、指導者(リーダー)を目指す人、そしてその父兄、教育者、そして企業の研修担当者にとっても必読書であるといえよう。
ぜひ一読を薦めたい。