本気！ １ （秋田文庫）

　やくざものの多い立...

ジュンク堂書店大阪本店さん

　やくざものの多い立原あゆみ作品の中でも最も登場人物が純化しており、続編が蛇足ではあるが傑作と呼ぶにふさわしい作品。当初のチンピラ然としたキャラクターから様々な人々の死を経て深化していく主人公・白銀本気（まじと読ませるんだからスゴい）。
　ヒロイン・本庄久美子とのどこまでも透明な純愛と策謀渦巻く黒社会の緊張感との対比、本気の精神に打たれ変わっていく周囲の人々。どこまでも悲しくて優しく、少年誌に連載していたのが信じられない程だ。
　東京に転勤していたとき舞台のモデルを探して自転車で旅したが、江戸川の向こう、船橋の京成「大神宮下駅」近くにあるのを発見した時は狂喜した。あの「赤橋」、あの「踏切」…。ああ、たまらない。
　男女の枠を超えて男が男に惚れ、男が女の為に死んでいく恋愛ドラマの隠れた金字塔だと思う。やくざがどうの風俗嬢がどうのというのはその〈衣装〉に過ぎない。ただし実写は最悪である。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大阪本店　黒書店員　Ｄ