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紙の本
証言沖縄「集団自決」 慶良間諸島で何が起きたか (岩波新書 新赤版)
著者 謝花 直美 (著)
何が約600名もの人びとを死に追いやったのか−。戦争末期、戦場となった沖縄の島々で、住民の「集団自決」が起きた。これまで黙して語らなかった人を含む、凄惨な戦争の生存者たち...
証言沖縄「集団自決」 慶良間諸島で何が起きたか (岩波新書 新赤版)
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商品説明
何が約600名もの人びとを死に追いやったのか−。戦争末期、戦場となった沖縄の島々で、住民の「集団自決」が起きた。これまで黙して語らなかった人を含む、凄惨な戦争の生存者たちが、当時の実相や現在の思いを証言する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
謝花 直美
- 略歴
- 〈謝花直美〉1962年沖縄県生まれ。1990年沖縄タイムス入社。社会部、通信部、学芸部などを経て、沖縄タイムス編集委員。著書に「戦場の童」がある。
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現代史としての「集団自決」
2008/04/10 14:48
14人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「ベストセラー」と称される資本主義下におけるセールスの量を誇る言葉には全くそぐわないものの、しかし、ほかならぬ今、多くの人──ことに、本島に住む「日本人」──に読まれるべき書物であるに違いない。「集団自決」とは、第二次世界大戦末期、沖縄で「軍命」によって引き起こされた「強制集団死」を指すが、この問題は古くて新しく、そこに、証言を集めた本書が、ほかならぬ今、世に問われることの状況介入的な意義がある。
というのも、「集団自決(強制集団死)」は、本書に収められた(初めての証言も含めて)多くの当事者の言が示すように、「軍命」によって引き起こされた悲劇であるにも関わらず、そのこと(軍強制)が、2007年3月の教科書検定によって、教科書記述の削除というかたちで歴史から抹消されようとしているからに他ならない。本書は、こうした動きに対する「沖縄の怒り」の1つの具現化である。沖縄タイムスのキャンペーンをもとにする本書の大半を成す「集団自決」に関する証言は、「記憶/記録」の恐ろしさを如実に示してあまりあり、その体験の個別性・具体性において、「歴史修正主義」的なものはもちろん、大文字の歴史記述にも、そのリアリティと説得力で再考を迫らずにはいまい。しかも、著者が「あとがき」にさりげなく記すように、これですら、「あまりにも惨めで語ることができない」という多くの当事者の声/記憶が取り込まれてはおらず、その意味で、氷山の一角ではあるのだ。裏返せば、当時の事実としては、より悲惨な状況が、より広範に引き起こされていたと考えるのが順当であるようなのだ。そして、今回の教科書検定問題によって、初めて「集団自決」の記憶を語り始めた人が少なからず存在することを想起すればなおのこと、この問題は、単に「過去の戦争の反省」の一部を成すテーマに留まらない。むしろ、「過去の戦争」に関して、現実的にも思想的にも先延ばしながら、あわよくば忘却し、抑圧=抹消してしまおうとしてきた「負の遺産」の、あまりにも正当な回帰であり、その意味で、すぐれて今日的な、まさしく「現代史」の要所ですらあるのだ。
この問題に向き合うことなく、「戦後」も「戦後」の上に立つ「現在」も安定した形では語れないだろう。本書は、本土を中心とした高度経済成長を柱とした戦後日本史が砂上の楼閣であった可能性すら示唆しながら、「過去=現在」への真摯な対応を求めてやまない。もちろん、例えばわれわれが明日から「運動」をすることは現実的ではないかもしれないが、そうであればなおのこと、本書が多くの人の目にふれ、読まれることで、認識の変革からはじめなければならないのだ。そこに本書の、さしあたりの、しかし重大や役割がある。