- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.6
- 出版社: 青土社
- サイズ:20cm/445p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-7917-6411-2
- 国内送料無料
紙の本
実録三国志
後漢王朝末期の爛熟腐敗から三国鼎立までの道を犀利に説きあかし、新興士族社会の誕生という壮大な歴史のうねりを再現。天下平定の夢と理想、そして陰謀詭計の細部を活写し、背後に潜...
実録三国志
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商品説明
後漢王朝末期の爛熟腐敗から三国鼎立までの道を犀利に説きあかし、新興士族社会の誕生という壮大な歴史のうねりを再現。天下平定の夢と理想、そして陰謀詭計の細部を活写し、背後に潜む精神の葛藤と非情な宿命を描ききる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
于 濤
- 略歴
- 〈于濤〉1970年代山東省生まれ。山東大学歴史与文化学部卒業。歴史学博士。魏晋南北朝史専攻。中華書局歴史編集室主任。
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後漢末から三国初期までの政権中枢の動きを克明に追う好著
2008/08/13 23:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
三国時代の幕開けはいつかと問われれば、多くの方は184年に発生した黄巾の乱を挙げるのではなかろうか。曹操、劉備、孫堅といった部将が活躍し、歴史の表舞台に姿を現す。やがて洛陽での混乱に乗じて董卓が実験を握り、東方では軍事同盟が組まれて袁紹がリーダーとなるが、成果を上げられず解散。その董卓は配下の呂布に殺され、群雄割拠の時代が始まる。
しかし、冷静に考えれば黄巾の乱は後漢王朝にとって少なからぬ衝撃であったことは事実だろうが、それは王朝をすぐにも終焉に導くものではなかった。むしろ、それ以前から若くして世を去る皇帝が続いたことで皇帝の持つ巨大な権力が外戚や宦官に分散され、皇帝との力関係を逆転させていたことに少なからぬ要因がある。
本書は、まずこの三国前夜とでも言うべき時代が、政治的にどのような時代だったかを明らかにしている。宦官が権力を掌握していく過程、そして宦官から権力を奪おうとする官僚(士人)の動き。政権内で権力を巡っての暗闘が続くが、暗愚な霊帝は事態を収拾などできない。この雰囲気を知ることで、後漢末の群雄達の行動原理が理解しやすくなると思う。
以後、権力を握った人物たちがどのような制約の中で政治的な決断を下していったかが丁寧に説明されている。特に、触れられることの少ない大将軍何進の政権運用の狙いと限界は、漢王朝が隘路に陥り、並の方法ではそこから脱することができない状態だったことを感じさせる。
董卓政権についても、董卓が好き放題やっていたような雰囲気があるが、董卓は董卓なりに行動を掣肘されていたことが分かる。宦官対官僚の戦いから、軍人対官僚へ様相が変わっていくのである。東方で結成された対董卓軍事同盟は、結局目だった成果を残すことがなかったのだが、それも各群雄の政治的な狙いを明らかにすることで上手く説明されているのは嬉しい。
曰く、軍事同盟の中心に合った思想は、17歳で即位し、董卓によって廃された少帝を霊帝の跡継ぎとしようとする運動であり、後少帝が殺されてしまえば中心軸がなくなってしまった、ということである。確かに袁紹らは北方の劉虞を皇帝に立てようとの運動をしていたことなどからも、著者の指摘には頷かされる。
その後の曹操政権になっても、曹操が就いた魏公の制度面からの問題、跡継ぎ騒動などといった、政治権力の動きに焦点が当てられている。それにより、曹操の権力が拡大していく過程が見え、ファンには大変興味深く感じられるのではないか。
ただ、三国志と銘打ってはいるが、後漢末期の各政権の性格を追ったという方が正しい。触れられているのは曹操の息子で後漢から帝位を奪った文帝の即位直後まで。その後の明帝は勿論、諸葛孔明による北伐などには全く触れられていない。そのため、蜀漢や呉のファンにはやや物足りないかもしれない。しかし、三国志の成り立ちを知るには格好の本なのではないか。
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