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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.8
- 出版社: 早川書房
- サイズ:20cm/342p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-15-208949-6
紙の本
運命の日 下 (Hayakawa Novels)
第一次大戦は終結した。だがボストンでは、警官の待遇改善に意欲的だった市警本部長が急死し、ダニーの運命は大きく変化する。強硬派の後任の本部長によって、彼はスト破りの部署に異...
運命の日 下 (Hayakawa Novels)
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商品説明
第一次大戦は終結した。だがボストンでは、警官の待遇改善に意欲的だった市警本部長が急死し、ダニーの運命は大きく変化する。強硬派の後任の本部長によって、彼はスト破りの部署に異動させられたのだ。1919年のメーデーの集会の後、ダニーは暴行を受け、大怪我を負ってしまう。苦難の中で彼は、コグリン家の使用人だった女性を心から愛していたことを知った。二人は結婚し、ルーサーを含めた固い絆ができあがる。だが、ダニーの名付け親で黒人を憎むマッケンナ警部補が、ルーサーの過去を暴き出していた。マッケンナはルーサーを脅して、黒人の地位向上をめざす組織に壊滅的な打撃を与えようとする。さらに、市警の警官たちのあいだではスト敢行の機運が高まり、大きなうねりとなっていった。そしてついに警官たちはストライキを決行、ボストンは大混乱に陥る。しかも、その騒乱の先には、ダニーとルーサーにさらなる試練が待ち受けていた!動乱の時代のボストンを舞台に、壮大なスケールで描く家族と愛と友情のドラマ。【「BOOK」データベースの商品解説】
コグリン家の使用人だった女性を愛していたことに気づいたダニー。2人は結婚し、ルーサーを含めた固い絆を築く。だが黒人を憎むマッケンナ警部補は、ルーサーの過去を暴き…。壮大なスケールで描く家族と愛と友情のドラマ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
デニス・ルヘイン
- 略歴
- 〈デニス・ルヘイン〉マサチューセッツ州生まれ。「スコッチに涙を託して」で作家デビューし、シェイマス賞最優秀新人賞受賞。「ミスティック・リバー」でアンソニー賞最優秀長篇賞受賞。
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紙の本
警察という暴力機構の暴力がどうにかこうにか市民の安全を維持している。この時代のボストンはそれほどいたるところに暴力が横行する町だったんだ。今のアメリカの話ではないのだろう。
2008/12/30 19:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHKホームドラマ「篤姫」ではないが今年は「家族」をテーマにした作品がことのほか多かったような気がしている。この作品もボストン市警警部、トマス・コグリン一家の結束と崩壊をひとつの軸としている。
トマス・コグリンはこの地区の治安維持に貢献し、実力を認められている警察の幹部なのだ。家には市会議員、政治指導者、検事、市警副本部長、商工組合の幹部、銀行家たちが集い、この地区のかれらの活動が安全に円滑に行われるために必要な政策談義が行われるサロンでもあるようだ。
トマスは一家を愛するがゆえに時には鉄拳制裁をもって彼なりのルールを貫徹し子供たち、使用人の上に君臨している。妻のエレンは敬虔なカトリックでその倫理観にもとづくしつけにはトマスも口出しはできない。長男はこの物語の主人公で巡査のダニー、次男は検事補のコナー、三男に少年・ジョー、そしてダニーの名付け親のエディ・マッケンナ・市警警部補が家族同然の出入りをしている。そして厳格ではあるがトマスとエレンは全員から信頼されている。
ただし読んでいるうちにいくつかの疑問が生まれる。まずここに集う人々はいったい何を目的にして何の会話をしているのだろうか。いかにもこの一帯を牛耳る勢いに見え、使用人を雇えるような生活をしているが、市警警部という身分はきっと相当なものなんだな。家族同然のエディとはなにもの?
これらはルヘインが巧妙に仕組んだ伏線なのだが明確な説明がないだけによく読みこまないと解けない謎であろう。思いがけない事実がやがて明らかになる、ただしさりげなく………という仕掛けである。お楽しみ、お楽しみ!
なお「さりげなくあきらかにする」手法はいたるところにあって、特に主要登場人物の形象に効果的に使われている。よく読めば「へえー、そういうことだったの」と読む人が思っていたその人のイメージ、善・悪や正・不正が逆転することに気づくはずだ。
ところで、この一家の本質的なところを理解するにはボストンという町の成り立ちを押さえておかねばならないと思われる。
ジョン・ウィンスロップに率いられて移住したピューリタンは、イギリス本国の故郷の地名にちなむボストンを建設して、1632年マサチューセッツ湾会社の政府所在地にした。18世紀半ばには植民地第一の都市に発達したが、本国による植民地支配の強化には激しく抵抗し、独立革命では愛国派の拠点として指導的役割を果たした。ホワイトでありアングロサクソンでありピューリタン(WASP)、この早い時期の移民はその後もアメリカ階層社会の頂点に立つ。19世紀半ば以降の多量のアイルランド移民(カソリック)の流入、それにフランス系カナダ移民、イタリア移民が相次いだ。そしてヒスパニック、ユダヤ、スラブ。特にアイルランド移民はWASPに対抗して諸産業を起こし、市政にも勢力を延ばしていった。
トマス・コグリンは階層社会のトップにはなりえない。微妙なパワーバランスでようやく姿勢を立てていられる。アイルランド移民の象徴的存在として描出されているのだ。
この結束した家族は崩壊していくのだが、そのきっかけのひとつはダニーが警察官ストライキの先頭に立ったことにある。
「警官の待遇改善(給与水準、労働時間、職場環境がこれほど劣悪なものだったのかとびっくりさせられる)に意欲的だった市警本部長が急死し、強硬派の本部長によってダニーの運命は大きく変化する。彼は労働者のストを弾圧する部署に移動させられる。ダニーの名付け親のマッケンナ警部補はルーサーの過去を暴きだし、彼を脅して黒人地位向上組織に壊滅的打撃を与えようとする。ついに警官たちはストライキを決行、ボストンは大混乱に陥る」
「大混乱」どころの事態ではない。政治的イデオロギーとはまったくかかわりのないはずだった待遇改善要求である。警官ストライキがこれほどの惨状を引き起こすとは、ただただ呆然とするばかりだ。ヤクザ?を臨時警官として採用し武器を持たせる。スラブ人たちが騒擾を煽り立てる。テロリストが爆弾を仕掛ける。そして一般の生活困窮者たちによる商店の破壊と略奪。入り乱れた群集の暴行、放火、殺人。内乱である。ボストンは火の海と化す………との表現がぴったりする。ルヘインはこの惨劇を50ページも費やして詳細に描写する。
アメリカの存在そのものにある矛盾が凝縮され一挙に爆発した現実がこれだとルヘインは語りかける。「THE GIVEN DAY」は「THE GIVEN AMERICA」なのではないだろうか。
紙の本
私達に訪れる運命の日は?
2008/11/09 00:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さあちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説は第一次世界大戦直後のボストンが舞台である。アイルラント゛からの移民の息子で巡査のダニーと故郷を捨てた黒人のルーサー。この二人の友情を軸として様々な愛と絆を描くまさに重厚な物語だ。
ダニーは警部の父親を持ちその血筋のよさから警察内部でも出世頭と目されている。いずれは父親のようになりたいと言う野望を実現するために労働組合の会合に極秘捜査のため潜入する。しかしその会合に参加するうちに市警の仲間全体の劣悪かつ過酷な労働条件に疑問をもち次第に組合活動家として目覚めていく。
一方ルーサーはほんの運命のいたずらから人を殺めてしまい妻と生まれてくる子供を捨ててボストンに逃げてくる。黒人であるということのほかに自分の過去さえも隠していかねばならない。そんな中でダニーの家に雇われて働くようになりアイルランド移民でダニーの父親に拾われたノラと出会う。
当時は黒人と白人の間には明確なラインが引かれていた。乗る車両は別々ましてや一緒に歩く事さえ奇異に見られる時代。迂闊に白人の家に出入りすると殺されても仕方ないような時代なのだ。そんな中で白人のダニーと妻のノラと黒人のルーサーは固い絆で結ばれるようになる。
そして運命の日。ボストン市警はストライキを敢行しそれに伴い街は大暴動が起こる。この史実を基にルヘインは鮮やかな人間模様を描きだしていて私達を釘付けにしてしまう。そしてそのあとに残る物とは・・・重苦しい雰囲気の長編小説なのに読後は爽やかである。
あの当時黒人が大統領になるなんて考えてみたことのある人は一人もいなかったであろう。しかし差別と偏見の悲劇を繰り返しながらもアメリカはやってのけた。未だ人種差別に苦しみながらでもかの国の人々は新たな希望を黒人に託した。振り返って我が国をみると差別はないというふりをしているが例えどんなに優秀な政治家が現れたとしてもその人が日本人以外の人種の人だったとしたら果たして首相に選ぶだろうか?血筋のよさを誇る政治家の多いこの国にそんな運命の日がくることはあるのかなあ・・・