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紙の本
人間の運命 改版 (角川文庫)
著者 ショーロホフ (著),米川 正夫 (訳),漆原 隆子 (訳)
ロシアの孤児アンドレイは、貧しくも愛する家族と幸福を築いていたが、第2次世界大戦に出征中にドイツ軍の捕虜となり、長く過酷な収容生活を送る。そして脱出後に知った妻と子供達の...
人間の運命 改版 (角川文庫)
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商品説明
ロシアの孤児アンドレイは、貧しくも愛する家族と幸福を築いていたが、第2次世界大戦に出征中にドイツ軍の捕虜となり、長く過酷な収容生活を送る。そして脱出後に知った妻と子供達の死。全てを失い深い絶望の中で流浪のトラック運転士となった彼は、ある日1人の幼い戦争孤児に出会い…。1人の人間の小さな幸福、戦争による絶望、それを救う大きな人間を描いた表題作他、ノーベル文学賞作家による短編5編。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
人間の運命 | 5−65 | |
---|---|---|
夫の二人いる女 | 67−96 | |
子持ちの男 | 97−111 |
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紙の本
悲劇を打ち越えて生きてゆくこと
2011/05/22 14:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
農地と森が広がり清流の豊かなロシアの大地で生きる人々を、現代史では2回の大きな嵐が襲った。一つは共産革命で、もう一つは大祖国戦争、すなわち第二次世界大戦だ。この二つが人々を引き裂いた。村落共同体のゆったりとした暮らしを、素朴な家族の結びつきを。帝政のコサックあるいは保守派と、赤軍あるいは労働者組織にと、軍事的、イデオロギー的な分裂による闘争に飲み込まれた。独軍の侵攻に立ち向かう兵士と、それを待つ家族とに引き裂かれた。
一進一退を繰り返した内戦で、どちらの側に付くかで旧知の友人も家族も敵対し、革命によって集団農場、機械化農業といったものが、イデオロギーを携えて農村にやってくる。
それを迎え入れる、新しいものの受け入れを拒む老人、封建制の下で虐げられて来て、ここでまた革命戦争で夫に死なれた女。
結果的にはこれらの相克はイデオロギーに押し流される。しかしそこに作者は優越性を認めたというよりは、時代の流れであり、新しいもの、若いものが古いものに取って代わる歴史として取り扱っているように見える。昔気質の頑固な老人も、時流の隅に追いやられ、子供達に見捨てられそうになっても、大地に根づいた生活を捨てずに生き続けることで、大いなる人間の尊厳は守られることを作者は主張していると思える。
大戦における独ソ戦でも、ロシアの人々には苦しみしか残さなかった。疲弊して、打ちひしがれ、悲しみに沈んで残りの人生を生きていても、勇気をもって苦難をくぐり抜けた過去は残る。それはソビエトが勝ったからでも、ファシズムを退けたからでもなく、どんなに平凡でもすべての人が持っている尊厳なのだ。
本書の5編の短編は、作者のノーベル賞受賞に繋がった「静かなるドン」と同じくドンの地を共通の舞台にしているが、人々のまとう悲劇性は、戦いに敗れた神々の物語にも通じる。ただ現代の神話では、愛する人の血が流され、兵士の死体が累々と積み重なっているところに違いがある。それらが物語として語られることは、現代の僕らが生きて行くのに必要なことなのだろう。