紙の本
神曲最高の日本語訳
2015/06/07 23:29
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北嶺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
神曲はこれ以外にも読もうとしたことがあったのですが、最後まで読み切れたのはこの本だけでした。他の訳者の訳は神曲という格式高い文学を意識してか、きれいであっても辞書なしにはわからない言葉を使っているものもあったのですが、この本ではそういったことがあまりありませんでした。神曲は映画や漫画、小説など、様々な作品の題材になることが多い作品なので、一読の価値はあると思います。
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地獄の棲家は我にあり
2011/05/08 18:10
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
神曲、地獄篇。
政変によって都を追われ、流浪の身となったダンテは、その生きる力の矛先を文学に傾けた。その高圧電流のような幻視力は、700年の時を越えて現代に生きる我々を魅了、いや感電させ続ける。とりわけ、この地獄篇は。
人が抱く思いは、これほどまでに深く、濃く、黒くて重層的な世界を現出させ得る。人が人の世にあって地獄を描くのは、人の心の中にこそ地獄があるからで、そこに現れる描写の緻密さ細密さは、人の心に降り積もる悪なるものの存在がそれだけ強烈で、粘着質であるがゆえ。
そんな地獄を、人々は洋の東西を超え、宗教宗派を超えて読み継いできた。イスラムにとっては悪魔の書であるにもかかわらず、それでも読み継がれてきた。世界文学史上の大傑作などとも呼ばれるくらいだから、むしろ「貪るように」読んできた、と言ったっていい。神曲はもちろん、地獄だけを描いた作品ではなく、地獄から天国へと至る道のりを高らかに謳い上げた大詩篇であるわけだが、万人に響き、魅了し、感電させ続けてきたのは、この地獄があまりにも魅力的だったからではなかろうか。この地獄が集合無意識的な人々の心理を、図らずも描ききってしまったからではなかろうか。
地獄は人で埋め尽くされている。そこでは自然は脇役である。自然に、地獄はない。人生の道半ばにして暗い森に迷い込んだダンテは、空想上の師、ウェルギリウスと共に、悔いや迷いや怒りや哀しみをボルテージにして、地獄から生き直し始めた(わたしには、いま日本人が想起すべき空想上の師は、宮沢賢治に思える)。
時代を経て生き残った古典は、何度でも読んで何度でも解釈しなおせる。この後の人生でも、煉獄篇も天国篇もきっと何度も読む。でもその前に今、地獄篇を前にして何度でも書いておこう。地獄はわたしたちの中にある。どんな過酷な自然にも、地獄はない。
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主人公のダンテが地獄の門をくぐって地獄の底にまで降り、死後の罰を受ける罪人たちの間を遍歴していきます!
2020/05/21 10:07
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、中世イタリアの詩人ダンテによって著されたイタリア文学最大の古典とされる書物です。地獄篇、煉獄篇、天国篇の三部から成っており、同書はその「地獄篇」です。内容は、ユリウス暦1300年の聖金曜日(復活祭前の金曜日)、暗い森の中に迷い込んだダンテは、そこで古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、彼に導かれて地獄、煉獄、天国と彼岸の国を遍歴して巡るというストーリーです。地獄篇では、地獄に入ったダンテが、私淑する詩人ウェルギリウスに案内され、地獄の門をくぐって地獄の底にまで降り、死後の罰を受ける罪人たちの間を遍歴していく過程が一つ一つ詳しく描かれています。同書は、非常に分かり易い名訳であり、読者にも読みやすいものとなっています。ぜひ、このイタリア古典の最高峰の『神曲』を読んでみてください。
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良いです
2021/06/20 15:25
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投稿者:ミチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
翻訳が読みやすくいいと思いました。わかりやすく読めます。これが読み終わったら、デカメロンをよみたいです。
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ダンテ『神曲』地獄編,河出書房,2008(初版1966)
再読(2009/8/12)。基本的にはウェリギリウスに導かれて、ダンテが地獄を旅する話である(ちょっと『西遊記』みたいだ)。
ダンテ(1265-1321)はフィレンツェに生まれ、法王党として政治にかかわり、1302年、故郷を永久追放された。『神曲』は1300年頃の設定で書かれており、ダンテの敵が地獄で手ひどく罰せられ、大便のなかでのたうちまわっていたり、自分の首を提灯のようにさげて彷徨っていたりする。師匠がじつは男色の罪を犯していて、引かれていく途中だったり、亡者が地獄の鬼(悪魔?)に鞭打たれていたり、貪欲な亡者がぐるぐる回って、ぶつかって罵りあったりと、地獄はまあそんな所である。冷たい雨が降ったり、火の粉が絶えず降ってきたり、空気がくさっていたり、ときどき、ケルベロスだのミノスだのミノタウロスなどの怪物や、巨人がでてきて、悪態をついたり、予言をしたりする。キリスト教徒じゃなかったホメロスは辺獄(リンボ)の片隅で淋しくしている。マホメットやアリーは二つに裂けている。キリスト教を分離させた者に応報の罰らしい。
たぶん、現代の映画なんかで消費しつくされたイメージだからだろうか、偉大な作品ではあるんだろうが、内村鑑三のように身の毛がよだつこともなく、こんな所かと読んでいる。地獄編が面白くないのは、ダンテが敵をいじわるく痛めつけているからもあるけど、そこには人間の「生活」がないからだと思う。ちなみに地獄でも、派手に痛めつけられている「主人公」は大悪人で、凡人は地獄に落ちても脇役である。悪人としては、恋に身を忘れた者から、偽金作り、裏切り者までたくさんいて、みな因果応報の罰をうけている。貪欲なものは生前自分がサイフにつめこんだように、地獄では自分が穴に詰め込まれていて、足だけでていたりする。
ウェルギリウスとダンテは地獄を底まで下りていき、地球の重力があつまるところで、悪魔大王(ルシファーとかベルゼブルとよばれる)をみる。大王はキリストを裏切ったユダと、カエサルを殺したブルータスとカシウスを三つの首でかみ砕いている。彼らは悪魔大王の毛をつたって、南半球にでていくのであった。
「神曲」の「神」は形容詞で、「神のごとき」の意味で、後に冠せられた。もともとの名称は「コンメーディア」とのこと、「ハッピーエンドの話」の意味だったが、のちに転じて、「喜劇」の意味になった。「光も黙る」とか「年老いた裁縫師が針に糸を通すような目つき」とか、うまいなと思う比喩はある。
『神曲』はイスラム圏では悪魔の著らしい。平川祐弘(『マテオ・リッチ伝』の著者)による注釈は詳細、カーライルやブルクハルト、正宗白鳥や内村鑑三、与謝野晶子などの意見を事細かく、引いてくれている。訳としてもよみやすい。『神曲』はその後の地獄のイメージなどに影響を与えた作品で、中国に宣教したイエズス会士などの頭にもあった作品だろうと思う。
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そう言っちゃなんだけど(ひょっとしたら不謹慎?)、面白かったぁ!!!! 「神曲」というタイトルからして「どこか説教じみた抹香くさい話なんじゃないか?」と思ったり、これまでにチャレンジした難解な文語調翻訳で「う~ん、よっぽど余裕がないとこれは読み終えることができない・・・・・(溜息)」という先入観があったりで、興味を持ちつつもどうしても読み進めることができなかった作品だけど、この平川版の「神曲」は「読み易い」「面白い」「翻訳日本語が美しい」の3拍子 + ギュスターヴ・ドレの挿絵のインパクトであっという間に地獄篇を読み終えてしまいました。
以前にチャレンジした時はほとんど進まなかったせいもあって全く気がつかなかったんですけど、「神曲」ってコテコテ・キリスト教文学かっていうとそんなことはなくて、KiKi の大好きな「ギリシャ神話」とか「英雄叙事詩」とか「歴史モノ」と親和性の高い作品だったんですねぇ。 ま、そんなこともあり、やはりこの作品を本気で楽しもうと思ったら最低限 「聖書」、「ギリシャ神話」、「ホメロス;イリアス & オデュッセイア」、「古代ローマ史」の基本的知識は必須でしょうねぇ。 ま、これに追加でダンテの生きた時代のイタリア情勢も知っていればさらに面白いのかも!! もっとも KiKi は凡そそのあたり(ダンテの生きた時代のイタリア情勢)の知識には疎いのですが、それでも微に入り細に入り付してくれている「注釈」のおかげで、とりあえず一読するには何ら不都合は感じませんでした。
(全文はブログにて)
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ダンテの想像力、構成力に脱帽。それを大変解りやすく訳し、そして注釈をつけている、平川氏に感謝です。
当時のイタリアで、l知りうる限りの歴史、自然、天文、数学などをふんだんに散りばめて死後の世界を描いてあり、おどろおどろしい場面がたくさんありながらも、楽しんで読めた。
注釈のなかに『往生要集』がでてきたが、仏教の地獄絵巻とかなり重なる部分もあり、比べながらでも面白いかもしれない。
先達のウェルギリウスが知的で包容力があって、素敵すぎます。
続いて煉獄編を読みます。
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ダンテはこの一冊を通して、自分は気に入らない人間を容赦なく妄想の中で地獄に落として嘲笑する男なのだという自己主張をしていることに気づいていたのかな?
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ダンテの代表作を3分冊にしたものの1冊目、地獄篇です。3冊まとめて購入してその厚さに驚き、げんなりしたものですが、実際に開いてみると意外と楽に読み進めることができました。
この詩の主人公にして語り手であるダンテ(作者であるダンテが旅をしているという設定なのでしょう)が地獄、煉獄、天国の三界を廻るというあらすじはとても有名ですが、主人公と語り手が同一であるという設定はこの時代には例がない、という平川氏の指摘にはいささか驚きました。こうした物語手法は現代ではそれほど珍しくないと思いますが(さすがに作者を主人公と語り手に据えるというのは現代でも珍しい部類に入るでしょうが)、もしそれが当時斬新な手法だったとすると、あえてダンテが3つのの視点を重ねたその意図はどこにあるか。私は、理由は詩の内容にあるのだと思います。
地獄篇では過酷な罰を受ける人物が数多登場しますが、そのほとんどが実在の人物で、ダンテの政敵であったり教皇であったりするという、なんとも狭い世界だけで物語が進んでいる感があります。世間では「世界的な傑作」という高評価が当たり前の本書も、こと地獄篇に描かれた彼らの姿からはとてもそうは思えませんでした。言ってしまえば、政争に加担して敗れたダンテが、作中の地獄に仮託して政敵たちを懲らしめているだけの話です。こんなばかばかしい話をキリスト教神学の仮面をかぶせて大仰に描き切った本書は、まさに喜劇だとしか思えません。この詩の題名に「Commedia」とだけ題したダンテ自身も、もしかしたらそう考えていたのかもしれません。しかし、もちろんこれは世代と地域とを隔てた私の感想であって、同時代・同地域の人々には、「実在するダンテがやはり実在する政治家の地獄に落とされる姿を見て回る」というこの詩に触れたときどう感じたでしょうか。そう考えるとき、私はダンテという人に底知れぬ恐ろしさすら感じてしまいます。
とはいえ、物語という視点からこの詩をみるとやはり面白いのも事実です。展開の進め方も巧みだと思いますし、読者にその情景を想像させ、また作品世界に引き込ませる力は圧倒的ですらあります。生々しい地獄の描写などは、我が国の往生要集や日本霊異記にも劣らないでしょう。日本語訳も全く気になららず、とても読みやすいものに感じられました。平川氏による解説「ダンテは良心的な詩人か」も収められており、本編後にこれを読ませるとは見事、の一言に尽きます。平川祐弘訳。
(2009年7月入手・2010年9月読了)
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もっと難しく読みにくいものかとおもっていたら、註釈や挿絵がかなり多かったおかげもあり、わかりやすく面白く読めた。
もっと抽象的な話かとおもっていたら、結構ダンテの私情や私怨が多かったようにおもう。
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崇高すぎて敷居が高く敬遠していたが、ドラマ「BORDER」の謎解きに出てきたので読んでみた。ダンテがラテン語ではなくトスカーナ方言で書いたのは、より多くの人に読んでもらいたかった故だろうし、分かりやすい平川訳で読んで正解だろう。
「神曲」というタイトルは森鷗外の紹介文からきていて、原題は「喜劇」という意味の「Commedia」だそうだ。当時の人物名をバンバン出し、地獄で大変な目に遭わせ糾弾するというジャーナリズム的な意味もあったらしい。知識があればもっと面白く読めたろうに残念。
大食らい、吝嗇、浪費、異教異端、暴君、自殺、男色、女衒、阿諛追従、聖職売買、魔術魔法、汚職収賄、偽善、窃盗、権謀術策、裏切、何でもかんでも地獄行き。心して生きよう。
漆黒の六枚羽の意味がやっと分かった。
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大作だけどあっさり読み進められるのは平易な現代語訳と詳細な解説の賜物。
訳注もふつうは巻末についていて行ったり戻ったりが面倒だけど、
歌(章)ごとにまとめてあるので読みやすい。
父なる神と子なるキリストと精霊の三位一体の神聖意外を認めないはずなのに、ゼウスや運命の女神たちなどギリシア・ローマ神話の神が出てくるのはどうかと。
でも関連するギリシア神話をいっしょに読むと知識も増えてなお楽しめる。
訳注で正宗白鳥が、今の政治家や軍人や有名人を使って書いたらどうなるかと書いてたけど今の日本で書いてみてもおもしろいかも。
もちろん仏教地獄の話で。
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2011.3.24 図書館
ちょっと教養を深めようかと…おもったんだけど読み切れるかしら
追記:読み切ったよ!
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挿し絵豊富だし注釈も親切で宗教・歴史的教養の無い私にも優しい・・・
平川先生訳の神曲、訳文も読みやすいし文章の固さがちょうど良くて(これは人によって好みありそう)理屈的に「?」てなるところは注釈で他の文献からも引いて来つつ解説されてるから痒いところに手が届きますありがてぇ~賢い人の教養お裾分けありがてぇ~
イスカンダルも地獄の下層で人の血を流し産を掠めた暴君として赤々と煮えたぎる血の川で煮られていますからね…所変わればですね
宗教、自殺者に厳しいよね。。。
最後の審判の日に己の亡骸を探しに行くも自分で捨てたものを再び身につけることは許されず地獄の森で自らの魂の茨の木にその肉体が吊るされる。。。
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ようやく読み終えたという感じ。
かなり読みにくい印象。
キリストを裏切ったユダや、カエサルを暗殺したブルータスやカシウスが地獄の底にいるのはわかるが、マホメットさえも地獄にいるのには驚き。
ローマカトリックのようなキリスト教の立場からすれば異教徒であるマホメットは大罪なようである。
善悪で人を捌くこの本だが、個人的には好き嫌いで物事を見る方が好きだ。
しかし、地獄の様はなかなかに激しい。
天国を見る前に、しばらく地獄篇で休暇になりそうだ。笑