紙の本
言葉への並々ならぬ好奇心が生み出した物語
2009/03/07 22:49
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、第26回新風舎出版賞大賞の受賞作で、2006年11月に新風舎から出版された作品の改訂版です。
図書館では、改定版が貸出中で、私は新風舎版を読んでこれを書いています。絵は同じ人が描いていますが、見たところ表紙の絵が異なるようです。
また、改訂版は、「五十音村のなかまたち一覧付き。」です。
この物語は、印刷所のおじいさんが子どもである著者に話してくれたという設定なのですが、この導入部分が、語り手のおじいさん、そして、著者の関心と世界観をあらわしているのです。
「文字にも、人間や動物と同様に魂があるんだ。実は、世の中にあるものすべてに魂が宿っている。文字も言葉もその例外ではない。魂があるから、それぞれの文字には性格もあって、いいやつもいれば、意地の悪いやつもいるし、強みもあれば、弱点もある。」
それから、いろいろな文字達のキャラクターが紹介されていきます。『あ』は自慢好きのおじさんで、『は』『ほ』『ひ』『へ』『ふ』は笑うことがみんな好き・・・といった具合に。
文字の世界には子どもたちもいます。
双子の"てん"ちゃんと"てん"くん。誰も区別がつかないらしいのです。
"まる"ちゃんはぷくぷくでおっとりしています。
そして、この物語の主人公、小さい"つ"はとてもかわいい男の子。
ユーモアがあって観察力に優れていて、いつもまわりの人やもの、そして周囲で起きていることに気を配り、相手の立場でものを考えています。
でも、彼はまわりの人が話していることはわかるけど、自分では一言も話せないのです。
ある夏の夜の宴会で、ひょんなことからどの文字が一番えらいかでけんかになってしまいます。
そのとき誰かが言ってしまったのです。
「誰が一番えらいかはわからないけど、誰が一番えらくないかは知っているぞ。それは小さい"つ"さ。だって、彼は音を出さないからな。そんなの文字でもなんでもないさ」。
みんなに笑われ悲しくなった小さい"つ"は置き手紙を置いて家出をしてしまいました。
彼が村から姿を消した次の日からすべての印刷物や会話から小さい"つ"が消えてしまいました。
みんなは彼を探しますが・・・。
小さい"つ"がなくなって大きく意味が変わるものとして、登場したのは、こんな例でした。
「どうしましょうか? 訴えますか? それとも訴えませんか? あなたからOKがあれば、訴えますよ」
「どうしましょうか? 歌えますか? それとも歌えませんか? あなたカラオケがあれば、歌えますよ」
なかなか、ひねりがきいています。
それにしても、著者は、言葉への並々ならぬ関心と好奇心を持った人です。あとがきで、意味が変わってしまう言葉を見つけることに苦労したことにふれ、本が完成した今でもこの箇所には納得していないので、読者に例があったら教えて欲しいとお願いするくらいなのです。
それがそのまま『"つ"抜きことばであそぼうキャンペーン』につながったのでしょう。
いつも使っている日本語なのに、考えるとなかなか難しいものですね。
ひとつだけ思いついたのは、小さい"つ"はリズムを表現するときのタメを表す文字として欠かせないということです。
弱拍のあとの強拍が入る前の少しの間。これがなくなってしまったら、音たちはどんどん突っ込んでいき、リズムは崩壊することでしょう。
著者は、この作品を通して「沈黙の素晴らしさ」を伝えたかったと述べています。
人の話を静かに聞き、必要なところでそっとみんなを支える人のことに気づき、大切にしたいものですね。
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小さい「っ」が可愛いです^^
どんな人でも必要な存在なんだと
いう事を教えてくれました。
自分に自信が持てない時などに
読むといいと思います。
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いきなり、巻末の話。
この本の巻末には、五十音村の住人、「あ」から「ん」だけでなく、「てん(濁音のこと)」も「まる(半濁音のこと)」も、さらには、小さい、つまり拗音の「ゃ」、「ゅ」、「ょ」や促音の「っ」も、なるほどね、そうだろうなという個性を表した形で掲載されている。
例えば「あ」は、いつも一番初めに来るいばりんぼ、「み」は村一番美しい女性、「を」はみんなの仲をとりもつ気配りの人等々。イラストもなるほどという雰囲気。
なんで私がこの本のことを知ったか。「日経トップリーダー(日経ベンチャーが誌名変更したもの。私個人は、絶対、前の誌名「ベンチャー」の方が良いと思っているが)」でジャパネットたかたの高田明社長が推薦していたから。すごい社長だね。
ある日の五十音村の住人たちの夜のおしゃべり。みんなで集まって、いつものように、上記に表したような、それぞれの個性を強調し、自分が一番偉いと自慢話。
そんな時、誰かが声を出した。
『誰が一番えらいかはわからないけど、誰が一番えらくないかは知っているぞ。それは小さい“っ"さ。だって、彼は音を出さないからな。そんなの文字でもなんでもないさ』
“っ"の胸は痛み続け、家に帰り、ふとんの中で横になっても、あまりの悲しみに眠ることができない。一晩中悩み続け夜明け前ついに一通の置き手紙を残して、家を出ていってしまう。
『僕はあまり大切ではないので、消えることにしました。さようなら』
それからが、大変だ。“っ"が使えなくなってしまった。
つまり、こういうことだ。
「鉄器(てっき)をつくる」は「敵(てき)をつくる」に、「あなたからOK(おっけー)があれば、訴(うった)えますよ」は「あなたカラオケがあれば、歌(うた)えますよ」、「失態(しったい)をさらす」は「死体(したい)をさらす」に。全く意味が違う。伝わらない。
村中は大騒ぎ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
まぁ、これ以上は、短いストーリーなので本を読んで欲しい。それに、そのストーリーは皆さんが想像されるであろうものとほぼ間違いなく一致していると思う。なぜなら、私のブログを読んでくれる人は、きっとそんな想像をしてくれる人たちばかりだからだ。私は全く心配していない。
それにしても、村の住人たちにいじめられた“っ"が、残していった手紙の言葉。
『僕はあまり大切ではないので、消えることにしました。さようなら』
胸がかきむしられるようだ。
もう一つ、それにしても。この著者は日本人じゃない。ドイツ人だ。
さらにもう一つ、それにしても。“っ"が抜けることによって、全く意味が違ってくる言い回し。この出版社は、その言い回しで言葉遊びをする。
「“っ"抜きことばであそぼう」キャンペーン。これはおもしろいや。例えば、・・・、いや、直接見ていただいたほうが良い。
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五十音村の住人が、小さい「っ」は音はないし役に立たないと非難します
それを聞いた「っ」は落ち込んで、どこかに消えてしまいます。その日から
新聞 雑誌 言葉から「っ」が消えてしまいました。
「っ」が消えてしまったら、言葉は成り立ちません。さあどうなったでしょうか。
人は誰でも自分は役に立っているのだろうか?と思う時があります。
この物語を読んでいると、ことば全てが愛おしくなります。 そして、落ち込んだ「っ」は旅先でとっても大切なものを手に入れます。 又、この本外国人が書いたというのも驚きです。 ちゃちゃ
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文字が1つ使えないだけで すごいことになってしまう。
それに個性はとても大切な宝。
みんな違うからこそ引き立つものなんだと気付きました。
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どんなものであっても、不要なものなんてない!多面的に見ると、どんなものにも価値はあることを童話形式で書かれています。
自分の存在意義がわからなくなったとき、この本をもう一度開きたいと思います。
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この物語は、
自慢好きの「あ」さん
笑うことが好きな「は」さん
といった具合に、1文字づつ性格を持った
文字たちが繰り広げるお話です。
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~あらすじ~
主人公は小さい「つ」。
彼は文字たちの中でただ一人音が出せない文字です。
ある時、誰が一番えらいかを言い争っていた文字たちは
口がきけない小さい「つ」は文字でも何でもないと見下し、
傷ついた、小さい「つ」は家出をしてしまいました。
すると、困ったのは人間たち。
「広島に行った」が「広島にいた」
「鉄器をつくる」が「敵をつくる」
と言いたいことが全く伝わらない。
一文字なくなるだけで、意味が大きく変わってしまうのです。
一つたりとも要らない文字はない。
全ての文字がつながりあって言葉になり、
そして文章になってこそ意味を持つ。
小さい「つ」がいなくなって初めて
文字たちは大切な本質に気づくのです。
「沈黙があるからこそ、音の存在がある。」のだと。
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私たちの仕事も同じではないでしょうか。
一人で完結できる仕事は一つたりともありません。
みんなの力がつながった時に初めて良い仕事ができると私は思います。
素直にそんな感謝の気持ちがわいてくる本です。
「もし○○だったら…」
今までと違う視点でみると、物事の本質が見えてきます。
と同時に無駄なことにも気付きます。
もう一つこの物語は大切なことを教えてくれます。
いじめた文字たちの反省だけではなく、
小さい「つ」自身も様々な気付きにより成長していきます。
家出をしている間、小さい「つ」がいつもしていたこと。
それは、寝る前にその日を思い返して学んだことを数えるのです。
そうすることによって、音が出せないと落ち込んでいた自分にも
できること、役に立てることがあるのでは…と前向きに考えが変わっていきます。
脳科学者の茂木さんによると、
「人間は今日考えたことの95%は昨日も一昨日も考えている」
そうです。
しかも、問題なのはその習慣的な考えの約80%が
ネガティブなものだということ。
同じ考えるなら、今日学んだこと、得たことを考えて
次につながる有効な時間にしたいものですよね…。
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購入者:櫻井(2009.12.15)
テレビ番組「エチカの鏡」で紹介されていた本です。五十音村に住む言葉の妖精たちの物語。小さい「っ」へのメッセージに感動しました。会社やサロン様に対して自分の役割を見つけて誇りと責任を持つ事が大切だと感じました。
松木(2010.2.11);↑の人と同じ「エチカの鏡」で紹介されていた本です。自分の存在意義が解らない人や組織の歯車でいて何がいいのか不安な人は一度読むと自分の存在意義が解る本です。
貸出:田中久(2010.2.11)返却:(2010.2.15)
いいお話でした。絵がものすごくかわいくて、それだけでもホッコリ癒されました。
貸出:村田(2010.2.19) 返却(2010.3.11)
どんなささいな事でも、無駄な事は無いのだと改め感じました。
貸出:山本三恵(2010.4.2) 返却(2011.1.18)
時々、自分って何なんだろう・・・と思う事があります。でも、必要とされるような人間になりたいと思いました。
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“あ”さんはいばりんぼ、“か”さんは優柔不断…舞台はいろいろな文字たちがすむ五十音村。そんな五十音村の住人たちが楽しみにしているのは、夜のおしゃべり。その日も、みんなであつまって自慢話に花を咲かせていました。ところが、小さい“つ”には音がありません。「音がないなんて、文字じゃない」とからかわれた小さい“つ”は次の朝、姿を消してしまいます。すると、どうしたことでしょう。いらないと思っていた小さい“つ” がいなくなっただけで、「うったえますよ」が「うたえますよ」になってしまうなど日本語は大混乱に…。ドイツから届いた、日本語の五十音をめぐるファンタジー。
本当に大事な事や役割は案外気付かない。そんなことを気付かせてくれる逸品です。一日言葉が無い世界も素敵ですね。
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文字が愛しくなる物語。
小さい「っ」は、単独では存在し得ないけれど、けれどもなくてはならない存在。
普段は意識しないけれども大切なもののことを考える、よいきっかけになりました。
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小さい“つ”
音も出ないし、
図体も小さいし、
真赤のお鼻のトナカイさんみたいに、
みんなの笑い者になっちゃった。
“みんなに必要とされてないんだから、いなくなります”って
お父さんの“つ”と
お母さんの“み”に
(三人親子で“みっつ”なんだって♪)
書置きして、家を出て行っちゃった。
あらら、大変。
新聞も、本も、人々も、
うまく気持ちを、お話を、伝えられなくなっちゃった。
旅をきままにしながら、
小さな“つ”は、お空を見上げて思った。
お星さまもお月さまも、黙って言葉は語らないけど、
優しさとぬくもりが伝わってくる。
海辺でさざ波の音を聞いて思った。
音の意味がことばとして意味がわからないものだって
心を鎮めてくれるんだ。
。。。て、もう返しちゃったけど、こんなお話だった。
日本語の本だけど、ドイツ人が書いた本。
その後ドイツ語に訳して(ど~、訳したんだ?言葉のあやとかもあるのに)
結構ヒットしているらしい。
ふと、本屋さんで手にとって、人にプレゼントした本。
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【8/10】学図。(男の子)(爺)(印刷所)(おはなし)(ひらがな)(家出)(手紙)(個性)(ことば)。N高学年~(ドイツの作家・画家)。巻末に「五十音村のなかまたち」
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【夢ゼミ2010年07月オススメ本】
私たちが普段から声に出している五十音。その中でも、唯一音のないもの「小さいつ」、それがこの本の主人公です。
ある日突然、小さい「つ」がいなくなったら…。そんなもしもの話の中に「いらない人なんていない」「みんな一人ひとり大切な存在なんだ」というメッセージが込められています。
よくテレビ番組でも、何気なく使っている日本語の知られざる意味や、その由来が紹介されたとき、温かい気持ちになったり、日本語の感性にうっとりすることもあります。ドイツ人である著者からみた、少し違った日本語のとらえ方にも注目です。
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小さい”っ”がかわいい!
小さい”っ”の大切さだけじゃなくて、いろんなことが伝わります。
日本語の話なのに、外国人が書いたっていうのがすごいな。
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何か一つの基準がその人の価値を決めることではない。
ちいさいっがいなくなったらという童話に似た話。価値を一方的に決めてはいけない。私の持つ価値はあなたの価値ではない。いなくなって大切なことに気づいて対処する話。高田社長おすすめの本。人との違いは個性だと思う。私も自分の考えで人を判断することは多い。色々な価値を認められたら人を羨んだり蔑んだり比較したりすることは減るんだろうとおもう。