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炎に絵を 愛と流転のミステリー (集英社文庫 陳舜臣推理小説ベストセレクション)
著者 陳 舜臣 (著)
父にかけられた革命資金横領の汚名を晴らそうと、真相を探る主人公。次々と起こる奇妙な事件、そして殺人。完全犯罪を思わせる結末に、鮮やかなドンデン返し「炎に絵を」。戦局の拡大...
炎に絵を 愛と流転のミステリー (集英社文庫 陳舜臣推理小説ベストセレクション)
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商品説明
父にかけられた革命資金横領の汚名を晴らそうと、真相を探る主人公。次々と起こる奇妙な事件、そして殺人。完全犯罪を思わせる結末に、鮮やかなドンデン返し「炎に絵を」。戦局の拡大とともに大陸を転転と避難する故宮博物院文物。若き玉器彫り職人と模造香炉をめぐる直木賞受賞作品「青玉獅子香炉」。祖国救亡運動中の劇団で起きた殺人事件の意外な後日譚「永臨侍郎橋」。3作品収録、新編集の傑作集。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
青玉獅子香炉 | 5−99 | |
---|---|---|
永臨侍郎橋 | 101−154 | |
炎に絵を | 155−462 |
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紙の本
陳舜臣、珠玉の短編3話
2008/12/14 21:30
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、陳舜臣がこれまでに書いてきた傑作短編を集めたものである。収録されているのは、『青玉獅子香炉』、『永臨侍郎橋』、そしてタイトルにもなっている『炎に絵を』の三編である。陳舜臣といえば、中国の古典を軸にした歴史文学などで知られているのだが、もう一つの側面は推理小説のジャンルでその才能が発揮してきた作家であるといってよい。
それが証拠に江戸川乱歩賞、推理作家協会賞などを受賞している。賞といえば、本書に収められている『青玉獅子香炉』は直木賞を受賞している。
前二作はすでに読んでいたので、覚えがあったが、ずいぶん昔のことなので細部は忘れていた。これらの作品によって私は陳舜臣のファンになったといっても過言ではない。ジャンルでいえば、推理小説に入るのだろうが、露骨に殺人事件の捜査であるとか、警察や探偵が出てくるという設定ではない。
加えて、本編はいずれも中国人が絡み、舞台も中国であったり、作者の居住地である神戸であったり、変化に富んでいる。しかも随分時代を遡る。
青玉獅子香炉は、翡翠や玉の彫刻職人のストーリーであるが、こういう職業が今はもうほとんど見られないので、時代に合った舞台仕立てとは言い難いが、想像はつく。北京や台北の故宮院に行けば、極上品が鑑賞できるようだ。よくテレビのドキュメントなどで戦時中の戦火を逃れるために、中国奥地を彷徨したこれら宝物を紹介することがある。
まさにそれを小説にしたものであるが、このような歴史の一幕に隠されたところで、主人公自身が彫った玉に対する執着に焦点を当てたのが、本篇である。モデルがあるのか、ないのか分からないが、あってもおかしくはないと思わせるところが、時代設定の妙であろうか。
永臨侍郎橋はもっと人間同士の葛藤を描いたものである。殺人があった時代からはるか後年になってようやく真相が明らかになり、加えて意外な事実も発覚する点が面白いところで、思わず引き込まれてしまう。この筋立てが陳舜臣の真骨頂であると私は思う。
タイトルにもなっている『炎に絵を』は、神戸が舞台になっているが、戦中のどさくさで血縁関係が不明であったものが、戦後の復興の中で明らかになった。魅かれる兄嫁の依頼で調べる過程で真実が判明し、意外な人物がその黒幕であったことが露呈する。
たしかに殺人事件が発生するのだが、犯人探しも探偵ものとは異なり、主人公自らが昔の手紙などから解き明かすという時代を反映したものになっている。殺人という手段はストーリーから殺された人物を除外するという意味が強く、そういう点では、ストーリー・テラーとしての陳舜臣を見る思いであった。
本書以外にも推理小説はまだ多かったはずなので、ぜひ復刊させてほしいものである。