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紙の本
死者の短剣 1 惑わし (創元推理文庫)
著者 ロイス・マクマスター・ビジョルド (著),小木曽 絢子 (訳)
わけあって家出した地の民の娘フォーンは、ひとり街道を歩いていた。途中立ち寄った農家で、謎多き民として知られる湖の民の警邏隊を見かけたのが、ことのはじまり。警邏隊員ダグと仲...
死者の短剣 1 惑わし (創元推理文庫)
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商品説明
わけあって家出した地の民の娘フォーンは、ひとり街道を歩いていた。途中立ち寄った農家で、謎多き民として知られる湖の民の警邏隊を見かけたのが、ことのはじまり。警邏隊員ダグと仲間たちが追っていた悪鬼の手下に、何も知らないフォーンが捕まってしまったのだ。フォーンとダグ、地の民と湖の民という異なる出自のふたりの出会いが運命を変えた。名手ビジョルドの新シリーズ。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
ラブ&ファンタジー
2009/01/19 18:10
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファンタジー&ラブストーリー
地の民の娘と湖の民の男の出会い
しっかりした土台のファンタジーでありながら、段々と恋愛比率が増え、逆転していきます
まさかこういう展開でくるとは思いもよらなかったですね
はじめはあやふやに感じたキャラクター性も、二人の距離が縮まるにつれ立ってきて、互いを思いやることを核とした人格・個性として成立したように感じます
紙の本
ロマンスからはじまる異世界ファンタジー
2009/02/06 15:53
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐吉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
傷心を抱えて家を飛び出し、繁華な街を目指してひとり街道を歩いていた〈地の民〉の娘フォーンは、途中立ち寄った農家で〈湖の民〉の警邏隊を見かけた。
この地に暮らす二つの種族、〈地の民〉と〈湖の民〉。〈湖の民〉には、〈地の民〉にはない特殊な能力があり、彼らはその能力を活かして、〈枯死の魔物〉と呼ばれる悪鬼とその手下である泥びとから人々を守るべく、常に各地を見回っている。けれど〈地の民〉の中には、そんな謎多き〈湖の民〉を、「魔法使い」と呼んで恐れたり忌み嫌ったりする者もいた。フォーンもまた何とはなしに彼らに近寄りがたさを覚え、じっと身を潜めていた。
あくる日、逃走した泥びとを追って馬を駆っていた〈湖の民〉の警邏員ダグは、谷間にこだまする叫び声を耳にした。悪鬼や泥びとなど子供だましの作り話にすぎないと思っていたフォーンが、近寄ってくる男たちがそれとは気付かず、彼らに拉致されてしまったのだ。
ダグの活躍によって一度は救出されたフォーンだったが、一人になったところをふたたび捕えられ、今度は悪鬼の巣窟にまで連れていかれてしまう。ダグがその場に駆けつけたのは、まさにフォーンが悪鬼の餌食となる寸前だった。絶体絶命の窮地に追い込まれた二人。しかし二人はそこで、〈湖の民〉にすら理解しがたい不思議な出来事に遭遇する……。
前作「五神教」シリーズで、SFのみならずファンタジーにおいても、評判に違わぬ稀代のストーリーテラーぶりで、多くの読者を魅了したビジョルドの待望の新作。不思議な力を秘めた短剣の謎をめぐる、異世界ファンタジーシリーズ四部作の第一弾である。
のっけから畳みかけるように活劇シーンが繰り広げられ、序盤はテンポよく進んでゆく。悪鬼や泥びととはどのような存在なのか、〈基礎感覚〉と呼ばれる〈湖の民〉の能力がどのようなものなのかが、フォーンとダグの行動を通じて少しずつ明らかにされてゆく。ところが、二人が当面の危機を脱し、互いに心を寄せあうようになってからは、一転、物語は、出自の異なる二人がいかにして愛を貫き、結ばれるかというラブロマンスに発展してゆく。
異世界ファンタジーにおいては、物語世界の背景を読者に理解させるための導入部がしばしば必要になる。ときには話の流れを完全に断ち切り、読者の感興を削いでしまいそうなほど、長く詳細な説明がなされることもある。この主人公二人のロマンスは、実はそのためのパートでもあり、この世界の成り立ちを象徴するさまざまなことがらが、二人のあいだに立ちはだかる障壁として、ストーリーにさりげなく織り込まれてゆく。とてもユニークで興味深い試みである。
しかしながら、その試みが奏功しているかと問われれば、どうにも首を傾げざるを得ない。もちろんそれぞれの読者の好みにもよるだろうが、評者個人の率直な感想を云えば、ラブロマンスになって以降の展開はひどく退屈である。二人の心理描写が中心になるのはいいとしても、話の進み方が実にゆっくりで、プロットは起伏に乏しく、それでいて描写はいつにも増して精細なものだから、あまりにもこと細かな記述にイライラさせられる場面も少なくない。流麗で饒舌なビジョルドの文章は、それ自体が彼女の作品の魅力の一つでもあるのだが、今回に限ってはそれが裏目に出て、作品全体にひどく冗漫な印象を与えてしまっているように思える。
ともあれ、本書を通読すれば、少なくともこの世界のあらましは見えてくる。物語世界の壮大さ、奥深さをうかがわせる記述もいくつか見られ、この先の展開に期待を持たせる。もっとも本作においては、この世界の根幹を揺るがすような事件は、まだ何一つ起こっておらず、かろうじてその種が蒔かれたことをほのめかす出来事があるだけである。いずれにせよ、その種が芽を出し、物語が本格的に動き出すのは続編以降になるだろう。そしてそこからが、このシリーズの真骨頂になるはずだ。あるいは続編以降を読んだのちにあらためて本作を振り返ってみれば、その印象もまた違ったものになるかもしれない。この作品はあくまで、これから始まる物語のイントロダクションにすぎない。続編の刊行を待ちつつ長い目で見たい。