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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2008.11
  • 出版社: 角川書店
  • サイズ:20cm/524p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-04-873899-6

紙の本

オリンピックの身代金

著者 奥田 英朗 (著)

昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そん...

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オリンピックの身代金

税込 1,980 18pt

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商品説明

昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。【「BOOK」データベースの商品解説】

【吉川英治文学賞(第43回)】昭和39年夏、オリンピック開催に沸きかえる東京で警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届く。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、1人の東大生が捜査線上に浮かぶ。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

奥田 英朗

略歴
〈奥田英朗〉1959年岐阜県生まれ。97年「ウランバーナの森」で作家デビュー。「邪魔」で大藪春彦賞、「空中ブランコ」で直木賞、「家日和」で柴田錬三郎賞を受賞。

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著者/著名人のレビュー

 昭和三十九年、東京...

ジュンク堂

 昭和三十九年、東京はオリンピックに沸きかえっていた。日本は国家の威信をかけて成功を期す。
 そして事件発生。
 開催妨害を企む若きテロリストが出した脅迫状が警視庁を揺るがす。極秘に捜査が始まる。そこに浮かび上がった容疑者は?
 敗戦からおよそ十年が経ち、大きな変革期と重なった戦後最大のイベント。熱気にうなされる社会を背景に、警官たちとテロリストの息もつかせぬコンゲームが密かに進行した。実際に起きたかもしれない、と思わせるほどの息づかいが行間から聴こえる。

みんなのレビュー264件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

なつかしい

2009/05/28 22:50

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る

オリンピックの身代金 奥田英朗(ひでお) 角川書店

 この作者さんの「空中ブランコ」を読んで作者に興味をもち、このオリンピックの本を読み始めました。空中ブランコと比較して、文体は別人のようです。空中ブランコはおとなの童話でした。オリンピックは本格的というか、普通のタッチで事件が描かれています。
 東京オリンピックですから、昭和39年、もう44年ぐらい前のことになります。東北出身の東大生、彼は貧困暮らしを経験しているわけですが、その島崎国男君が東京へ出稼ぎに出ていた兄の死をきっかけとして、爆弾魔と化しテロ行為をしていくわけです。
 同時期に「カシオペアの丘で」重松清著を重ねて読んでいました。ふたつの本の舞台である東京、札幌、秋田を自分の頭の中にある日本地図に落として、同時期にふたつの物語を動かして空想を楽しんでいたのですが、冒頭付近では両者ともに炭坑の記述が多用されています。わたしの亡き父親も坑夫をしたり、都会へ出稼ぎに出たりしていたので、当時の炭坑街風景や出稼ぎ先都会の記憶が残っています。また、わたし自身も高校生の頃にアルバイトで土方(どかた)仕事をしていたので、人夫(にんぷ)の世界にも記憶があります。
 なぜ、今、「昭和」の再現なのか。団塊の世代が現役を去りつつあるからなのか、若い新人作家の作品には時代背景がない作品が多いからなのか。それは最後まで疑問のまま読み終えました。
 文章全体から東北弁が響いてきます。匂(にお)ってくると言い換えてもいい。犯人である島崎国男君と自分自身が重なる人も多いのではないか。オリンピックのための建設と同時進行で失われていく古い家屋とか心がある。北京オリンピック前の北京の街風景に似ています。肉体労働者はどん底の暮らしを送っています。出身県とか所属する団体にこだわるのは日本人だけだろうか。兄の死がなければ、島崎君がテロリストになることはなかった。この本の313ページ、「カシオペアの丘で」はひとり娘が亡くなって娘の父親が自殺志願者になった。この本では、島崎君の共犯者が女房とこどもふたりを戦争の空襲で亡くし、残された夫である共犯者は長期間の悲しい時期を送っている。
 東京駅での犯人と警察のドタバタ騒ぎは、「ドミノ」恩田陸著を彷彿(ほうふつ)させてくれた。混乱を招かせる場所は、混雑している東京駅がいい。犯罪を犯そうとすれば簡単に犯せることができる国が日本です。作者は犯人の味方なのだろうか。456ページ、ハッピーエンドになってほしい。あと67ページです。警察職員は何を動機にして、職務に厳しく専念しているのだろうか。月給のため、安定した職を維持するため、それらしか思い浮かばない。警察の役職者には、自尊心、自己顕示欲が積み重なる。警察組織下層部の職員には「家族」が基盤にある。しかし上層部職員のキーワードに「家族」はない。警察組織の全体にいえることとして「国民のため」というキーワードはない。
 484ページ、執筆中である作者のほっとした気分が文章から伝わってくる。もうすぐ書き終えることができる。
 読み終えて、虚無感が残る。全体を貫いていたテーマは、「人柱(ひとばしら)」だったことがわかる。目には見えないところに犠牲者がいる。そういった人たちの上に社会の繁栄がある。「パイロットフィッシュ」大崎善生著が浮かんだ。主役の魚が快適に暮らせるような環境をつくるのが、最初に水槽に入れられるパイロットフィッシュと呼ばれる魚で、用済みとなれば、ごみとして捨てられるか、主役の魚の餌にされてしまうのです。

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紙の本

庶民が踏みつけられる時代に逆戻りしている今だからこそ、読み応えがありました。

2010/05/17 12:45

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:甲斐小泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

戦後の荒廃の中から立ち直った日本の象徴となった東京オリンピック。この国家的大イベントを迎え
る中で密かに起こったテロを描いた力作。

 大変に正直に申しますと、東京オリンピックについては記憶があります。しかも、当時競技場を抱える渋谷に住んでいました。更に、トウヘンボクの父が折角手に入れた開会式の入場券を、な、なんと会社の部下にあげて大変に喜ばれたという、4年に一度、必ず母が蒸し返して恨んだ我が家の大事件まであったもので、余計印象深いのですが、子どもの目から見てキラキラしていたオリンピックにはこんな裏面もあったのかと思わされます。

 物語はオリンピックの最高警備本部の幕僚長を勤めることになっている警察幹部の息子、エリート揃いの一家の中では変り種、テレビ局勤務の須賀忠が、金持ちのドラ息子よろしく、当時は珍しかった自動車に女優志願の女性を乗せて、花火大会に行こうと気取っている時に自宅である瀟洒な屋敷の離れが火事になったところから始まります。

 この時、偶然に出会ったのが東大の教養学部(駒場キャンパス)でクラスメイトだった秋田出身の真面目で眉目秀麗な秀才、島崎国男。一方で、菅は自宅の離れが全焼という被害にもかかわらず、事件が一切報道されないことに疑問を抱きます。しかも、理由不明のうちに父親から勘当を言い渡され、女性のアパートに転がり込まねばの状態になります。

 警察側では若手刑事の落合昌夫がメインのキャラクターとして登場。同僚や上司と協力しながら、内部組織の連絡の悪さや公安との確執を憂いつつ、また、身重の妻や子どもに思いを寄せつつ、仕事を優先せざるを得ない日々を送っています。組織ではいわば使い走りの彼も、次々に起こる実在の迷宮入り事件の犯人、草加次郎を名乗る犯人からの要求の形を取る爆破事件の真相が分からぬまま、動き回り、次第に核心に近付いて行きます。

 須賀忠と警察側が、それぞれに導き出した結論が、島崎国男が犯人ではないかという事で、須賀は個人的な興味もあり、時々、父親の名前をチラつかせながら、捜査の邪魔とも思える場に居合わせ、結果として、捜査の進展に一役買ってしまったりします。

 勿論、物語はフィクションですが、オリンピック景気に沸く東京で、秋田の出稼ぎ労働者を兄に持つ、貧しい故郷では掃き溜めに鶴状態の東大院生の島崎国男が、兄の死をきっかけに、労働者を搾取しながら成り上がる社会に対し、静かな怒りをもってテロに走っていく様子は、本当にあった話ではないかと思われる程、克明に描かれています。

 ヒロポンを打たないとやっていけない休みなしのきつい労働。下請けの労働者と、建設会社の社員は口も聞けないほど、身分に隔たりがある事。底辺の労働者をさらに搾取する暴力団の存在。海外からのお客様に見られてはいけないものは徹底的に弾き飛ばし、暴力団ですら、それに従う程の国費発揚の威力があった東京オリンピックの裏で行われている事に対し、マルキシズムの研究室にいた国男は、破滅の道しかないと分かっていても、鉄槌をふるわなくてはいけない気持になって行くのです。

 立場によって、あるいは嗜好によって、それぞれの登場人物に対する思いいれや好みが違うかと思いますが、私の場合は、想像を絶する貧困の中で虐げられながら、上昇する気力さえ奪われている出稼ぎ労働者に思いを寄せ、自らの約束された輝ける未来を捨ててテロに走る島崎国男の姿に惹かれます。多分、実際に本人を目の前にしたら、労働者の仲間たちが「あんちゃんは俺たちとは別ものなんだから」と、あるいは「あんちゃんみたいな人が政治家になってくれりゃいいんだ」等と言って約束された世界に戻るように促したのと同じ事を言うと思いますが・・・。 読みながら、捕まるなよ、逃げおおせよと島崎国男を応援する自分がいました。

 身の破滅を招き、故郷にも戻れないと分かっていても、搾取で成り立つ世界に一石を投じずにはいられない国男。聡明で冷静な彼が、自分の投げた石が、国家に飲み込まれ、漣一つ立てないで終る事を予期しながらも動かずにはいられない程、弱肉強食の世界に対する怒りがあったのだと納得させられてしまったからでしょう。

 この作品は再び、格差が大きくなってきている今の時代にはとても印象的だと思います。そこそこ恵まれた人(頑張れば報われる)の代表は警察官の落合昌夫でしょうか。そして、社会の上澄みを泳ぎわたる事の出来るかなり恵まれた人の代表が須賀忠でしょう。

 高度経済成長期は苦役にあえぎヒロポンで身を滅ぼすしかなかった国男の兄のような人を減らし、落合昌夫のように頑張ればそこそこの暮しが達成できる人を大幅に増やし、一億総中流という言葉も出現しましたが、今、また、須賀忠のような、努力や根性という言葉を廃しても生きていける富裕層が増える一方で、搾取され、抗議する気力すら奪われている層が増えているようです。

 誰かが繁栄する時に、下敷きになって苦しむ声無き人々が大勢いる・・・という世の中はマルキシズムを信奉していなくても、いい年こいて青臭いと言われようとも、やはり変だと思わざるを得ません。

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紙の本

そう、「昭和39年」の時代とはこんな時代だったんだ。われわれの世代。なんでもやってやろうと精神の高揚があった。

2009/01/24 23:11

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

奥田英朗はずいぶん前に『最悪』と『邪魔』を読んだきりだった。二作とも日常生活におこるクライムノベルだったが、これはクライムノベルとすればはるかにスケールが大きく、面白さも前作を格段にしのいでいる。

「昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に『東京オリンピックを妨害する』という(<懐かしいではないか>あの草加次郎を名乗る、)脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。(国家の威信が傷つくから)警視庁の刑事たちが極秘に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ………。」

年初早々だが、私が今年に読むだろうミステリーのなかで最大級の快作になるだろう。とにかく読んで楽しい。ミステリーとしては異色で上品な面白さがある。

「昭和39年」の東京そして日本そのものの断面を実に緻密に描写している。オリンピック会場、高速道路、新幹線の建設と東京が様変わりになった年だ。わたしは大学3年生で東京に生活していたものだから、この劇的な変貌を体験しているはずなのだが、あまり五輪ゲームに夢中にならなかったせいか、実はこの小説のように一まとめになった記憶はぼんやりしている。
物語の進行とともにいたるところで描写される、町の風景、流行の風俗、物価水準、市民の生活習慣、世情の一こま一こまに「あぁそうだ、そんなことがあった頃か」と当時が懐かしく思い出されて、思わずにっこりしてしまう。東京一極の繁栄にあって東北農民の困窮の様子は「あれ、当時もこんなにひどかったのかな。もう少し時代が前なのじゃないか?」とこのあたりの記憶もぼんやりしている。60年安保を経て池田内閣の所得倍増からこの「昭和39年」はたしかに歴史的には、ここからいよいよ日本の「繁栄」が始動する!と宣言の年、エポックメーキングだったんだ。

東北の貧困農家に生まれ、東大大学院でマルクス経済を研究する若者・島崎国男。彼の兄が出稼ぎ労働者としてオリンピック用の建設現場で働くが、日雇い労働条件のあまりの過酷さに死亡する。詳しい原因説明もないまま火葬にされた後の骨壷を見届けた島崎くんは兄と同じ日雇い労働を命がけで体験してみる。そして………。

当時のキャンパスのタテカンに「いまや繁栄監獄!」というキャッチフレーズがあったなぁ。繁栄の光と影である。清水一行の著書に『動脈列島』というのがある。細部はともかく、知り合いが死んだ騒音公害に抗議し新幹線転覆を企てる若者をシリアスに描いていたもので、この実行犯と警察の追いつ追われつ、スリリングな緊張感が全編に張り詰めた忘れがたい傑作の社会派ミステリーだった。『オリンピックの身代金』も島崎くんと警察のマンハントチェイスであり設定こそ似ているが、上等な味わいは異質なところにあった。国家の大事業を襲撃するというハードコアに用意周到な仕掛けをもって著者の遊びごころをあふれさせてみせたのだ。とにかく私たちの年代はノスタルジーとともにまずはのんびりと読み進むことになる。

学生運動とはおよそ縁がなかった島崎くんの周囲の脇役。それぞれがいかにも当時の人物らしくて光っている。同期生で千駄ヶ谷に2000坪の豪邸を持つ旧家の次男坊プレイボーイ・須賀忠くんはテレビ放送会社勤務。そのガールフレンド・ミドリちゃんは向島の下町育ちだが今は赤坂の高級ナイトクラブの新米ホステス。島崎くんに、ほのかに思いを寄せる良子ちゃんは本郷の古本屋の娘。下宿のおばさんだって、警察の捜査があってもすんなりとは家宅捜査を許さないと啖呵を切る、威勢のいいおばちゃんである。同郷の秋田県出身のスリ・村田留吉。そして警察側は刑事・落合昌夫30歳、公団の団地に移転し、あこがれの団地族に仲間入りし、これからはじまる文化生活に心うきうきさせている。

さらに島崎くんは逃亡のプロセスでさまざまな集団と交流する。
彼らは一様に、
エッ!警察から追われているの?
ダイナマイト持っているって?
オリンピックを脅迫して身代金?
東大生?
全学連?北朝鮮のスパイ?
どうしてどうして
と島崎くんとコミュニケーションを進めることになる。
開会日になんとしてでも完成をと強制されている出稼ぎの日雇い労働者たち、
しばらく都心での活動を自粛させられた暴力団、
革命の方向性を見出せない反代々木系学生運動のセクト、
オリンピックには反対しないが日本人は応援しないと朝鮮総連。
とにかく警察や政治の権力とは微妙な関係にある輩である。彼らは彼らなりの大義で島崎くんのこの行動を勝手に解釈し、立派!凄い!たいした度胸だと同調し、またバーター条件を提示するなどエゴも絡んで逃亡に手を貸すのであるが、所詮本気になった権力の前では弱者であり、ぼろを出すことになる。
このやりとりがこの作品を出色の出来ばえに仕立てている。まさにユーモア小説の勘どころ、読みどころ。著者の遊びごころ、アイロニーを充分に楽しもうではないか。

読者は読み終えて
「では、島崎くんはどうしてこんな大それた犯行を企てたのだろうか?」
と根本の疑問に行き当たる。兄貴の弔い合戦?資本主義体制への抗議?取り残されたものの怒り?そういうところもあるだろう。ただそれだけであるなら犯行と平行してマスコミに告発状をたたきつけるべきでしょう。真剣に身代金を強奪するつもりだったのだろうか。それはないでしょうね。どうやら島崎くん自身も分析できないほどモヤモヤとしている。

「私」ってなんなんだろう?と、ただとどまっている。
それが一般的には平成という今の時代の個性なのかもしれない。
「昭和39年」時代の若者には方向性こそないが、とどまってはいられないと、ムンムンと熱気のようなエネルギーがまだ残っていた。
そして「私」を実現させようとして残留エネルギーを島崎くんのように無理に発出すると「風車に立ち向かう蟷螂の斧」となった。
それはそれで、されどわれらが日々だったんだ。
現代版ドンキホーテのもの悲しさが胸の奥にのこった。

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紙の本

“犯人”にどうしても心が重ならない

2009/02/01 11:07

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

 昭和39年夏。まもなく開催されるオリンピックに向けて首都東京は街の相貌を大きく変えていた。国民が一丸となって五輪開催へと突き進んでいるかに見えるとき、警察を狙った爆破テロが発生し、当局に「オリンピック妨害」を宣言する脅迫状が届く。やがて警察の捜査線上に浮かんできたのは一人の東大大学院生だった…。

 上下二段組で500頁を超える大長編サスペンス小説です。
 膨大な史料にあたって書かれたと見え、あの時代の急激に変わりつつあった東京の空気の色や臭いにいたるまで精密に再現した著者の力量には脱帽です。

 そして物語の中心となる三人の男たち----東大大学院生の島崎、その同級生で今はTV局員の須賀、そして刑事の落合----そのそれぞれがいかにも今から40年前に存在したであろう人物に肉付けされています。
 その意味では、この「オリンピックの身代金」は現実味のある物語として読む者に迫ってくる勢いがあります。

 しかし読了した今、私はこの小説を十分に楽しめたとは言えない何かを抱えています。
 昭和39年、五輪景気に沸く東京と、その発展からこぼれ落ちた地方都市との間に生まれた経済格差は、平成21年の今の日本に大いに重なるところがあります。ですからこの小説の“犯人”が社会に対して抱く憎悪に対して共感を覚える読者も少なくはないかもしれません。ですが、彼の行いはやはりテロリズムであり、そこにいくばくかの賛意を示した途端に、私たちの社会は音を立てて崩れていかざるをえないといえます。

 となるとどうしてもこの“犯人”に私の心が添うことはありません。私にとってかろうじて「理解」は出来るにしても「同意」はできない類いのものです。
 中心的登場人物に心が重なる瞬間が見出せないとき、その物語は私にとってはやはり受け入れがたいものとなってしまいます。それがこの小説を十分に楽しめなかった一番の理由だといえるでしょう。

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紙の本

こんなに共感できる人間がいない小説というのも奥田らしくありません。こういうのを読むと、東京でもう一度オリンピックを開く必要はないな、って思います。せめて福岡に譲るべきだったんでしょう。今の都知事の語彙には謙譲なんて言葉はない?

2009/04/27 21:50

10人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

角川書店のブックデザインて、大手の中で一番つまらないかも、なんて思います。講談社も保守的で、あんまり凄い装幀の本を出した、というイメージはありませんが、角川よりはいいかも。で、言っちゃあ悪いけど、角川の装丁室でただ一人名前を出していたのがこの本の装丁担当の高柳雅人なんですが、今回は(角川書店装丁室)という括弧書きが消えました。独立したんでしょう。

でも、装丁が野暮ったいのはいかんともし方がありません、特に次のデザイン関係の注を持て欲しいんです。

写真 Douglas Miller/Keystone Features/ゲッティ イメージズ
   Keystone/Hulton Archive/ゲッティ イメージズ
Donald Uhrbrock/Time Life Pictures/ゲッティ イメージズ

何となく感じ悪くありませんか。なぜ各行の最後が、ゲッティ イメージズ とカタカナ表記なんでしょう。だって、今まではGetty images って書いてたじゃありませんか。『レッド・ボイス』(早川書房2008)、リチャード・プライス『聖者は口を閉ざす』(文藝春秋2008)、篠田節子『仮想儀礼』(新潮社2008)、まだまだあります。ま、角川じゃないところばかりですが、そうなっている。カバー写真 STasker/Getty Images みたいに。

比べてみてください、

写真 Douglas Miller/Keystone Features/ゲッティ イメージズ と
写真 Douglas Miller/Keystone Features/Getty Images

どう考えてもアルファベット表記でしょ。ミルキィ・イソベによれば、こういうところまで気を配るのが装幀者のお仕事なわけです。なんだ、この無神経さは? なんて思います。おまけに、地図作成者が誰であるかは記載されていません。せめて、ブックデザインがもっと格好よかったら、こんなケチつけないんですけど、この装丁ってフツーですよね、限りなく。

っていうか古臭い感じ。ま、狙いが昭和39年の再現、なんだから古臭いデザインもあり、なんて考えているのかもしれませんが、ちょっとね。それなら思い切って古本のようなブックデザインでもいいかな、って。わざと日焼けしたような紙を使って、紙質も落として・・・

あとは小説がしっかりしていることを祈るばかりです。で、注には「本書は「野生時代」2006年7月号~2008年10月号に連載された作品を、加筆・修正したものです。」とあります。連載終了後、即単行本化されたものですね。あまり加筆・修正もなかったんじゃないか、そう思います。

本文は「昭和39年6月22日 土曜日」の章から始まり、「昭和39年10月11日 日曜日」の章で幕を閉じます。あとがきはありませんが、主要参考文献、主要参考映像、取材協力が巻末にリストになっています。たしか全く同じタイトルが三好徹の作品にあったような・・・。

それとオリンピックが昭和の「激動」の象徴、っていうのもなんだかな、です。それって団塊のもう一つ上の世代の思い込みじゃないか、なんて思いますよ。ま、それが浅間山荘事件であっても、安保であってもどこかからクレームがつくことは間違いないんですが。とはいえ、この本を読むと、確かにオリンピックが戦後日本が世界にはばたく契機ではあった、とは思います。

でも、日本人てこんなにオバカだった? という気持ちが、頁を繰るたびに浮かんでは消えていくのですが、どうでしょう。例えば主人公の島崎国男の行動。これで東大生? 或は須賀忠の言動、これで東大卒? ま、これなら日本が今のような国になってしまうのも致し方ないとは思うんですが、やはり余りに愚かです。

ともかく、最初はそう思う。地方の貧しさに対する描写も、嘘だろ、って言いたくなる。だって、夫を事故で亡くしてお骨を国に持ち帰るために上京した女性の言動を見てください、それって差別だろ、って思いますよ、絶対。それと公安の人間の意識。国体が大事? 一体いつの話?

ともかく、嘘っぽいんです。読み始めたうちは。いえいえ、それは最後まで変わりません。でも、でもですよ。読みながら心の奥底で、「でも、もしかして」っていう声が、囁きに近いそれが聞こえるんです。今も地方は貧しい、だから若い人は東京に出てくる。昭和39年のことではありません、平成20年でもそれは変わらない。

建設業の下請けに頼るという構造も同じ。ヒロポンはなくても覚せい剤はあります。最近ならば大麻。暴力団も姿を変えていますが元気でしょ。韓流なんていっても、北朝鮮への侮蔑的発言を見れば朝鮮人差別も変わらない。警察官の横暴・秘密主義も、マスコミ、特にテレビ関係者のモラルの低さも変化していません。タレント志望の女の子の意識も似ている。

もしかして、これって今の話にしても通じる? 最後のほうになるとそういう声がどんどん大きくなる。ロバート・ホワイティング『東京アンダーワールド』『東京アウトサイダーズ』、塚本有紀『ビゴさんのフランスパン日記』を思い出します。麻生支持の声がいつしか小沢支持に変わったように、これって嘘、がこれってマジ、っていう思いに変わっていく。

凄く調べた、という感じはありません。奥田はそういった知識・情報を前面に押し出そうとはしません。でも、随所に昭和39年の日本の姿をちらつかせます。その見せ方がいい。例えばオリンピック施設を建設している大手建設会社。当時はゼネコン、なんていう呼称はなかったんですが、それが一度だけ実名で出てきます。タレントの名前も一度、あの人かな、っていう描写も一回。

他の作家だったら、これでもか、って調べた結果を書き散らすんですが、奥田は抑える。その姿勢が逆にリアルさを生みます。あらためて、年末のテレビ番組を思い出します。昭和を回想する番組がいくつもありました。昭和30年代の東北は、確かに雪に埋もれ暗かった。バレーボール選手はみんな田舎のオバサンみたいだったし、サラリーマンの様子は戦前とそんなに変わっていなかった。

もしかすると、今の人が共感を持って理解できるのは昭和40年以降かもしれない、そう思いました。そして登場人物ですが、奥田本にしては珍しく共感できる人間が一人もいませんでした。謎です。

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