紙の本
ものがたりの歳時記
2008/12/26 08:49
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松清の人気シリーズ「季節風」もこの「冬」の巻である『サンタ・エクスプレス』で完結である。
この機会に、全四巻の帯のコピーを書き留めておく。括弧内は文藝春秋のホームページに掲載されていたそれぞれの装丁の色のイメージ。
春 … 記憶の中の春は、幾度となく巡り来てひとびとの胸をうるおす (青<青春>)
夏 … 忘れられない一瞬を焼き付けた夏が、今年もまたやってくる (赤<朱夏>)
秋 … 澄んだ光に満ちた秋が、かけがえのない時間をつれてくる (白<白秋>)
冬 … 鈴の音ひびく冬が、いとしい人の温もりを伝えてくれる (黒<玄冬>)
そして、それぞれのコピーの終わりには、いつも「ものがたりの歳時記」と。
今回も十二篇の短編が、「焼き芋」や「クリスマス」や「お正月」といった冬の風物詩とともに描かれている。
しかも重松清らしさを失わずに。
それは先の「春」「夏」「秋」も同じである。
親がいて、故郷があって、子供がいて、都会にあこがれて、友人がいて、おとなになって。それぞれが喜びとか悲しみとか後悔とか憧れとかをひきずって。
でも、重松清らしさとはなんだろう。
重松清の文学の核とはなんだろう。
それはおそらく重松が信じている日本人の心の機微のようなものだと思う。あるいは、読み手である私たちが「そうだったよな」と思い返せる感情のようなものだと思う。
例えば、青春の男女のほろ苦い別離(わかれ)を描いた「コーヒーもう一杯」のこんな文章。
「十九歳の僕は、ひとの心は言葉や表情よりもまなざしにあらわれるということを、まだ知らなかった」(38頁)
例えば、故郷に一人残した母親を正月にたずねる「ネコはコタツで」に描かれる、故郷から届いた荷物を開封するこんな場面。
「親父さんが「ぎょうさん入れてやれ」と言うのか、おふくろさんがどんどん詰め込むのか、どっちにしても、そういうところが田舎で-親なのだ」(109頁)
例えば、家族四人の現代風の正月風景を描いた「ごまめ」の主人公の思い。
「昔-まだ香奈が小学生で、敏記は両親を「パパ、ママ」と呼んでいた頃、正月を家族で過ごすのはあたりまえのことだった。あたりまえすぎて、それがいつかは終わってしまうのだと考えもしなかった」(131頁)
これらの思いは次の世代には伝わらないかもしれないし、そうしていつか苦い思い出のようになっていくのかもしれない。
重松清が描く世界はいずれ理解されなくなるのだろうか。
それでも、春。巡り来る季節に人は夢みて。
それでも、夏。汗で涙を隠して。
それでも、秋。思い出にひたって。
それでも、冬。温もりを求めて。
四季はまちがいなく繰り返すにちがいない。
◆「季節風 春・夏・秋・冬」全巻の書評はblog「ほん☆たす」で。
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冬にまつわる短編小説集。今の季節にぴったり。重すぎず、軽すぎず。さっくり読めて、面白かった。一番印象的だったのは、「じゅんちゃんの北斗七星」。恐らく、発達障害の子を描いた物語。回想的に書いているけれど、こんな話は今でもある。友達の視点から見つめた発達障害の物語はありそうで、実はあまりない。フィクションだとしても、妙にリアリティを感じた。
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春、夏、秋と順にきてさぁ集大成の冬はどれほど泣ける話が集まるか?と期待していたら少しテイストが違っていた。
がっかりしたのではなく、これはこれでよい。
ストーブの火の温かさのように、サンタさんからのプレゼントを見て笑顔になる子供のように、ほんわかした気持ちになれるお話が詰まっていた。
お話自体は重松さんのことだから苦味があるけれど、最後にあぁ、よかったとほわっと笑え、希望がもてる終わり方がよかった。
『ごまめ』はすっかり親離れされ、少々寂しさを感じるお父さんを初詣にからめて描いた作品。
まるで数年後の我が家を暗示しているかのような作品に苦笑い。
だから作中のお父さんが昔を懐かしむ箇所は、彼からの忠告と思おう。
『じゅんちゃんの北斗七星』はじゅんちゃんを思う両親の気持ちも、じゅんちゃんのことは理解してあげたいけど、でも自分の子供を一番に思う僕の両親の気持ちも、どちらも痛いほど分かってせつなかった。
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「じゅんちゃんの北斗七星」を読んでいて友達と重なって苦しくなった。
表題作の「サンタ・エクスプレス」良かった。
生まれてくる赤ちゃんに嫉妬しつつも、母親の体を心配する女の子の話。
きっと優しいお姉さんになる。
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重松清さんの作品は初めて読みました。
「季節風」は春夏秋冬の四季それぞれ12編の短編小説が載っています。
四季あわせて48編あるわけです。
「週刊ブックレビュー」の宮崎県の公開録画で特集ということで、事前に読みました。
何気ない日常生活の中での奇跡が描かれています。
40過ぎの大人が20年前、25年前を懐かしむという話が多いです。
「あっつあつの、ほっくほく」
高校時代のバスケ部の焼き芋の記憶を懐かしむ45歳の女性会社員が過去を懐かしんで焼き芋を食べるという話。
正しいことばや優しいことばは意外に残酷だ。
落ち込んでいる部下がいてもよほどでないと慰めたり励ましたりしない方が良い。
「冬の散歩道」
水の都、川の都、と呼ばれる都市が舞台です。
疲れ果てた中年男が色々なことを通りすがりの人に押しつけられます。
「嫌です」と言えない性格のために、疲れ果てています。
憎めない人物です。
「サンタ・エクスプレス」
身ごもった母親のところに父親と幼いなっちゃんが新幹線で通います。
東京から名古屋までです。
母親の体や生まれてきたあとのことを思うとなっちゃんは不安になります。
クリスマスを巡る心温まるエピソードが組み込まれています。
「ごまめ」
元日の午前中には家族そろってお祝いをいい、近くの神社に初詣に出かけていた家族に「ひとつの歴史の終わり」が訪れます。
高2の娘が朝から彼氏と出かけるというのです。
ジタバタしているさまにならない父親の心理を描いています。
でもこの娘がいつも出かけている神社に初詣に行き、絵馬に家族のことも書いているのを見て、父親はほおが緩みます。
微笑ましい話です。
「火の用心」
どんな高校に入ったか、入れなかったかは高校生にとって切実な問題です。
その心理や大人の無理解を描いています。
「じゅんちゃんの北斗七星」
50歳の男性が小学3年生の時のクラスメートのことを回想します。
じゅんちゃんは幼稚園の人気者でした。
普通の子とは違います。
小学生になり、3年生くらいになるとじゅんちゃんはみんなの勉強の邪魔になり始めます。
じゅんちゃんは、学校から去り、引っ越しもします。
同じ頃、じゅんちゃんの両親は離婚します。
この間の主人公の葛藤が良く描かれています。
「いじめ」の問題について考えさせる作品です。
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「あっつあつの、ほっくほく」と「ネコはコタツで」が印象に残った。
シリーズ物なので、とりあえず4巻読了した。
そろそろ長編が読みたい気分。
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最初の何話かはちょっと哀しいお話でいかにも冬って感じがしたけど、春に向かってだんだん暖かくなっていく様にほっこりさせられました。相変わらず「上手い」です。
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冬をテーマにした短編集。
すごく感動するとか
インパクトがあるとか
そんなんじゃなく。
でもあったかさが
ストレートに感じられると思う。
素直な感想は
ほわーっとする、って感じ。
(とってもわかりにくい。。)
人と関わっていたら必ず
感じるであろう、
ジレンマだったり
摩擦への恐怖だったり
日常に横たわっている
どっか切ないような
やりきれないような
もどかしい感じの
いい難い感情が描かれていた。
--
さっくり1時間。
ハードカバーやっぱりいいなぁ。。
「春夏秋冬」全部ほしくなる。
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12つの、冬の物語たち。
どれも素晴らしいお話ばかりでした。
タイトルにもなっている「サンタ・エクスプレス」も、すごく心が温まるお話。
どれも寒い冬に読むと、ほっこり心が温かく優しくなれるかも。
適当に借りている割には、ステキな本に出逢えていると思いますが、
これは本当に読んで良かったなぁと思った。
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鈴の音ひびく冬が、いとおしい人の温もりを伝えてくれる。ものがたりの歳時記―「冬」の巻、12編。
読んだ感想は今日書くけど、読み終わったのは年末。
まだ冬でした(笑)
重松さんの本は家族の温かさがいいのよね〜。
12編どれもいい!けど、
「あっつあつの、ほっくほく」「じゅんちゃんの北斗七星」そして表題作の「サンタ・エクスプレス」がオススメかな。
季節風シリーズの他のも読んでみよ〜っと☆
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重松清と一緒に歳をとっている感じがする。
年々深みが出てくる。
文章と物語のうまさに加えて、心に残るフレーズが増えてきた。
「十九歳の僕は、ひとの心は言葉や表情よりもまなざしにあらわれるということを、まだ知らなかった。」(「コーヒーもう一杯」)
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そのころと全く同じものはなかったり、同じようにふるまえなかったり
もう戻れないものってあるんだなぁ
でも進んでいくしかないし。。。
「冬の散歩道」こういう繰り返し系割と好き
中華まんのおばさんステキすぎ(笑)
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「ずっと「同じ」でありつづけた僕たちも、おとなになったいまは「一緒」ではない。どうせこうなるんだと最初からわかっていたなら、じゅんちゃんのように「違う」友だちもずっと「一緒」にいればよかったのに。という気もするのだ、いまは。」(「じゅんちゃんの北斗七星」より)
重松による、暖かくてちょっぴり切なくて優しい物語たち。
特に、泣けてしまったのは「ネコはコタツで」と「じゅんちゃんの北斗七星」の2編。
上記に載せた1文は、本当に切に心に染みたのだ。
「違う」子を排除する世の中、共に生きることは出来ないのか?
これって秘かな私のウラテーマだよなぁ。
私が思う、その違和感が言葉になって現れていた。
【10/10読了・初読・市立図書館】
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■重松清さんの全作品を感想文にしてブログで挑戦中です。
重松清ファン必見!
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12篇からなる短編集。
表題の「サンタエクスプレス」は主人公の子供の名前が一緒なのでなんかうれしかった♪
でも一番は「バレンタイン・デビュー」かな?