紙の本
若い読者のための読書案内
2009/03/08 09:51
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おそらくこの本の読者層であろう、若い人たちにこの書評を書きます。
若いみなさんからすれば、私はあなたがたのお父さんと同じか、それよりは少し年上になる、「オジサン」世代になります。
残念ながら、学校では「経済学」は勉強しませんでしたから、マーシャルやケインズといってもどのような経済学者なのか全くというほど知りません。
それでもなんの問題もなく(少しはあったかもしれませんが)、三十年働くことができました。
ためしに、みなさんのお父さんにでも聞いてみて下さい。きっと「むにゃむにゃ」って答えるでしょうから。
みなさんはそんなお父さんを軽蔑してはいけませんよ。ケインズは知らなくても、お父さんだってお仕事でうんと悩んだりすることはあるのですから。
この本を書いたのは「現代経済思想史を主に研究して」きた根井さんという大学の先生ですが、きっとみなさんのような若い読者にどうすればわかりやすく「経済学の考え方」を伝えようか、苦労されたと思います。
でも、根井さんは正直にこんなことも書かれています。「学問の楽しさと同時に難しさも認識してほしい」と。
そうです。やはりこの本は難しいです。「オジサン」にも難しかった。
この本を一冊読んだからといって、「経済学」がわかるということはないと思います。
ですから、各章の終わりには参考文献がたくさん載っているので、この本をとっかかりにして、きちんと読むのがいいでしょう。そうすれば、もっと全体像がわかるかもしれません。
この本で「経済学者にだまされるな」というJ・ロビンソンの言葉が紹介されていますが、その章の中で「たとえ著名な学者や研究者の言うことであっても、それを鵜呑みにすることなく、まず自分の頭で徹底的に考えてみること」(103頁)と、著者の根井さんは書かれています。
さりげない記述ですが、ここは「キモ」だと思います。
若いみなさんにはこの本を読んで「難しかった」で終わるのではなく、自分の頭で「経済」とは一体なんなのかをじっくり考えてもらいたい。
折りしも今は「100年に一度」といわれる不況下です。
「経済」問題を考える好機です。
そして、みなさんの力で、私たちの暮らしが豊かになるよう(豊かとはお金がたくさんあることではありません)、実現させて下さい。
◆この書評のこぼれ話はblog「ほん☆たす」で。
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経済学の考え方がどのような歴史をきざんできたかが分かりやすい。
雇用や資源、幸福追及のためにどうすればよいかという目的に対して、モデル・理論による分析的解明の大切さと現実への適用の難しさを思った。
はやり・人気は時流・社会を反映したものと知り、自分なりに考えることの大切さを感じた。
09-21
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経済学は全然知識がなかったけど、これは読みやすいし面白い。
経済学という学問の問題意識のキモがわかった感じ。
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未開人の欲求はごく少数だが、文明の進歩ととともに人間は多様性を求めるようになる。多様性に対する欲求も満たされると、次には他と違うという意味での差別に対するう欲求が生まれてくる。
ケインズにとって、経済学とは目的ではなく手段だった。
最近の中国では、社会主義市場経済というよりは拝金主義のような考え方が蔓延し、世界的にみても深刻な環境汚染や経済格差の問題が生じてきた。かつての計画経済の失敗はもはや明らかだが、何事にもバランス感覚が必要で、市場経済の利点を活かすべき分野と政府がきちんと規制しなければならない分野とは慎重に区別する必要がある。
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~人間社会にとって幸福とは?自由とは?平等とは?
景気や雇用不安を考えるための入門書~
と帯には書いてあるけれど、幸福・自由など倫理的な事柄は余り書かれてない。
だが著者は、現代経済学者ら(主にマーシャル、ケインズ、J・ロビンソン)が
どのような目的を現実に対する苦悩とともに抱いて経済学者として生きたのかを論じることで、読者自身に、経済社会の中での人間の幸福や自由・平等について考えてもらいたいのではないだろうか。
難しくなりすぎないよう配慮はされているとは感じたが、第二章からは経済の専門的な内容が含まれているので、予備知識がないと途中で読み飛ばしたくなるかもしれない。
でも、本自体はページ数が少なく読み切るのは簡単なので、経済学の本への一歩としては悪くない。
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<真のエコノミストたらんとすれば、真のジェネラリストたれ>
☆「彼はある程度まで、数学者で、歴史家で、政治家で、哲学者でなければならない。彼は記号もわかるし、言葉も話さなければならない。彼は普遍的な見地から特殊を考察し、抽象と具体とを同じ思考の動きの中で取り扱わなければならない。彼は未来の目的のために、過去に照らして現在を研究しなければならない。人間の性質や制度のどんな部分も、全く彼の関心の外にあってはならない。彼はその気構えにおいて目的意識に富むと同時に公平無私でなければならず、芸術家のように超然として清廉、しかも時には政治家のように世俗に接近していなければならない。」77
→これはケインズが理想とした経済学者像について叙述した文章であるが、ケインズが描いたものはまさに私が理想とする人間像と一致する。
☆ケインズが失業を憎んだのは、それが醜いからであり、失業問題と取り組んだのは、それを早い時期に解決し、もっとそれ自体としての内在的価値のあるものを存分に楽しめるような世界を創り上げたかったから75
→ケインズが情熱を注いだ対象も、驚くほど自分の興味と一致している。ケインズの『一般理論』を輪読する岩井ゼミに入れたのは、僥倖を通り越して運命かもしれない。
本書はスミスから最近ではクルーグマンやセンまで、経済学史上の超重要人物を10人ほど挙げ、その基本的な立場について概説した書である。全 124ページ、価格が税込み714円。読書時間対効果・費用対効果で考えたら、恐らく2009年上半期1位になるのではあるまいか。超おススメ。
・筑摩書房は、大学院生の頃から私の仕事に注目してくださった出版社のひとつであり、124
→筑摩書房にも天晴れじゃし、学生時代に受けた恩を忘れない著者にも天晴れ。あなた達は「いい人」だ…
・マーシャルによる、生産費説と限界効用説の包摂。21
・マーシャル「自然は飛躍せず」。漸進主義の象徴的文章。24
・マーシャル「経済学は富の研究であると同時に人間の研究の一部である」33
・賃金率と利子率の伸縮性を前提とした「セーの法則」に有効需要の原理で挑戦したケインズ。47
・有効需要原理の二つの柱は乗数理論と流動性選好71
・Amartya Senの「コミットメント」116
・Hayek「人間理性の可能性を過信したデカルト派の合理主義の系譜が、個人主義の対極にある社会主義をもたらした」。彼は「自生的秩序」を重視した。110
★哲学、文学、芸術などあらゆる分野に関心を持っていたせいか、優等卒業試験(トライポス)での数学の成績が芳しくなかったと言われるケインズ。彼が所属した秘密学生団体「ザ・ソサイエティ」。そこに大きな影響力を持っていた哲学者ムーアが最も内在的価値を持つものとしてあげたのが「美的対象の享受」と「人間的交わりの喜び」74
・Friedmanの貨幣数量説。MV≡PO。VとOが一定だと仮定すると、MとPが比例関係。(厳密に言うと、M→Pの因果関係)。これで貨幣供給量によって物価コントロール可能!ケインジアンがインフレ処理に手こずっている間に勢��拡大。92
・80年代、レーガンやサッチャーの時代にHayek=Friedmanの思想が絶頂。
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[ 内容 ]
私たちはなぜ、何のために経済学を学ぶのだろうか?
「冷静な頭脳と温かい心」「豊富の中の貧困」など、経済学者たちはこれまで、考えを尽くし、さまざまな名言を残してきた。
彼らの苦悩のあとを辿り、経済学の魅力を伝授する。
[ 目次 ]
第1章 冷静な頭脳と温かい心(貧富の差への憤り 経済騎士道の精神 ほか)
第2章 豊富のなかの貧困-ケインズ革命(マーシャルからの「逸脱」 「セーの法則」への挑戦 ほか)
第3章 経済学者にだまされないこと(J.ロビンソンの「主流派経済学」批判 何のための雇用か ほか)
第4章 時流にながされないこと(資本主義と社会主義 ハイエク=フリードマンの思想 ほか)
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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ちくまプリマー新書、ということは中高生向けなのに、僕には難しくて全然分からない! 以前から経済については苦手だなあと思ってましたが、これなら読めるだろうと手にしたこの本で挫折する始末。図解雑学とかからはじめますか。
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ケインズとかの経済学を取り扱っていたかなぁ。ちょっと忘れましたが、説明がわかりやすかったのは覚えています。経済学の本にしては面白いです。
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経済学を学んだことのない私にとって、有効需要の解説など少し不十分だと感じるところがありました。とは言え全体の分量が少ないので、それ程苦労せず読み終えることができました。
経済学の巨匠たちが何を考え自らの理論を打ち立てたのか。経済学を学ぶ理由を問いかけてくれる良書だと思います。
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20世紀以降の経済学説について、ケインズを中心に説明している。
各学説のどこが違うのか、なぜそうした違いが生まれたのかを、時代背景などを含めて説明しており、とてもわかりやすい。
ただしケインズびいきなので、他の著者の本もあわせて読んだほうが良い。
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マーシャルやケインズなど、著名な経済学者の唱えた理論や経済学にたいする考え方がまとめられた本作。背表紙に「なぜ経済学を学ぶのか」という問いがあるが、その答えがこの本の主題であるとは私は思えなかった。
どちらかといえば、三章の「経済学者に騙されないこと」四章の「時流にながされないこと」が著者にとっては重要なメッセージであるように思 える。
教えられたことを鵜呑みにするような勉強では、経済学を本当に学ぶことはできない。ケインズやロビンソンは、これまでの経済理論を知るために経済を学んだのではなく、世の中の貧困や失業を解決するための手段として経済学を学び、独自の理論を組み立ててきた。
生活をしている中で「おかしいな」と感じたこと、「これは解決しなければならない」と思ったこと、それに対して自分が納得いくまで考え調べること、それが経済学なのだと私は思う。これまでの経済学者の理論が貧困や失業の解決策を示しているわけではないのだ。
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「ケインズの師匠筋」にあたるマーシャルの経済思想とそれが生まれた時代の様子を軸に経済学の発想をわかりやすく解説してくれる。特に、価値論における「生産費説」と「限界効用説」の関係を需要・供給グラフを用いて説明するあたり(P20~)がわかりやすかった。
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"カンザキメソッド"志望理由書のルール
文系「経済学」で推薦図書として紹介されていた本。
第三章「経済学者にだまされないこと」という章立ては興味深い。経済史の触りを知り、現代に通じる経済学を考えるにはよいきっかけとなると思う。