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紙の本
難儀でござる (光文社文庫)
著者 岩井 三四二 (著)
甲斐勢は、攻め入ってきた駿河勢の退路を断ち、二千の兵を勝山城で孤立させた。甲斐国守護・武田信直は、今川の使者である老僧・宗長に兵の解放の条件として二万貫文を要求する。甘利...
難儀でござる (光文社文庫)
難儀でござる
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商品説明
甲斐勢は、攻め入ってきた駿河勢の退路を断ち、二千の兵を勝山城で孤立させた。甲斐国守護・武田信直は、今川の使者である老僧・宗長に兵の解放の条件として二万貫文を要求する。甘利備前は宗長との交渉役を命じられる。だが、相手はのらりくらりと連歌に精を出すばかり—(『二千人返せ』)。歴史的事件の陰で理不尽な無理難題に振り回される男たちを描いた短編集。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
二千人返せ | 7−50 | |
---|---|---|
しょんべん小僧竹千代 | 51−93 | |
信長を口説く七つの方法 | 95−135 |
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紙の本
いっぱいいっぱいの状況から見えてくるもの
2011/03/27 15:47
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
また一人、お気に入りの作家が増えた。
本書「難儀でござる」は、切羽詰まった状況に置かれた登場人物が見せる滑稽さや、その状況から見えてくるものの本質を描いた戦国歴史短編集である。
テンポ良く進行する八編の短編は、歴史の枝葉である逸話やこぼれ話に材を取り、歴史好きにはたまらない。
収録作品の滋味は、歴史の枝葉を描きながらも、その最後に『その後』が記して、これまで見せてきた枝葉がしっかりと幹につながっていること。独立した逸話で終わっていないところがいい。
全体に漂うユーモラスな雰囲気も妙味である。どこかとぼけた掛け合いが魅力の作品もあれば、いっぱいいっぱいの状況において炙り出される人の本質が滑稽な作品もある。登場人物が真面目であればあるほど、滑稽さと人間臭さが増していくのである。その滑稽で人間臭い登場人物からは、今も昔も変わらない日本人の血のつながりが、否応なく意識させられる。
【二千人返せ】
武田家家臣甘利備前守は、甲斐勝山城に立て籠もった駿河勢処分を巡り、今川との交渉役に任命された。主の信直(信虎)の命は今川に二万貫文を賠償させること。それは揺るぎない。その交渉相手として甲斐にやってきたのは、宗長という喰えない老僧だった。
この難儀な経験がまさかあれに……という驚きに襲われた。
【しょんべん小僧竹千代】
竹千代は、織田で人質生活を送り、今川にやってきても、人目も憚らずしょんべんを放ち続ける。
一方、修行僧・大雲は、今川の軍師でもある雪斎禅師との『無』の問答に、頭を悩ませ続けていた。
禅師と大雲の大真面目だがとぼけた問答がユーモラス。何かのきっかけで『無』を悟ることもあるのだ。
【信長を口説く七つの方法】
先帝十三回忌法要の費用二百貫文を調達する羽目になった大納言山科言継。無心の相手は気難しく恐ろしい信長である、念には念を入れて奔走する。そのために岐阜に宿を取り、信長との交渉を行っていたが、そこで上様は吝い男だと言い放つ美濃衆の男と知り合った。
尾張弁の信長と京言葉の山科卿のやり取りが新鮮。山科卿が推量する信長の心中もまた新鮮。
【守ってあげたい】
稲葉彦六は、信長から謀反の疑いをかけられていることを知り、動揺した。そんなとき信長から茶席の招きが。ますます動揺する彦六とは反対に、父一徹の剛胆さは変わらない。
異様な空気漂う茶室での信長との対面が絶妙。息子は父の弱き姿を見て己の成長に気付くのだ。
【山を返せ】
小池村が芝を刈る里山への入山禁止の取りさげ訴訟を始めてはや半年、未だ解決の目処は立たず、今では牛の糞で飯を炊いている。なかなか進展しない訴訟に、甲斐小池村の名主三郎兵衛は同じ村の名主にこぼす。『前のお屋形さまは良かった。それに引きかえ新しいお屋形さまは』
小さな村のもめ事から見る三郎兵衛の女房の、新しいお屋形さま評と甲斐の国情が鋭すぎる。
【羽をください】
甲斐兵・滋野上総介が半年の約束で高天神城に入って二年が経つ。城は徳川勢に包囲され、城から抜け出すこともできず、娶ったばかりの美しい妻への思いは募るばかり。
斜陽する国の無常さは筆舌に尽くしがたい。戦国の世に生きる女性の強かさも筆舌に尽くしがたい。
【一句、言うてみい】
恵林寺の修行僧・湖南は快川老師の出した公案に悩んでいた。その悩みは老師本人に及び、俗事に長けた口のうまい老人ではないかと思い始めた。しかし老師が本物かどうか確かめる術はない。その矢先、織田の兵が六角を渡せと寺に圧力をかけてきた。
湖南の確かめることができた快川老師の悟りは、あまりにも有名。『心頭滅却すれば火も自ずから涼し』
【蛍と呼ぶな】
京極高次は、西軍一万五千の押し寄せる大津城にあって耐え続け、開城の使者も追い返してきた。東軍に味方するという家康との約束は守らねばならない。それが武士の意地である。しかし家臣たちは知っている。どちらに転ぼうがお家安泰であることを。
なまじ武士の意地があるだけに京極高次の苦悩は大きい。しかし意地を張れば張るほど蛍大名は滑稽に輝くのだ。
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運 不運
2021/05/15 17:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦国時代 安土桃山時代を舞台に8篇の短編を一応時系列に並べた作品集である。登場人物たちの真剣なやり取り 会話に、たくまぬユーモアが漂ってくるところがとても良い。それにしても生き残って 家を残すのも、死んでしまって 家がなくなるのも ほんのちょっとした運 不運で決まってしまうのだな としみじみ感じてしまった。