紙の本
ユング心理学を学ぶなら、ここから
2013/12/25 01:20
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あずきとぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、スイスのユング研究所に学び、日本に初めて「ユング心理学」を紹介した、ユング心理学の第一人者である。
本書は、書題にもある通り「ユング心理学」の入門書であり、その理論における種々の基礎的概念や考え方を、分かりやすく説いたものとなっている。
ユングは、心を意識と無意識に分けて考えた。
無意識(意識下)というと、フロイトが有名だが、ユングは無意識をさらに「個人的無意識」と「普遍的(集合的)無意識」とに分けた。
この「普遍的無意識」には、人類に共通の(普遍的な)いくつかの型があり、「影」「ペルソナ」「アニマ」「アニムス」などといったこれらを「元型」と呼んだ。
そして、この元型が「意識」に作用し具象化したものを「心像(原始心像)」と呼び、これがイメージとして知覚されるのが「夢」であるとした。
その為、ユング派の心理療法は「夢分析」をその方法の一つとしている。
但し、ユング派の夢分析は、フロイトのそれとは異なり、一つの夢の内容を決まったパターンに当てはめるような進め方はしない。
詳しくは、本書に当たって欲しい。
……と、このように門外漢である自分にも、これだけのことが説明出来てしまうほど、本書はとても分かりやすい入門書である。
また、豊富な実例(臨床例)を扱いながら解説しているところも、本書の特長であり優れたところであろう。
ユング心理学に興味を持った人に、ぜひ勧めたい書である。
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岩波現代文庫から心理療法コレクションとして刊行されているシリーズの第一作目でもあり、著者の初期著作とも言えるのが本著である。事例を加えながら、体系的にユング心理学が紹介されており、言葉自体も噛み砕かれているので、ユング入門書としては本著がその明晰性からも、実践性からも、一番と言えるかもしれない。個人的には二巻目のカウンセリングの実際の方もかなり気になっているのだが、新刊ではあまり本を買わない主義なので、いつ出会えるかは未定。ユング心理学の特徴自体については、幾度も触れているので目新しさはなかったが、やはり事例との結びつき具合がいい。特に、夢分析についてのフロイトの違いが事例を元にして示されるだけに、かなりありがたい。フロイトの場合はとにかく自由に連想させていくというスタイルをとるが、ユングの場合は自由に連想していくだけならば夢に拘る必要がないという理由で、むしろ、一つの言葉からの連想を続けてゆく。例えば、椅子→座る→安心というのがフロイトならば、椅子→座る。椅子→ベンチ。といった具合に椅子から円状に連想していってもらうわけである。このことによって、ある意味象徴的なものとして、夢を捉えていくこととなる。また、フロイトは基本的に夢は無意識的な願望の充足と考えたいたようだが、ユングは無意識的な補償作用と考えていたようだ。両者はほぼ同義であるが、願望の充足が満たされないもののを夢で埋めているといった、少々マイナス要素が強いのに対して、ユングにおける補償作用はむしろこの夢の働きによって、意識的な面にプラスの効果が働くと捉えるといった具合だろうか?ユングの理論には胡散臭いところも多々見られるが、ユングのよいところは、プラスの中にマイナスを見、マイナスの中にプラスを見、そうして全体としてプラスへと導こうとするといった彼の考え方である。フロイトのようにエディプスコンプレックスやらの幼少時の「問題」としてある意味「病気」のようなものと見なさずに、それはその人がその人たりうるための旅路のようなものだと考えるあたりに彼のオプティミズムがあり、そうかといって、その際の苦難を軽視せずにそうして直視して捉えていくところに彼のペシミズムがあり、その両者が有機的に統合している。ただ、シンクロニシティ=同時性や曼荼羅、普遍的無意識のあたりが少々厳しいものが在る。ただ、言わんとするところは理解できるので、なんとも難しいところである。なんとはなしに、個人的無意識と普遍的無意識の間に差があるように思えるし、投影テストにおける幾何学的な性質への解釈と、そこから曼荼羅という普遍的な形を見出してゆくことの間にいくらか差があるように思われる。とはいえ、後者の場合などはほぼ二アリーイコールのはずなのだけれどね。
ちなみに、ユングの時間論はなかなかに面白い。カイロスとクロノス。後者は時計の時間で、前者は主体的な時間である。現代は後者に縛られすぎているきらいがある。前者と後者を両方をバランスよくこなしてゆくことが求められるわけだけれども、そのあたりも非常に困難であるが、クロノスばかり求めてしまってはいけないと���合は警鐘を鳴らしているものの、人生を段階にわけてその年齢における味わいを得るべきである(若さに拘泥しない)というユングのこの考え方はしかし、どことなくクロノスに縛られているようにも思われる。二十台で六十台で多くの人が味わうべきものを味わっている人もいれば、その逆もいていいはずであろう。そもそも、我々が同様の発達段階を仮に辿るとしてもそれがほぼ同じ時期にやってくるというのは、クロノスに縛られすぎやしないか?と思われてならないのである。
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先生がこれを書いたのは67年、39歳のときである。決して若書きとは言えないだろう。(レインは20代で「ひき裂かれた自己」を書いている)
そしてここからいまにつながる日本の心理臨床の本流がスタートした。あまりに大樹なので、イヤがオウにも〈寄らば〉となってしまいそうだが、現代の日本で心理学を学習するとは河合学とのスタンスをどうするかということにつきるのかもしれない。
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聞き慣れた言葉の元々の出自(?)が分かり大変興味深かった。漱石の「こころ」という題名の意図は初めて知った。
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けっこう飛ばし読みしてしまった…
興味あるはずなのにな…
186 連鎖の鎖を追うのではなく、一つのことを中心に連想を連ねる
フルブライド留学生
高校教師時代、高校生の相談でカウンセリングをはじめていた
自分を分析されるのは、河合先生でも怖かった
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最近、トランスソフィア研究所で「心のシステム・デザイン部会」なる研究会を開こうということで、トランスパーソナル心理学の元祖的存在でもあり、心理学の基本的存在であるユングをベースにすることになって、この本をテキストとして採用した訳であります。まあ、河合隼雄先生を霊的にお呼びしようかと画策していたのですが、どうもお流れになりそうな雰囲気であります^^;
さて、本の感想ですが、いやあさすがユングであります。自我と自己、意識をしっかりと定義しているようです。いやもしかしたら河合隼雄先生が整理しなおしたのかもしれませんが。
ただ、自分としては、心理学はインド哲学から1000年遅れていると感じるぐらいにレベルが低いと思っているのですが、まあ、そういう意味では東洋思想の極一部分を西洋的に解釈したようなものなのかもしれません。
レベル:325
まあそんなもんでしょうか。
当時の西洋思想に与えた影響という意味では非常に価値が高いのかもしれませんが、真理からはまだまだ遠いのであります。
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健全なペルソナを発育する必要性を感じる。
コンプレックス(抑圧)の認知と、自我との再統合。
コンプレックスと対決していくこと。
ユングによればその時期に対決すべきコンプレックスはちょうどその時に誘発されるというから、決して欠点を数え上げて、それを卑下する必要はない。そうではなくて、自我を揺らがすようなコンプレックスとの対峙を「仕込まれて」「浮上させられた」ときに、それと対決すればよい。
現在出てきている自分のシャドウは何か。それは興味のないことには興味のないこと、本質的なコミュニケーション以外はとりたくない自分、そして自分の感情に素直すぎる自分なのであろう。隠せない自分なのであろう。
これを踏まえて、どのようにペルソナを形成していけば良いか、ということになるが、相手に不快を与えずに、きちんと独立した自分の意見を伝える、主張するということが一点。つまり摩擦を起こさずに。
うまく使い分けるのは大事なことかな。ペルソナの柔軟性をもつこと。僕は、内向型の感情型で、二次機能としての直観があると思う。主機能を発達させ、補助機能を助けとしつつ、劣等機能を発展させる。これが個性化の過程。反応は基本的に感情でしてしまう節がある。だから、もちろん「感情」は認識した上で(今まではこれを殺してきたし、感情を認知しないようにしていたことが問題だった)、そのほかの対応も出来るようになれば良いということかな。
生きていない自分を生きること。
影の無い人は人間味がない
今までその人としては否定的に見てきた生き方や考え方のなかに、肯定的なものを認め、それを意識のなかに同化してゆく努力がなされなければならない
欠点や否定的な面を知り、それに直面して、そのなかに肯定的なものを見出し生きて行こうとする過程。
象徴が生じる前には、相反する二つの傾向が意識され、その完全な対立を、簡単にどちらかに加担することなく
経験する。一種の停止状態。
●以下引用
私の日本的甘えを払拭するのに役立った。先生に認めてもらうには、クラスで発言するしかない。
二つの対立する考え方や立場などのどちらかが正しいかを断定せず、両者の補償作用によるダイナミズムに注目
堅固な体系を真理として提示することではなく、人間の心、ひいては生き方に対する根本姿勢を問うている。
父性原理は「切断」の機能をもつ。→「自我」の確立
ユング心理学の特徴のひとつに、事象を継時的に見て因果関係を知ろうとするだけではなく、共時的に見て全体的な布置を読み取ろうとするところがある
あるひとの関心や興味が外界の事物やひとに向けられ、それとの関係や依存によって特徴づけられる
新しい場面に入る時の行動によって、両者の相違が特徴的に出てくる。内向型のひとはどこか、ぎこちない感じがつきまとう
内向的なひとは、過度に自己批判的で、自信なさそうに見えながら、いった���思い込むと少々の障害にはたじろがない。とかく客体との関係がスムーズにゆかない点に特徴がある。
これらは生まれつきの資質
★その個人の素質による態度を逆転させると、はなはだしい疲労現象が現れ心の健康が画うされる
四つの機能、思考、感情、感覚、直感
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ユングについて更に知りたくなる一冊。
合理性や客観性を重んじた説明や文章を用いて、難解で抽象的なユングの理論を明快に浮き彫りにしている。
夢分析について述べている箇所は、普段何となく見ている夢がどんな意味を持ちうるのか、あるいは社会生活や日常生活においてどのような課題を抱えているのかをある程度把握するのに役立つと感じた。
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これを読んで、自分の中にある屈折した部分、抑圧された部分に輪郭が与えられた気分になった。
自分の中に影やアニムスは確固として存在している。それを自覚し、統合することが大事なのだということがわかった。もっとユングの心理学に触れてみたいと感じた。
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うーん、どこまでがユングの考えなのかわからない。なんか一般論を言っているようにも読める。あと「日本で最初に著されたユング心理学の本格的入門書」らしいが、伝記がないのも不満。抄録らしいが、原本にはあるのだろうか。
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”河合隼雄さんの処女作。
巻末には、河合さんによる「読書案内」と、茂木健一郎さんによる解説も。
<キーフレーズ>
・ユング心理学においては学問と人間とが切り離せない(序説 x)
・影(shadow)=個人の意識によって生きられなかった半面(p.86)
<きっかけ>
人間塾 2016年3月の課題図書”
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培風館 (1967年10月1日発売)も読みました。
https://booklog.jp/item/1/4563055115
原本は、1967年10月に培風館より刊行された.その後、『河合隼雄著作集1 ユング心理学入門』(1994年7月岩波書店刊)に第1・2・10・11章および付録を割愛して収録された。
コレクション版は、底本にこの『河合隼雄著作集1 ユング心理学入門』を使用したとあるので、生前に河合隼雄さん本人が省略版をすでに作成していたということになる。
つまり、俊雄さんが元本の章をカットしたのではないのだ。
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夢分析について知見を深めたく手に取った本。こういった類の学術的な専門用語の多い本は難解なものが多くなかなか読みにくいものが多い反面、河合さんの本は「高校程度の学力があれば読める文章」として噛み砕いて書いてくれているので非常にわかりやすい。実際のケースをもとにどのように連想していくか、紐解いていくかの流れが読めてとても参考になる。しかし、量をこなせなければコツを掴めないんだろうと言うことも同時にまなばされる。意識と無意識の大きさを表す円の図には驚かされた。
連想を使って夢分析を行うという点が興味深い。もう少し知識を深めたいので、他の河合さんの本も読んでみようと思う。
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読みやく分かりやすい。文章の出来が良い。
ただあくまで”入門”なので、深いところはわからず、そんな感じなのか〜的な情報を仕入れるには良い本。
本当に理解したいなら、もっと色々読む必要がある。
そういった意味では、読書案内が最後についているのも良い。
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石井ゆかりの『夢を読む』の参考文献の一番上に載ってたので…と思って読み始めたけど、これはその本の抜粋だったことを、読み終わってから知り…ショック。
でも、面白かったし興味もかなりそそられたから、次こそ培風館の方の『ユング心理学入門』読むぞー!
読書案内に載っていた、河合隼雄『コンプレックス』岩波新書 1971年 も気になる。