このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
【角川財団学芸賞(第8回)】「あれ」は何だったのか、なぜ起きたのか−。当時の政治・経済状況や、「全共闘世代」の文化的背景などを検証し、「あの時代」をよみがえらせる。下巻は、高校闘争から内ゲバ、ベ平連、連合赤軍、リブまでを描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
小熊 英二
- 略歴
- 〈小熊英二〉1962年東京生まれ。東京大学教養学部総合文化研究科国際社会科学専攻大学院博士課程修了。慶應義塾大学総合政策学部教員。著書に「日本という国」「市民と武装」「清水幾太郎」など。
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
目次
2009/06/30 11:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ビーケーワン - この投稿者のレビュー一覧を見る
第12章 高校闘争
高校生運動の出現/高校生活動家の実例/蓄積されていた不満と叛乱の芽/「卒業式叛乱」の頻発/六九年秋以前の高校闘争/最大の叛乱となった青山高校闘争/高校闘争の連続発火/高校闘争の顛末
第13章 六八年から六九年へ――新宿事件・各地全共闘・街頭闘争の連敗
三派全学連の分裂とセクト間抗争の激化/六八年の「国際反戦デー」/「新宿騒乱」事件/世論の離反を招いた新宿事件/ブームとなった全共闘運動/自己目的化したバリケード封鎖/各地の「全共闘運動」の理想と現実/六九年の全共闘運動の結末/「全国全共闘」の結成/完敗に終わった「沖縄デー」/打ちつづく街頭闘争の敗退/「ゲバ棒とヘルメット」の時代の終わり
第4部
第14章 一九七〇年のパラダイム転換
「戦後民主主義」という言葉/マルクス主義者とブントの「民主主義」批判/マルクス主義者の「近代主義」「市民主義」批判/六〇年安保後の『民主主義の神話』/ベ平連周辺の「戦後民主主義」再検討/新左翼と全共闘の「戦後民主主義」批判/破壊された「わだつみ像」/アジアとマイノリティへの注目/「ナンセンス・ドジカル」から入管法闘争へ/「民族的“原罪”」としての差別と戦争責任/華青闘の新左翼批判と七〇年のパラダイム転換/転換の背景と問題点/武装闘争論の台頭/内ゲバの激化
第15章 ベ平連
ベ平連の結成/穏健とみられていた初期ベ平連/ベ平連の転換点/若者の流入と各地ベ平連の結成/ベ平連を躍進させた脱走兵援助/脱走兵援助の舞台裏/佐世保での活動と佐世保ベ平連の誕生/「新しい型のコミュニケーションを作り出す運動」/「六月行動」での市民団体共闘/年長者と若者の対立とセクトの介入/ベ平連の「急進化」/年長者と若者との緊張と協調/花を抱えたデモ/全共闘運動との関係/脱走兵援助の実情とスパイ/新宿西口フォーク・ゲリラ/衝突現場に突き進んだ花束デモ/不定型の運動/六九年六月一五日の成功/ベ平連の拡大と「黒幕探し」/「ハンパク」での糾弾騒動/「オールド・ベ平連」批判/高揚から停滞へ/一つの季節の終わり/分散化していくベ平連/『冷え物』論争/「一粒の麦もし死なずば」
第16章 連合赤軍
赤軍派の誕生/内ゲバ初の死者と赤軍派結成/壮大な計画とその失敗/ハイジャック成功と解体していく赤軍派/重信房子の出国と森恒夫の赤軍派トップ就任/ヒューマニストだった坂口弘と永田洋子/革命左派の結成/革命左派の群像と武装闘争/永田の最高指導者就任/強盗を行なった赤軍派/革命左派の交番襲撃/赤軍派との接触と革命左派の処刑未遂/追いつめられる革命左派/山に集められた革命左派/煽りあう赤軍派と革命左派/二人の処刑実行/「連合赤軍」結成と事件の背景/永田による遠山批判/リンチの始まりとその理由/失なわれた最後の機会/大槻と金子のリンチ死/森と永田の結婚と逮捕/「ミニ・ディズニーランド」での銃撃戦/警察の報道操作と「覗き見趣味」の報道/過剰反応を示した若者たち/連合赤軍事件の虚像と実像
第17章 リブと「私」
女性活動家たちの境遇と不満/「性解放」と「性的搾取」/リブの誕生前夜/リブ・グループの主張/「言葉がみつからない」苦悩/田中美津とその経歴/田中のリブ活動の開始/武装闘争論への傾斜/田中の転換/「革命の大義」からの脱却/「自分の分身」としての連合赤軍解釈/連合赤軍解釈から消費社会の肯定へ
結論
「あの時代」の叛乱とは何だったのか/民主教育の下地とアイデンティティ・クライシス/なぜ「政治」だったのか/「政治運動」としての評価/「自我の世代」の自己確認運動/「彼ら」が批判されるべき点/国際比較/高度成長期の運動/高度成長に適合した運動形態/大衆消費社会への「二段階転向」/「一九七〇年パラダイム」の限界/それぞれの「一九六八年」 彼らの「失敗」から学ぶもの
註
あとがき
関連年表
索引
紙の本
ターニングポイント1968
2010/01/25 19:28
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
1968【下】では、高校闘争、ベ平連、連合赤軍、リブ(つーか田中美津)などがテーマで、またまた知っているようで実はよくは知らなかったピースが埋まる。気になったところを抜書きしていく。
「作家のむのたけじは、地元の農民たちが全共闘運動に示した反応を、72年にこう記している。
「『青くせえガキどもが棒をふりまわして、それで政府がぶっ倒せたら苦労しないよ。だいいち学生と機動隊の衝突というけど、おれたちの目からみれば、親のスネをかじれた〔大学へ行く学費をだしてもらった〕長男坊主と、かじれなかった次三男坊なぐりあいだものな。-略-工場労働者が学生集会で意見を求められ、『ぼくは現在の君らを信用しない。
学生としていまやっている言動の一つでよい、それを官僚や会社員になっても変えないなら、そのときは君らを信用しよう』と述べるのを聞いたことがあるが、その思いは農民にも共通している」
一見まともな意見に聞こえるが、どうだろう。その説に従えば、帰国するまでの重信房子などは「信用」できる人になる。この世代の随分下の世代を「モラトリアム世代」と称していたが、全共闘世代とて元祖モラトリアム世代と言える気がする。詳しくはバンバンの『イチゴ白書をもう一度』の歌詞を見られたし。「学生と機動隊の衝突」の実体は、ルサンチマンなのか。
「連合赤軍事件は、追いつめられた非合法集団のリーダーが下部メンバーに疑惑をかけて処分していたという点では、偶然でなく普遍的な現象である」
「だがそれは、「<理想>を目指す社会運動」が陥る隘路などという問題とは、無関係だと筆者は考える」
「感傷的に過大な意味づけをしてこの事件を語る習慣は、日本の社会運動に「あつものに懲りてなますを吹く」ともいうべき疑心暗鬼をもたらし、社会運動発展の障害になってきた。しかし、時代は、そこから抜け出すべき時期にきているのである」
改めて連合赤軍事件の経緯を読んでみると、ナチスのアドルフ・アイヒマンを連想させる。
一個人と見れば、常識ある人間だが、ある特殊な状況下では、殺戮魔となる。ハンナ・アーレントに倣えば、でもそれは、ぼくにもあなたにもその可能性がないとは言えない。
また、リブの草分け田中美津が彼らと会っていたこともなんか意外だった。彼女は「革命」を声高に叫ぶ赤軍派にリアリティを感じなかったようだ。漫画。とでも言えばいいのか。
そう涼宮ハルヒがSOS団の目標を「世界征服」と言っているのと同じようなものかもしれない。
ベ平連の活動も何となく知っていた気がするが、その全貌をはじめて知った。緩やかな連帯は、当時の短兵急なゲバ学生にはカッコ良く見えなかったのだろうか。ベトナム戦争時、米軍の脱走兵保護で名を馳せたが、脱走兵はすべてが反戦思想の立派な人間ではなく、いわゆるダメ兵士がいたというのも、考えてみれば当然だろう。ベ平連の柔構造的組織のあり方は今にも通じるものがあると思うのだが。通っていた予備校の英語の先生が確かベ平連関係者だったと記憶している。自由かつ都会的な講義内容は十分に魅力的だった。
「日本の「1968年」は、まさに「勝利」だったといえる。それは高度成長の進展の障害となっていた戦後思想の倫理を排除し、大衆消費社会への移行を「二段階転向」によって促進し、同時平行的に進んでいた農業や自営業の衰退とあいまって、日本社会の全賃金労働者を大幅に増大させたのだから」
作者の落としどころ。んでもって90年代からゼロ年代で「日本社会の全賃金労働者」は収斂していく。
現存している当事者にインタビューを試みることなく、アーカイブ資料をベースに構築された手法が批判されているようだが、これはこれで当時のライブ感、シズル感を再現するならば、あり!だと思う。以上。