紙の本
気取った語り口
2022/01/10 18:35
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者独特の、ユーモアと皮肉を含んだ気取った語り口が特徴の作品である。ストーリーの舞台が日本のN県であるから、同じ作者の「バルタザールの遍歴」や「天使」などよりはずっとわかりやすい。ただ話の面白さ、切れ味という点ではやや劣るかな。
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著者の本を読んだのは本書が初めて。 特筆すべきことは何もない。
まぁ普通に読めた。 つまらなくはないけれど、読み直すこともないんだろうなぁ〜と思わせる1冊でした。
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直感的、口語的表現に傾倒する現代文学に逆行するような独特の重さ、その語り口。
こういう「文学」に飢えている 私もそのひとり。
舞台が欧州ではなく日本(のN県)なので人物名や地名、その位置関係がすっと頭に入ってよかったです。
なんてことはどうでもいいか。
佐藤亜紀の小説に於いては『千秋』が主人公になりそうなタイプなのですが、そうではないところもよかったです。
なんてこともどうでもいいか。
平和を願うとは利己的な事 というようなくんだりが私には応えました。
他力本願ななもんだ、と私も思う。
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読みはじめてみたら、途中までは再読でした。
途中でやめた過去の自分にありがとう。
だって、いまこんなに楽しませてもらったから。
つねに湿った外気を呼吸しながら読んでいたような気分です。
霧とか、雪とか、夏の蒸し暑さとか。そして音楽。
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佐藤亜紀「戦争の法」読んだ。再読20年ぶりくらいかも。。 http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167647056 … 読んだのは近所のバーにあった、のちに本人が決別する新潮社(のセンスのいい装丁 http://jbungaku.com/index.php?q=1119743 … )版のほう。こういう本を絶版にしちゃいかんよ(つづく
タイトルは戦争の、だけど戦闘物ではなく、地方都市のちまちまと息苦しい人間関係や因習と、ある一家の兄弟喧嘩の話。少女漫画的なキャラやBL要素もこの人ならでは。回想録の体裁で、かつ途中で語り手が創作に長けている様子が差し込まれ、回想と創作の境界がわからないのがミソかな(つづく
ある地域が日本から独立するという設定は札幌出身のわたしにはやや現実味があって、北海道でも現実に独立したら経済や風俗や治安はこんな感じになるだろうなと思いながら読んだ。ただし人間関係は(少なくとも札幌では)東京以上に希薄なので、道民が団結し戦うという図式にはなりにくいかも(おわり
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佐藤亜紀にハマるきっかけとなった本。読んだのはもちろん違う版。
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僕が彼女の大ファンだということを贔屓目から差し引いても、傑作と言わざるを得ない。
突如日本から分離独立したN県を舞台にテロリストとして活動した男の回想録。と、書けば単なる架空戦記に捉えられかねないが、仮にそうだとしても、これ程の小説はやはり彼女しか書けないだろう。
冒頭、「これは作者自身も含めてフィクションである。私の言葉は信用に値しない。」と述べることによって、この作品は十重二十重のプロットを得る。つまり何でもアリにしてしまうのだ。しかし、決して逸脱はない。あくまでも「小説内事実」に即して描かれている。そうしてから、あらゆる事象を揶揄し、皮肉り、糾弾するのだ。
メタフィクショナルに語られる場合、期待される効果はアイロニーだが、彼女の場合には全く逆説的に行使されている。「私」は徹底的にモダニストで、まさに言葉の限りを尽くして虚構を張る。ハリウッドにでも転がっていそうな紋切り型ストーリーを「私」は臆面もなく展開する。しかしそれは「私」自身がメタだという言質を盾にすることで虚構性を保証するから為せる技なのだ。だからこそ「私」のことさえ俯瞰的に描かれるのである。
「私たちは時間を殺す為に読書するのだ」、「フランス人は説明しようがない程人道主義が好き」、「世の中に批判的読み方というものがあることを、どうやって高校の教師に納得させようというのか。そんな読み方が出来る人間はそもそも教師にならない」等々言いたい放題語り部である「私」は言ってくれるが、恐らく著者の言葉だと推察できる。ややぺダンチックなのも佐藤の趣味だろう。
佐藤の文体の特徴は簡潔にして精緻。文学的レトリックなど必要性を感じさせない程、恐ろしく的確な言葉の数々。言葉の表象と戯れる、まさに日本版ナボコフといえる。
芸術性とエンターテイメントを両立させる傑作。
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最初はめんどくさい書き方をする主人公(著者)だなぁ、と思ったけど読み進めていくうちにいつの間にか引き込まれていました。
それにずっとドキドキしっぱなし。
といっても別に先の見えない展開で~ということはなく、むしろわかりやすいくらいだったと思う。
テンポがいい、というわけでもなかったし・・・なんでだろう(笑)
登場人物が魅力的だからかな・・・
必ずしもいい人たちではなかったけど、自分にとってかなり魅力的でした(笑)
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突然日本から分離独立したN***県を舞台に、分離独立政府に反抗するゲリラに身を投じた「わたし」が語るその顛末です。立派な主義主張というより、自らのエゴで争う人間の姿が描かれていて、結構エグいとは思うのですが、「わたし」の一歩引いた冷ややかな目線のおかげか、読んでいるこちらも冷静にみられます。でも中身は濃密。
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昨日「ミノタウロス」文庫購入してきて、読み始めた本がこっちとは…(苦笑)。
でも読み始めちゃったんだもん!(笑)。
改めて「…こういう内容書いてたっけ?」っていうくらい冒頭から濃密な内容に、初めて読むように興奮中w
2010.05.22.
+ + +
とうとう読み終わってしまった……。。
N県で起こったクーデータと独立戦争とその後の武装解除を、一定の距離を持って、でもあくまでも語り手の経験した視点(後に知った出来事もプラスされてはいるけれども)で語られていて、その、妙に醒めているけれども、距離を感じる熱っぽさ(暗闇で遠い向こうにたき火が見えるような)が文章から感じられて、読みながらゾクゾクしました。
…これは以前読んだ時には気付けなかった事だなぁ。筋だけを追っていたんだろうね。その時は。
このゾクゾク感ってなんだろう。と思っていたワタシにとっては、巻末の佐藤哲也氏の解説は、腑に落ちた素敵な文章でした。
…それと、…やはり、伍長の存在と最期は、なんだかすごく象徴的
。たまらない…!
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1975年、日本海側のN***県は、突如日本からの独立を宣言する。街はソ連軍が大挙し、「私」は少年ゲリラの一員となるが・・・。
読み始めて、「こんな小難しいの、とても私には読めん」と本を投げ出しそうになったのだが、なんとか四苦八苦して読みまくっていたら、第一部の終わりぐらいから俄然面白くなった。よかったよかった。
はっきり言って、第一部はこの物語を語る上で、主人公の「私」(あるいは作者)がどうしても済ませておきたい儀式のようなものだったのだろう。または、この途方もない物語を語る上での、長い断り書きと言ってもいいと思う。
つまりは作者のプライドの問題ですね。少なくとも私はそう思いました。
さて、本編である。
これは戦争の話なのだが、私は戦争が一体何なのかよくわからないので(これからもきちんとわかることはないと思うけど/だからこの本の第一部もつまらなかったのだろう)、戦争における社会だとか集団だとかのなんたらかんたらはパスする。
では何が面白いかというと、自分の利用価値を、どうすればもっとも上げられるか、そこのところを突き詰めると、「戦争」というのはとても面白いな、というのをこの本を読んでいて思ったのだ。
これは、よく言われるように、天下に名だたる戦国武将たちが現代に来たら、素晴らしい仕事をするかというとそうではない、というのと同じことだ。つまり、戦争でこそ発揮される才能があって、それは日常生活では全く役に立たない、むしろ不適応なのだが、それゆえに戦争という一種の狂乱状態では、莫大な成果を得る(こともある)、ということ。
とんでもない才能がとんでもなく面白くなる場所、それが戦争。それがエンターテイメント。少年誌からバトル漫画がなくならないのも、戦国時代がとても面白いのも、みんなこのせいであると思う。
そういう意味では、私はこの小説をマンガみたいだなと感じたのだが、作者はそれを聞いたら嫌がるだろうなぁ
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最初冒頭は死にそうに読み進まなかったけど、だんだん読みやすくなっていきます。
大丈夫です。
自分でも信じがたいが、すいすい読めちゃったー。
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トイレにおいて数ヶ月。やっと読み終わった。
ゲリラ時代は読み進めやすかった。
ゲリラになるまでは全体像が見えないので読みにくかった。
ラストをどうしめるのか,作家は苦労するだろうとつくづく思った。
今,無政府状態,内戦状態になったらどうなるのだろうと思いながら読んだ。あり得ない話しではないし。
たくましく生きていけるだろうか。そうなれば,生きていくんだろうな。
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すぐそこで戦争が始まって、よく知っている人たちがその中で生活して、私は自分の日常の中からそれを見ていて、特別それを不自然な状況だと感じない。
戦争の中でもみんな生きて、あるいは死んで、いつしか戦争が終わり、家に帰る。
みんないつかは家に帰る。
それは幸せなことでも不幸せなことでもなんでもないことでもなくて、ただそういうものなのだろう。
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おそらく「ミノタウロス」の原点になるのかな。
微笑と皮肉とウィットに富んだ、魅力的な若者たちの悪徳小説。
敢えてだろうけど序章がなかなか進まなく厳しいが、そこを超えればあとは楽しさだけが待っている。
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いかんせん文章が晦渋すぎる。(「晦渋」とは、たまたま昨日Qさまを見ていて始めて知った言葉ですが、「言葉や文章がむずかしく意味がわかりにくいこと。また、そのさま。」の意だそうです。そんな言葉がまさに本書の中にタイムリーに出てきたことにビックリです。)ちょっと前から気になっていた作家さんだったので、図書館で手にとってみましたが、貸出期間で読み終われないほど苦戦しました。難解で重量感のある文章に圧倒され、ページを捲る手の重いこと。本当に疲れました。